日本戦車を改造する。

ゆみすけ

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書類上と実際との差。

馬力の余裕。

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 「え、え、書類上ではそうです。」と、上野技官だ。 「でも、いままでの3倍のエンジンなんだろう。」「そうですよ。」「それで、速度が同じとは思えないんだが。」「え、え、でも、荒れ地で30キロ巡行ですからね。」「荒れ地といっても、様々だが。」と、今野少尉だ。 「そうですが、満州平原での荒れ地ということです。」と、上野だ。 そして、「いいですか、ここが味噌なんですが。」と、加える上野技官だ。 「余裕があるということですよ。」「余裕?」 「エンジンを2個増やせば、馬力が倍というものではありません。」「エンジンは馬ではないのです。」「でも、馬力のバは馬と書くが。」と、隊員が。 「トルクが増すのです。」「動かす馬力ではなく、動かす力が増すのです。」と、言い方がクイズみたいな上野技官だ。 「うまく言えないのですが。」と、上野だ。 「あ、あ、気持ちはわかるぞ。」と、今野である。 「余裕があるか、無いかの差だろう。」と、今野がいう。 「そうですよ、エンジンが3倍になっても、燃費は3倍ではないのですよ。」と、上野技官が講釈だ。 「エンジンには内部抵抗といって、馬力の半分は機械の摩擦熱になるんです。」「エンジンが熱くなるのは、内部の機械抵抗の摩擦熱ですから。」と、上野技官である。 「ブレーキをかけるとブレーキが熱くなるでしょ。」「うむ。」「あれは、停止するときの抵抗が熱に代わるからですよ。」と、説明するのだ。 歩兵科と違い機甲科は座学が多い。 つまり、機械の座学が多いのだ。 それで、この技官の話も聞き耳を立てる隊員らである。 「操縦はレバーですか。」と、隊員が聞いた。 「そこは、いままでの戦車と同じです。」「では、レバー2本だな。」「そうですよ。」 戦車にクルマのようなハンドルは無いのだ。 (最近のヤツは簡単な操縦ハンドルであるが。) 建設機械のブルドーザーなんかと同じで、レバーがあるのだ。 戦車には舵取りするタイヤは無い。 無限軌道の履帯が2本あるのだ。 それを、左右の速度を変えて方向転換するのである。 それを、レバーで操作するのである。 「前の機銃が無くなりましたね。」と、隊員が。 「あ、あ、それは、砲身に同軸機銃がありますから。」「前部の傾斜装甲に穴が無い方がいいからですよ。」と、上野が説明する。 (自衛隊の61式戦車の弱点は、前の傾斜装甲にボルト止めがあることなのだ。) 「それに、飛行機の相手は専用の防空戦車でないと。」と、すごいことを言い出す上野技官だ。 「防空戦車?」と、今野が聞いた。 「え、え、まだ開発途中ですが4連機銃の防空戦車を開発中です、あっ軍規ですから内密で。」と、付け加える。 「砲塔が駆逐艦の対空機銃のヤツですよ。」とも言うのだ。 「それは、すごいぞ。」と、隊員らが騒ぎ出した。 戦車にとり、最大の脅威が飛行機であるからだ。 中隊に、1両でいいから対空戦車があると・・・・ 夢は膨らむ、満州国の日本陸軍戦車隊であった。 ソ連の飛行機が、そろそろ出てきても、おかしくないからだ。
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