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再度の越境。
また、来やがったぞ。
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サイレンが鳴る。 「ウ~ゥウ~ゥ。」と連続だ。 「これは、いかん。」「おい、招集をかけろ。」「至急だぞ。」部下が隊舎の外へ走る。 散歩や運動で出てるヤツも居るからである。 隊長は駆け足で司令部へ・・・ 司令部というと、かっこいいが、単なるバラックの小屋である。 まあ、隊舎と変わらないのである。 しかし、満州国の旗ではなく、日本陸軍旗が掲げられているのだ。 つまり、日本陸軍の司令部だ、ということである。 隊長が着くより早く、司令部から伝令が飛び出してきた。 「あっ、今野少尉、急報です。」「あ、あ、わかってるが。」と、命令書を受け取る。 「ん、また来やがったのか。」「え、え、またですね。」と、伝令だ。 「よほど、露スケも暇なんだな。」と、こぼす隊長だ。 命令書は、『ソ連軍越境につき直ちにこれを排除殲滅せよ!』である。 「それで、場所は?」「スイフル河です。」「また、あそこか。」「え、え、ヤツらにとっては、やりやすいところですからね。」 スイフル河とは、ソ連軍が渡河する場所である。 スイフル族が村を過去につくっていたから、スイフル河と名がついたのだ。 今は、ソ連軍に皆殺しにあい、誰も住んでいないのだ。 その場所は、河の水深が浅いから渡河には都合がいいからである。 よく、ソ連軍が渡河するから、こちらの偵察戦車も偵察はかかさないのだ。 それで、この急報となったようである。 「無線訓練をやっていてよかったわい。」と、思う今野だ。 偵察戦車は無線での急報だ。 つまり、偵察戦車が無線が、基地まで届くなら、オレ達も無線が届くからである。 基地への無線がある、無は大きいのである。 隊舎の前に、隊員らが整列している。 どうやら、集合はできたようだ。 「いま、偵察隊から急報が入った。」と隊長が説明する。 「また、露スケがやってきたぞ。」「場所は、以前と同じだ。」「いいか、無線訓練を忘れるな。」「おう。」と、掛け声だ。 「では、搭乗だ。」と指示する今野だ。 戦車のデーゼルが眼をさます。 「ガラ、ガラ、ガラガラ。」と暖気を2,3分だ。 もうすこし、やりたいが・・・「戦車隊、前進だ。」と今野が叫ぶ。 「ガ、ガ、ガ、ガ、ガ。」と、履帯の音を響かせて、司令部前を通り過ぎる戦車隊である。 もちろん、司令官が部下と見送りである。 こちらも、敬礼して通り過ぎるのである。 司令官の答礼を受けて、前線基地を後に、スイフル河を目指す、戦車隊である。 「ガ、ガ。今野隊、聞こえるか。」と無線だ。 「おう、感度良好だ。」と返答する。 「ヤツらは、戦車が10両だ。」「歩兵はいないようだ。」「おそらく、仕返しだ。」2回もヤラれたんだ、仕返しだろう。 報復攻撃は考えられることだ。 こちらは、6両だ。 「戦車以外に車両は?」と今野が聞く。 「いいや、戦車だけだ、だから仕返しと・・」「了解だ。」 露スケめっ、全戦車を出してきたな。 ソ連軍は10両の戦車で、当方の戦車隊だけの殲滅を模索したようである。 だから、戦車だけで、歩兵がいなにのだ。 占領するのは、どうしても歩兵が必要である。 ソ連軍の事情は知らない今野だが・・・・ これには、ワケがあったのだ。 粛清の嵐である。 共産主義につきものの、粛清である。 つまり、逆らったヤツを殺しまくるのである。 最初はフランスの恐怖政治からである。 ルイ王朝を根絶やしにギロチンで殺しまくったが、いなくなると仲間をギロチンだ。 その2番目がロシア革命である。 ロシア皇帝一家は皆殺しである。 そして、それが終わると、仲間を殺すのが共産主義である。 トップは、沢山はいらないからだ。 国民は、愚民でいいからだ。
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