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大陸の嵐。
本土とは違う、まるで別世界だ。
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「そろそろ、いいか。」と隊長が腕時計を見る。
「時間、あわせ、いいか。」 「いま、22時前5・4・・・いま・22時だ。」
この当時の(昭和初期)腕時計はクオーツではない。 電波時計でもない。 そう、機械式である。
それで、作戦の前には時計合わせが定番だ。 それでも、狂うんだが・・
無線セットをつける。
夜襲にはライトなぞ点灯しない。
夜襲は奇襲なのだ。
相手に察知されては夜襲ではない。
レーダーがない時代の作戦である。
月は沈んで出ていない。 遠くに稲光と雷音だ。
「そろそろ、嵐がやってきそうだ。」 「では、乗車だ。」「おう。」
戦車内は壁が白い色で塗ってある。 機器類の目盛りは夜光塗料で、なんとなくわかる。
「ガラガガラガラガラ。」と、デーゼルエンジンが始動する。
「前進。」と隊長の指示が無線ではいる。
いくら日本兵は夜眼が効いても、せいぜい20メートルがギリだ。
それも、なんとなくである。
まもなく、大粒の雨が・・ そして、「ゴロゴロ。」と雷音が・・
そして、ドバーと一瞬で嵐の中だ。 息ができないほどである。
眼が・眼が・そうだ、風防メガネだ。
あわてて車長らは風防メガネ(ゴーグル)を架ける。
稲光が戦車を浮きだたせるが、こちらも地形を把握しやすい。
しかし満州、いや大陸の嵐は日本本土とは別物だ。 やはり、日本の嵐の方が・・・
戦車は豪雨で水浸しだが、エンストすることもなかった。
そこは、兵器だ。 雨で戦車がエンコなんてことはないのだ。
そこが、日本製なのである。 なるべく雨が砲塔から入んないように気をつかう車長である。
カンテラの光が見える。 ソ連軍の野営地点だ。
ということは、まだソ連軍は当方には気が付いて無いのだ。
テントで雨をしのいでいるようだ。 敵の歩哨は・・ 居るとはおもうが・・・
「突撃だ、弾がなくなるまで撃ち尽くせ。」と無線だ。
もう、砲撃音と雷音と、雨の音だけが聞こえる。
なんか、叫ぶ声が、あれはロシア語か・・
車長は短機関銃の銃弾を振り撒く。 狙いなんてない、ただ、水平射撃である。
なんせ、味方は近くにはいないのだ。 まわり全部がソ連なのだ。
稲光で、あたりの雰囲気がわかる。 そして、その方向へ砲撃だ。
稲光が20から30の間隔であるから、丁度好都合である。
戦闘型戦車の砲撃は20から30秒の間隔があるからだ。
それで、稲光で、方向を定めて、「ドウウウンン。」である。
「前方にソ連戦車だ。」と、隊長だ。 稲光で、即座に狙いを定めた。
「てっー。」と号令と同時に、「ドウウウン。」と、「あれ、敵は反撃してこないぞ。」
「まて、動いておらん。」 「あの、戦車に近づけ。」 ソ連戦車の隣へ・・
「うむ、これは破棄して逃げ出したんだな。」と、隊長が判断する。
「終わったら、曳いて帰るぞ。」「ハア。」「燃料が・・」「ソ連戦車の鹵獲は土産になるからな。」本土から着た技師が喜ぶだろう。
相手の力量がわかるからだ。 ・・・
気が付いたら、ソ連兵は逃げて、戦死したヤツしか残っていなかった。
雷鳴は遠のいていく。 夜襲の終わりと同時に嵐はやんだのだった。
まるで、神(アマテラス神)の加護でもあるかのようにである。
そして、夜が明けた。 そこには、破壊された装甲車やトラックの残骸が・・
そして、戦車5両が残されていた。
やがて、偵察戦車がやってきた。
「さすが、今野少尉。」と賛辞である。
「いいや、これは神の加護だ。」と、謙遜である。
「いま、無線で連絡しました。」 「それは、ありがたい、このヤツを、どう運ぼうかと・・」と、5両のソ連戦車を示す。 「大漁ですな。」と、からかう偵察隊である。
勝いくさは気分がハイになるものだ。 はじめは、相手が戦車5両と装甲車、歩兵まで・・
それで、なら夜襲しかない、との結論がでた。 もちろん、失敗の可能性もあるが、天候が味方したようだ。
「そうだ、ここは満州領とソ連との境目だ。」 「うかうか、してると逆襲されかねん。」
「では、そこは偵察戦車隊に、おまかせを。」と、偵察戦車が・・
「こちら、本部だ、そちらへ補給隊を向かわせた。」と、指示がくる。
「よし、ソ連兵の死体を集めるぞ。」 そうだった、腐敗する前にやった方が楽である。
日本軍は敵兵への礼儀は忘れないのだ。
かんたんに穴を掘り、埋葬して、カブトや銃を立てておく。 墓標である。
「おい、こちらは全員が無事だったんか。」 「おまえは、いまごろ気づきやがって。」
そう、戦車隊は12名全員が生きているのだった。
そして、ソ連軍は戦死者は150名だった。(その多くは闇夜の同士撃ちだ。)
ちなみに、ソ連兵の捕虜は無い、ソ連兵は生きてるヤツは全員が嵐の中を逃げたようだ。
「時間、あわせ、いいか。」 「いま、22時前5・4・・・いま・22時だ。」
この当時の(昭和初期)腕時計はクオーツではない。 電波時計でもない。 そう、機械式である。
それで、作戦の前には時計合わせが定番だ。 それでも、狂うんだが・・
無線セットをつける。
夜襲にはライトなぞ点灯しない。
夜襲は奇襲なのだ。
相手に察知されては夜襲ではない。
レーダーがない時代の作戦である。
月は沈んで出ていない。 遠くに稲光と雷音だ。
「そろそろ、嵐がやってきそうだ。」 「では、乗車だ。」「おう。」
戦車内は壁が白い色で塗ってある。 機器類の目盛りは夜光塗料で、なんとなくわかる。
「ガラガガラガラガラ。」と、デーゼルエンジンが始動する。
「前進。」と隊長の指示が無線ではいる。
いくら日本兵は夜眼が効いても、せいぜい20メートルがギリだ。
それも、なんとなくである。
まもなく、大粒の雨が・・ そして、「ゴロゴロ。」と雷音が・・
そして、ドバーと一瞬で嵐の中だ。 息ができないほどである。
眼が・眼が・そうだ、風防メガネだ。
あわてて車長らは風防メガネ(ゴーグル)を架ける。
稲光が戦車を浮きだたせるが、こちらも地形を把握しやすい。
しかし満州、いや大陸の嵐は日本本土とは別物だ。 やはり、日本の嵐の方が・・・
戦車は豪雨で水浸しだが、エンストすることもなかった。
そこは、兵器だ。 雨で戦車がエンコなんてことはないのだ。
そこが、日本製なのである。 なるべく雨が砲塔から入んないように気をつかう車長である。
カンテラの光が見える。 ソ連軍の野営地点だ。
ということは、まだソ連軍は当方には気が付いて無いのだ。
テントで雨をしのいでいるようだ。 敵の歩哨は・・ 居るとはおもうが・・・
「突撃だ、弾がなくなるまで撃ち尽くせ。」と無線だ。
もう、砲撃音と雷音と、雨の音だけが聞こえる。
なんか、叫ぶ声が、あれはロシア語か・・
車長は短機関銃の銃弾を振り撒く。 狙いなんてない、ただ、水平射撃である。
なんせ、味方は近くにはいないのだ。 まわり全部がソ連なのだ。
稲光で、あたりの雰囲気がわかる。 そして、その方向へ砲撃だ。
稲光が20から30の間隔であるから、丁度好都合である。
戦闘型戦車の砲撃は20から30秒の間隔があるからだ。
それで、稲光で、方向を定めて、「ドウウウンン。」である。
「前方にソ連戦車だ。」と、隊長だ。 稲光で、即座に狙いを定めた。
「てっー。」と号令と同時に、「ドウウウン。」と、「あれ、敵は反撃してこないぞ。」
「まて、動いておらん。」 「あの、戦車に近づけ。」 ソ連戦車の隣へ・・
「うむ、これは破棄して逃げ出したんだな。」と、隊長が判断する。
「終わったら、曳いて帰るぞ。」「ハア。」「燃料が・・」「ソ連戦車の鹵獲は土産になるからな。」本土から着た技師が喜ぶだろう。
相手の力量がわかるからだ。 ・・・
気が付いたら、ソ連兵は逃げて、戦死したヤツしか残っていなかった。
雷鳴は遠のいていく。 夜襲の終わりと同時に嵐はやんだのだった。
まるで、神(アマテラス神)の加護でもあるかのようにである。
そして、夜が明けた。 そこには、破壊された装甲車やトラックの残骸が・・
そして、戦車5両が残されていた。
やがて、偵察戦車がやってきた。
「さすが、今野少尉。」と賛辞である。
「いいや、これは神の加護だ。」と、謙遜である。
「いま、無線で連絡しました。」 「それは、ありがたい、このヤツを、どう運ぼうかと・・」と、5両のソ連戦車を示す。 「大漁ですな。」と、からかう偵察隊である。
勝いくさは気分がハイになるものだ。 はじめは、相手が戦車5両と装甲車、歩兵まで・・
それで、なら夜襲しかない、との結論がでた。 もちろん、失敗の可能性もあるが、天候が味方したようだ。
「そうだ、ここは満州領とソ連との境目だ。」 「うかうか、してると逆襲されかねん。」
「では、そこは偵察戦車隊に、おまかせを。」と、偵察戦車が・・
「こちら、本部だ、そちらへ補給隊を向かわせた。」と、指示がくる。
「よし、ソ連兵の死体を集めるぞ。」 そうだった、腐敗する前にやった方が楽である。
日本軍は敵兵への礼儀は忘れないのだ。
かんたんに穴を掘り、埋葬して、カブトや銃を立てておく。 墓標である。
「おい、こちらは全員が無事だったんか。」 「おまえは、いまごろ気づきやがって。」
そう、戦車隊は12名全員が生きているのだった。
そして、ソ連軍は戦死者は150名だった。(その多くは闇夜の同士撃ちだ。)
ちなみに、ソ連兵の捕虜は無い、ソ連兵は生きてるヤツは全員が嵐の中を逃げたようだ。
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