6 / 393
無線機は必要だろう。
1両しか無いが、無線機。
しおりを挟む
「で、無線機はどうすんだ。」 と何気に技師の一人がいう。
あっ、言ってしまった。 無線機は、かなり大きいのだ。
受信機と送信機と2台必要なんだ。
「いや、この車内には、入らないぞ。」
「だいいち、電源は。」 「そうだ、真空管だから、6Vでは。」
まだ、電池で使える真空管は無い。
「エンジンのバッテリーは6Vだぞ。」当時は6Vだった。
「ううむ、しかし、通信手段は必要だろう。」
「まあ、今後の課題だな。」 と先送りの意見が・・ そう、日本人の悪い癖だ。
先送りというヤツだ。
「オレに考えがあるんだ。」 「どんな?」
「真空管のヒーターを6Vで使えるようにするんだ。」
真空管はガラスの菅に電極を作り、それをニクロム線のヒーターで電熱をかける、すると管内が高温となり電子がガラス管(真空にしてある。)内の電極板を飛んで、電気の電圧やら性質を変える(増幅や検波)ことができるのだ。 つまり、ニクロム線で真空管を温められればいいのだ。
だから真空管は、とても電力を喰うのだ。
トランジスタは、このニクロム線のヒーターが無い。
「オレが出た大学の研究室で、6Vで使える電池真空管なる試作が完成したらしい。」
「それはいい話だ、ぜひ手に入れてくれ。」
「まあ、武器ではないから、すぐにでも送ってもらおう。」
そして、船便で真空管は届いたのだ。
「やけに小さいな。」 「うむ、いままでは野菜の茄子くらいあったのに、これは小指の半分だな。」
「なら、無線機は小型になるぞ。」
「そうだな、送信機と受信機が余裕で戦車内に搭載できるぞ。」・・・
こうして、無線機搭載の日本軍戦車が1両、実験的に試練の前線へ送られたのだ。
もちろん、戦車搭乗員も訓練されたのだ。
エンジンの仕組みから応急措置まで、教え込まれたのだ。
無線通話は、前線から前線司令部まで余裕で届いたのだ。
まあ、満州が平原だからだが・・
「こちら、虎1号、司令部へ聞こえるか。」 「こちら、司令部です、感度良好です、どうぞ。」
そう、戦車は虎1号と呼称したのだ。
鉄牛との案もあったが、牛より虎が強そうだからである。
こうして、前線での訓練も数ヶ月に及び、そろそろ・・・ そこに、急報だ。
「前線の歩哨が交代時にも帰らない。」との通報があったのだ。
「これは、まさか露スケの国境侵害か!」とソ連兵の越境行為かと、騒然となった。
「まてっ、戦車を偵察にあたらせろ。」と、前線司令が命令だ。
「戦車兵は指揮所まで。」と拡声器が吠える。
「今野曹長、以下3名まいりました。」と呼集に応じる。
「うむ、早々のことだが、歩哨が帰ってこん。」
「それで、この地点から、ここまで偵察をだ。」
「了解です、今野曹長以下、偵察任務に・・」と敬礼だ。
答礼で返す司令である。
「あっ、無線を使えよ。」 と助言だ。
「了解であります。」と戦車まで駆け足の戦車兵3名だった。
本来、戦車は4名の乗車だったが、砲塔内に無線機を搭載したので3名になったのだ。
「エンジン始動、暖気15分だ。」と今野が指示する。
「ガラガラガラガラ。」 とデーゼルエンジンが眼をさました。
あっ、言ってしまった。 無線機は、かなり大きいのだ。
受信機と送信機と2台必要なんだ。
「いや、この車内には、入らないぞ。」
「だいいち、電源は。」 「そうだ、真空管だから、6Vでは。」
まだ、電池で使える真空管は無い。
「エンジンのバッテリーは6Vだぞ。」当時は6Vだった。
「ううむ、しかし、通信手段は必要だろう。」
「まあ、今後の課題だな。」 と先送りの意見が・・ そう、日本人の悪い癖だ。
先送りというヤツだ。
「オレに考えがあるんだ。」 「どんな?」
「真空管のヒーターを6Vで使えるようにするんだ。」
真空管はガラスの菅に電極を作り、それをニクロム線のヒーターで電熱をかける、すると管内が高温となり電子がガラス管(真空にしてある。)内の電極板を飛んで、電気の電圧やら性質を変える(増幅や検波)ことができるのだ。 つまり、ニクロム線で真空管を温められればいいのだ。
だから真空管は、とても電力を喰うのだ。
トランジスタは、このニクロム線のヒーターが無い。
「オレが出た大学の研究室で、6Vで使える電池真空管なる試作が完成したらしい。」
「それはいい話だ、ぜひ手に入れてくれ。」
「まあ、武器ではないから、すぐにでも送ってもらおう。」
そして、船便で真空管は届いたのだ。
「やけに小さいな。」 「うむ、いままでは野菜の茄子くらいあったのに、これは小指の半分だな。」
「なら、無線機は小型になるぞ。」
「そうだな、送信機と受信機が余裕で戦車内に搭載できるぞ。」・・・
こうして、無線機搭載の日本軍戦車が1両、実験的に試練の前線へ送られたのだ。
もちろん、戦車搭乗員も訓練されたのだ。
エンジンの仕組みから応急措置まで、教え込まれたのだ。
無線通話は、前線から前線司令部まで余裕で届いたのだ。
まあ、満州が平原だからだが・・
「こちら、虎1号、司令部へ聞こえるか。」 「こちら、司令部です、感度良好です、どうぞ。」
そう、戦車は虎1号と呼称したのだ。
鉄牛との案もあったが、牛より虎が強そうだからである。
こうして、前線での訓練も数ヶ月に及び、そろそろ・・・ そこに、急報だ。
「前線の歩哨が交代時にも帰らない。」との通報があったのだ。
「これは、まさか露スケの国境侵害か!」とソ連兵の越境行為かと、騒然となった。
「まてっ、戦車を偵察にあたらせろ。」と、前線司令が命令だ。
「戦車兵は指揮所まで。」と拡声器が吠える。
「今野曹長、以下3名まいりました。」と呼集に応じる。
「うむ、早々のことだが、歩哨が帰ってこん。」
「それで、この地点から、ここまで偵察をだ。」
「了解です、今野曹長以下、偵察任務に・・」と敬礼だ。
答礼で返す司令である。
「あっ、無線を使えよ。」 と助言だ。
「了解であります。」と戦車まで駆け足の戦車兵3名だった。
本来、戦車は4名の乗車だったが、砲塔内に無線機を搭載したので3名になったのだ。
「エンジン始動、暖気15分だ。」と今野が指示する。
「ガラガラガラガラ。」 とデーゼルエンジンが眼をさました。
1
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
満州国馬賊討伐飛行隊
ゆみすけ
歴史・時代
満州国は、日本が作った対ソ連の干渉となる国であった。 未開の不毛の地であった。 無法の馬賊どもが闊歩する草原が広がる地だ。 そこに、農業開発開墾団が入植してくる。 とうぜん、馬賊と激しい勢力争いとなる。 馬賊は機動性を武器に、なかなか殲滅できなかった。 それで、入植者保護のため満州政府が宗主国である日本国へ馬賊討伐を要請したのである。 それに答えたのが馬賊専門の討伐飛行隊である。
16世紀のオデュッセイア
尾方佐羽
歴史・時代
【第12章を週1回程度更新します】世界の海が人と船で結ばれていく16世紀の遥かな旅の物語です。
12章では16世紀後半のヨーロッパが舞台になります。
※このお話は史実を参考にしたフィクションです。
不屈の葵
ヌマサン
歴史・時代
戦国乱世、不屈の魂が未来を掴む!
これは三河の弱小国主から天下人へ、不屈の精神で戦国を駆け抜けた男の壮大な物語。
幾多の戦乱を生き抜き、不屈の精神で三河の弱小国衆から天下統一を成し遂げた男、徳川家康。
本作は家康の幼少期から晩年までを壮大なスケールで描き、戦国時代の激動と一人の男の成長物語を鮮やかに描く。
家康の苦悩、決断、そして成功と失敗。様々な人間ドラマを通して、人生とは何かを問いかける。
今川義元、織田信長、羽柴秀吉、武田信玄――家康の波乱万丈な人生を彩る個性豊かな名将たちも続々と登場。
家康との関わりを通して、彼らの生き様も鮮やかに描かれる。
笑いあり、涙ありの壮大なスケールで描く、単なる英雄譚ではなく、一人の人間として苦悩し、成長していく家康の姿を描いた壮大な歴史小説。
戦国時代の風雲児たちの活躍、人間ドラマ、そして家康の不屈の精神が、読者を戦国時代に誘う。
愛、友情、そして裏切り…戦国時代に渦巻く人間ドラマにも要注目!
歴史ファン必読の感動と興奮が止まらない歴史小説『不屈の葵』
ぜひ、手に取って、戦国時代の熱き息吹を感じてください!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜
紫 和春
SF
二〇二〇年の現代から、一九三六年の世界に転生した八人の若者たち。彼らはスマートフォンでつながっている。
第二次世界大戦直前の緊張感が高まった世界で、彼ら彼女らはどのように歴史を改変していくのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる