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峠越え。
これからが、本番だ。
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多くの見物人に見送られて、大垣駅を出る。 「さあ、これからが、本番だな。」というと。 「え、え、うまく越えられますかね。」 と釜焚き人足が心配気な顔だ。 試験的に峠は1号機関車で越えている。 しかし、単機でだ。 つまり、貨車や客車が無い、機関車だけだ。 「あのときは、1号機関車1両だけだが、今回は荷があるからな。」とオレ。 「うまく、いけますよ。」と釜焚きが慰めるが・・・ 「よしっ、まずは、1回目のスイッチバックだ。」 「木炭をくべてくれ。」 「アイサー。」 最初の模型の機関車は端切れの材木だった。 しかし、灰がイヤというほど出るから、現在に燃料は木炭だ。 それに、端切れ材より、煙突から出る煙が少ないのだ。 季節が夏なら、熱くてやってられんわ。 「シュー、シュー、シュー。」 と緩やかな坂道を登りだした。 「おい、砂巻だ。」 「ヘイ。」 と釜焚きが機関車の脇を通って、駆動輪の前へ行く。 「いいぞ、撒いてくれ。」 「ヘイ。」 砂袋から砂をつかんで、線路に巻く。 本来なら砂箱を機関車に造って、そこから駆動輪へ砂を撒くのだが・・・ まあ、忘れていたんだ。 砂箱を・・・ それに、速度も遅いので、事故に注意すれば、人力で砂を撒けばいいのだ。 (これは、以前にインドの山岳鉄道の蒸気機関車がやっていた方法だ。) なぜ、砂を撒くにか? それは、摩擦を多くして、機関車の駆動輪がすべらないようにするためだ。 鉄道は坂道に弱いんだ。 なぜなら、線路は鉄のレールだ。 車輪は鉄の輪だ。 すべすべである。 それで、摩擦を多くして坂道を登るのである。 まあ、緩やかならそれでもOKなんだ。 これが、ウワッというほどなら、砂を撒いても無理だ。 線路に専用に歯車を刻んで、登る、アプト式か叡山のようなケーブルカーとなるんだ。 アプト式は、かなり以前に碓井峠で運行していたが・・・ 欠点は速度がだせないのだ。 確か、最高は18キロ毎時だったかな・・ そう言ってる間に、バックする地点だ。 線路のポイントを切り替える。 でないと、また登ったところを下るだけだ。 ポインチは機関車を降りて確執に手動で切り替える。 「よいしょっと。」 かなりの力が要るのだ。 機関車にカナテコを乗せてあり、そのカナテコでエンヤコラ~だ。 「ふう、かなりキツイな。」 ボイラーの熱で暑い、そして速度が遅いから余計に熱いのである。 やっと、頂上だ。 「これから、下るが用心しろよ。」 と砂撒き人足に声をかけた。 登りより下りが機関車は危険が多いのだ。 下りで、ブレーキが熱でやられると危険だ。 ブレーキは3両目の貨車の車掌が足ブレーキを駆けるが、とても足りない。 機関車は蒸気を反対にして、蒸気ブレーキを掛けるが、全重量が50トン近いから心配だ。 (50トンは機関車と客車2両と貨車や荷物などの全重量だ。) いくら、ヒトが日本人は小柄でも50キロはあるだろうから、100人の客だ。 登りより、時間をかけて下る機関車だ・・・・・
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