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肥田作の話。
オラは肥田作だんべ。
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オラは足軽村の小作だがや。 そんで、親方から馬車の盗賊退治を命じられたがや。 (親方とは小作の親方で、足軽大将ではない。) なんでも、盗賊退治に人手がいるらしい。 そんで、小作人にも割分がきたらしいんだ。 そんで、若いオラだがや。 そんで、足軽大将様から刀と胴丸が渡されただ。 どう、使うんだっぺ。 「どう、つかうんだっぺ。」 と言ったら、「見てれば、わかるぞ。」 と言われて終わりだった。 まあ、人数割の口だから、いればいいらしい。 (なんと、いい加減なことだ。) そいで、棒切れで、少しは練習しただ。 刀を帯に挟んでいたら、足軽大将の客人がやってきて、「刀は鞘をさげて帯に挟むんだ。」 と教えてくれた。 オレは鞘を上向きに挟んでいたらしい。 それでは、太刀の挟み方で、素人丸出しらしい。 そいで、「初めてなら、突けばいいんだ。」 「切るのは慣れがないと、ヤリみたいに突く、それなら出来るだろう。」 と教えてくれた。 剣術なぞ知らんから、突くならできそうじゃ。 そして、馬車にムシロがかけられて、オラ達は隠れタダ。 馬車なぞ、初めてだがや、お尻が痛いだがや。 ・・・・ そうして、馬車にゆられて半日だ。 「おい、だれか馬車をつけてるぞ。」 「あ、あ、あいつか。」 「さっきから、いるぞ。」 「用心しろ。」 と武者の頭(かしら)がいう。 しばらくして、人気(ひとけ)の無い、小道に入る。 御者が、「だれか、いるぞ。」 「おい、山賊だぞ。」 見ると、刀やヤリで武装したヒゲ面の野郎が数人、道をふさいでいる。 馬車が止まる。 道の四方から、山賊まがいの野郎が数人馬車を囲んだ。 「荷物を置いてけ、命まではとらねえからよ。」 と頭目らしきヤツが叫ぶ。 「おまえれか、オラたちの馬車を襲ったのは。」 と御者が答える。 「あ、あ、そいつは、わかんねえな。」 と誤魔化す頭目だ。 「やるぞ、出会え、出会え。」 と武者頭が叫んだ。 「うう、野郎、逆らうのか。」 と山賊らだ。 「いいか、頭目以外は殺ろせ。」 と武者頭だ。 ムシロを跳ねのけて、オラたちは散開する。 山賊と数は同じくらいだ。 「ヤーッ。」 武者頭が山賊を切り捨てた。 片腕を飛ばして、血へどを吐いて倒れる山賊だ。 それを、合図に乱戦となった。 山賊と武者では、鍛錬が違う。 ・・・オラは初めての実戦だ。 それに、数あわせでなっただけだ。 しかし、山賊は容赦なく攻撃してくる。 震える腕に刀を持ち、「ヤー、ヤー。」と気勢をあげる。 でないと、チビりそうだがや。 仲間が倒れた、そこに山賊だ。 仲間が・・・ もう夢中で、刀を山賊の背中にオッ立てた。 かんたんに刀は山賊の背中に突き刺さった。 以外に刃が入るんだな。 そして、肉にからまって刀が抜けない。 仕方がない、山賊の背中を踏んで刀を抜いた。 血しぶきが、降りかかった。 ヒトを殺したんだが、夢中でなんとも感じなかった。 「だいじょうぶだがや。」 と仲間を助ける。 そうして、あたりを見廻すと戦いは終わっていた。 武者頭が、山賊の頭目に命乞いをさせていた。 「襲った馬車は、どうしたんだ。」 と聞いていたが、どうやら生きてはいないようだ。 うばった積み荷は闇市で売ってしまっていた。 馬車の人足などは、殺されて埋められていた。 武者頭は、山賊の頭目を縛って、馬車の荷台に乗せた。 そして、「村で、なぶり殺しだがや。」 と猿ぐつわをさせて、足軽大将に見せるために連れ帰った。 なんや、かんやで、疲れた討伐だったがや・・・・・
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