満州国、戦車開発会社

ゆみすけ

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敵戦車を発見す!

匍匐(ほふく)前進だぞ!

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 「よし、行くぞ。」「おう。」
対戦車地雷を背中に背負った志願兵らが騎馬で駆ける。
 目的地はチチハルの西方、約10キロ地点だ。
そこは、地形の凹凸が激しくて・・・丘の間の谷みたいな箇所を通過しなければならない。
 地雷の数は10基しかない。
それで、志願兵も10騎である。
 「たぶん、イワン野郎は戦車だから、モンモンハンからチチハルまでは数日はかかるだろう。」
「なら、今ならイワン野郎は予想地点が・・・そうだな、速度は遅かったからな。」
 「よし、この防蒙の谷に仕掛けるぞ。」
防蒙の谷は、かつて蒙古騎馬隊と我が女真族騎馬隊との決戦の地だ。
 そこで、女真族が勝利して・・・蒙古の奴らを追い払った場所だそうだ。
それで、防蒙の谷と呼ばれているそうだ。(これは、妄想ラノベだぞ。)
 「スコップは、全員あるな。」「おう、あるぞ。」
「よし、イワン野郎が来ないうちに仕掛けるぞ。」
 「カンジン隊長。」「ん、なんだ。」
「一列で仕掛けますか。」
 「うむ、そこなんだが・・・日本の技師とも相談したんだが・・・」
「集中しないように、散って仕掛けてくれ。」
 「わかりました。」
そして、10人の志願者は幅が100メートルほどある谷底へ散る。
 谷っていっても、山と山の間の谷ではない。
なだらかな丘が連なり、そこだけが平坦になっているのだ。
 それで、馬車などでも通過できるそうだ。

 「この折り畳みのスコップは、なかなかも物ですね。」と、伝令のチムデンだ。
スコップは近代戦には必需品といっても過言ではない。
 武器として敵兵を殴るに最適だし、穴も掘れる。
フライパンが無いときは代用もできる。
 軍用はアルミ製ではダメだ。(雪掻きでも、アルミは使えない。)
重い鋼鉄じゃないと、穴を掘れないからね。
 満州平原は砂地だが・・・やらかい土壌ではない。
表面は砂だが、少し掘ると固い地面が・・・岩ではないんだが、固い土だ。
 そして、鋼鉄の焼き入れがしてある日本製のスコップはスグレ物なのである。(分類は武器になってるのだ。)
固い地面を叩いても凹まないからだ。
 敵兵をスコップで、おもいっきり殴れば即死は間違いないだろう。
第一次大戦の欧州の塹壕戦では、小銃よりスコップが戦闘に役だったとか・・・

 幅が2メートルの地雷感知棒を浅く埋める。
谷底は幅が100メートルくらいだ。
 10本あるから、20メートルをカバーできることになる。
その感知棒をある程度に幅を持たせて、仕掛けるのだ。
 感知棒が感知しても、即爆発は無い。
履帯が踏んで、0.2秒ほど遅延して爆発するようになってる。
 そう、履帯の前部よりエンジンがある後部で爆発すれば、より効果的だからである。
日本人技師が造る地雷だ、こだわりが満載なのである。
 「カンジン隊長。」「ん、なんだ。」
「仕掛けた地雷が爆発するとこを観たいんですが・・・」と、もっともな意見だ。
 「しかし、イワン野郎に発見されれば、銃撃や砲撃があるやもしれんぞ。」と、隊長だ。
「日本人技師に聞いたんですが、戦車は覗き窓が小さいから周囲を満足に見られないって・・・」と、なかなかの意見だ。
 「ふむ、それはそうだが・・・」と、思案するカンジン隊長だ。
「万が1でも足止めが失敗したら、日本軍へ急報しないと・・・」と、更にもっともな意見だ。
 「そうだな。」「しかし、命の保証は無いぞ。」と、隊長が確認する。
「隊長、軍へ入ったときから、いつ死んでも文句はありません。」と、覚悟のほどをいうチムデン伍長だ。
 「よし、では丘の上から偵察することにしよう。」
「日本製の双眼鏡があるから、廻して観ていいぞ。」と、理解をしめすカンジンだ。
 陸軍の東京光学製の6倍30ミリ口径の双眼鏡は、現在でもグンバツな視界なのである。
海軍は日本光学で陸軍は東京光学が御用商人だったのだ。
 東京光学はトプコンと言って、ニコンに負けないカメラ・メーカーだったんだ。

 「カンジン隊長、砂煙が見えます。」と、西方遠方を指すテムジンだ。
「む、むむ。」と、砂煙方向を6倍で観る。
 「イワン野郎だ。」
「何両、ありますか。」
 「数えるから、無線を送れ。」
「ウー、ルー、チィー、パァ。」と、戦車を数えるカンジンだ。
 伍長が馬から携帯無線電信機を抱えてくる。
そして、電信キーをつないで・・・
 「用意できました。」
「うむ。」
 「ソ連軍は15両の新型と打電しろ。」
「了解です。」「カタ、カタ、トン、トン、ツー。」と、電信キーを打つ伍長だ。
 もちろん、日本軍から渡された暗号表で暗号にして打ってるのだ。
無線機はソ連軍の戦車の1部に搭載されているから暗号にするのである。
 「まだ、地雷原には・・・」
「うむ、もうすこしだ。」と、カンジンだ。
 「もう、すこしだぞ。」
「どうだ。」
 と、そのときだ。
地面が盛り上がり、ソ連軍の戦車の履帯の片方が切れる・・・
 「おっ、やったぞ。」
「あっ、もう1両が・・・」
 「まただぞ。」
「おい、ヤツら停止したぞ。」
 「足止めになったやもしれんぞ。」
「おい、4両は車輪が壊れてようだ。」
 「残りは11両だ。」

 「停止だ。」と、ラスプーチン隊長が命令する。
「黄色い猿の地雷だ。」
 「弾除けを集めろ。」と、弾除け要員の蒙古兵を集めるように命令だ。
後方から蒙古兵が・・・のろのろ、やってくる。
 「いいか、お前たち横1列に並ぶんだ。」
「そして、1歩づつ歩くんだ。」「逃げると、こうだぞ。」
 蒙古兵の1人を突撃ライフルで銃殺する。(見せしめだ。)
ソ連兵にとり、蒙古兵なぞ蚊ほども感じない存在だからだ。
 しかたなく、1列に並んで歩き始めた蒙古兵らだ。
つまり、地雷を踏ませて地雷原を処理するのである。
 しかし、日本軍の地雷はヒトが乗っても爆発しないからね・・・
ソ連兵の思惑道理にはいかないのである。
 「どうしたんだ、爆発しないぞ。」
「まさか、戦車しか爆発しないんかい。」と、驚くラスプーチン隊長だ。
 「しかたない、棒を持たせて地面を突くようにしろ。」と、命令を替える隊長だ。
つまり、地雷を発見しようと・・・
 ところが、蒙古兵はヤル気なんて皆無だ。
下手に突いて爆発したら自分が爆死だ。
 だから、突く振りしかやらない・・・
こうして、時間だけが過ぎていき・・・かなりの時間かせぎになったのである。
 

 

 
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