満州国、戦車開発会社

ゆみすけ

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我が皇軍、満州で奮戦す!

10両VS3両の戦いだっ!

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 「キュル、キュル。」「ド、ド、ド。」と、履帯とエンジン音がこだまする。
10両のソ連軍戦車が町へ侵攻してきたのである。
 斥候へ出ていた1騎の勇気のある満州兵が、「町へ入ってきたアルヨ。」と、速報だ。
「了解だ。」「すぐに、郊外へ退避しろ。」と、指示を出す藤川軍曹だ。
 「わかったアルヨ。」「軍曹殿、武運を祈るアルヨ。」「おう。」
ソ連軍の戦車の機銃に撃たれる前に、なんとか無事に退避する騎馬兵だ。
 満州騎馬兵も、出来ることは必死でやってくれるのだ。
「いいか、最初を外したら場所を替えるからエンジンを暖気運転だ。」
 「よし、廻せ。」
ソ連軍は自軍の戦車の騒音で、日本軍の戦車のエンジン音には気が付かないと判断した軍曹だ。
 軍曹は3両の戦車の足止めを成功したら、なんとか乗り切れると判断していた。
つまり、待ち伏せで3両を不動にして残り7両とマジで対戦するつもりなのだ。
 10対3を7対3にハードルを下げれば・・・勝利も手が届くやもしれないからだ。
戦闘は何が起きるか、わからないものだ。
 数が多ければ勝てるものでもないのだ。
石原莞爾は数万の日本軍で20万のシナ軍閥軍に勝利したのだ。
 線で、まともに戦はしないで・・・点で敵の前線に穴を開けたのだ。
その穴から侵入した日本軍と、シナ軍に対峙していた日本軍とシナ軍を挟みこんだのだ。
 数は多いが烏合の衆のシナ軍だから、できた作戦である。
戦車対戦車の戦いに歩兵戦のヤリ方は通用しないだろうが・・・
 藤川軍曹は、日本軍の得意の待ち伏せで作戦を立案したのである。
数がシナ兵より少ない日本軍だからだ。
 今回も、ソ連軍は10両だ。
そして、我が皇軍は3両だ。
 それも、訓練期間は3日ほどなのである。
果たして、勝てるのか・・・我が日本陸軍は?

 軍曹は技官の言っていた訓練砲弾作戦に、すべてを賭けていたのである。
ソ連軍戦車の履帯のピンの工作精度にである。
 技官、いわく・・・ソ連軍は工作精度が良くないと判断した技官だ。
英国情報部からの情報だが・・・
 ドイツ帝国とソ連軍との紛争が勃発して・・・人類史上、初めての戦車同士の戦いが・・・
そこで、ドイツ軍が鹵獲したソ連軍戦車の情報が英国情報部へ流れてきたのである。
 その情報には・・・
① ソ連軍戦車は工作精度がドイツに比して悪い。
② エンジンはジーゼルだが燃料噴射装置が精度が悪い。
③ 砲塔は鋳造の一体成型だ。
④ 履帯は幅が広いが貧弱だ。
⑤ 無線機が隊長車にも無い。
 などが英国情報部から日本軍へ入ってきたのである。
その、履帯は幅が広いが、それゆえ貧弱だ・・・との、情報に賭けた技官の鉛製訓練砲弾作戦なのである。
 履帯は工作精度が悪いから・・・摩耗して、隙間が広がっているだろう。
その隙間に鉛砲弾の破片が入り込んで・・・履帯に無理な動きをさせて、履帯のピンを折るのである。
 履帯を直接狙はなくても、付近へ砲弾を命中させれば破片が飛んで・・・作戦成功と踏んだのである。
履帯が外れて・・・動かなくても、砲塔の主砲は無事だから・・・動けないが砲撃はできるんだが・・・
 ソ連軍が、動けない戦車に踏みとどまって戦うほどの胆力があるとは・・・とうてい、思えないのだ。
ロシア兵は畑から収穫するという兵の考え方の軍隊だからである。
 我が、皇軍とは技量・胆力・基礎教育から雲泥の差なのだ。
日本軍が負けるのは、ウオッカの飲みくらべくらいである。
 藤川軍曹は、日本軍の教育や訓練に絶対の自信があったのだ。
暗算能力・兵器の整備技術・国際法順守や・・・そして、ウソの報告なぞ日本兵は絶対にやらないからだ。
 ソ連兵は粛清を恐れて・・・前線逃避や脱走兵も少なくないからだ。
現に、イラク作戦での国連軍で日本の自衛隊だけが、脱走兵が皆無なのである。
 (日本兵は脱走しない、なぜなら故郷の親や親族に多大な迷惑が・・・)

 「来たぞ。」「見えるか?」と、運転士へ聞く藤川軍曹だ。
「え、え、軍曹殿。」「1列で、やってきますね。」と、新兵だ。
 「露スケめっ、油断してるな。」
「我が皇軍の戦車が居るとは、思ってないようだな。」「ですね。」
 「よし、砲手。」「先頭の履帯を狙え。」と、軍曹だ。
「え、え、やってます。」
 無言で狙いをつける・・・このとき、無心じゃないと当たらないのだ。
当てようとすると、外れるのは宝くじと同じだ。
 「いきます。」と、砲手だ。
砲撃紐を引く。
 「ドウン。」と、遊底が跳ね返る。
同時に薬莢が砲塔内の床に転がった。
 「後退しろ。」と、軍曹が叫んだ。
「ガ、ガ、ガ、ガ。」と、エンジンが唸り戦車は小屋の裏へ退避する。
 と、同時に隠れていた小屋が敵の砲撃で飛散する。
糞のレンガの小屋は跡形もなくなる・・・
 これでは、八七式がソ連軍にバレてしまう・・・
しかし、しかし、間一髪の差で逃げ切る八七式中戦車だ。
 そこは、我が日本製のエンジンだ。
ソ連軍のヤツとは、一味も二味も違うのだ!
 「くそっ、砲撃だぞ。」「戦車か野砲かっ!」と、動揺するソ連軍だ。
「どこへ、いったんだ。」
 「まて、チャンコロは戦車や野砲を持ってるとは聞いてないぞ。」と、イワン司令官がいぶかる。
「まさか、日本軍の助太刀かっ!」と、判断するイワン司令だ。(イワンもバカではないようだ。)
 「くそっ、捜せ。」「前進、全速だ。」
エンジンを全開へレバーを倒す運転士だ。
 「ガクン。」「ガラ、ガラ、ガラ。」
「なんだ、どうしたんだ。」と、叫ぶ司令だ。
 「司令官殿。」「履帯が、履帯が切れました。」
「動けません。」
 「なんだと、仕方がない。」「おまえたちは修理しろ。」
「オレは2号車へ移るからな。」と、イワン司令は2号車へ・・・
 どうしよう?と・・・いぶかる、残された戦車兵が・・・
いなくなった司令を確認すると・・・そそくさと履帯の切れた戦車から、逃げ出した・・・
 「替え部品も無いのに、修理なんて出来るかよ・・・」なのである。
ドイツ帝国軍の戦車などには、替えの履帯が砲塔の周りに附けてあるんだが・・・
 あいにく、ソ連軍のヤツには・・・そんな気の利いた替え部品なんて、皆無なのである。
そこが、天下のソ連軍なのだ。
 失敗すると、更迭なのである。
故障したり、動けなくなると破棄なのだ。
 兵隊と同じで、替わりはいくらでもあるからだ。
テキトーな工作で造ってる戦車だ。
 故障も不良品もシナ軍とトントンなのである。
 
 


 


 
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