ノラ猫カメラ店

ゆみすけ

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ジェットエンジンの技術

ミランダカメラ

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 先日のペトリカメラの話は、良太にとり興味深いものであった。 すでに、カメラは作ってなくとも、そういうカメラメーカーがあった話は、昔話を聞くようでおもしろかったのだ。 それで、用もないのに、ノラ猫屋のドアを開けた。 「やあ、くるとおもってた。」 なんとじいさんが待っていた。 余ほど暇なんだな。 「フィルムがないので。」 と410円を出す。 少し値上がりしたのだ。 スマフォばかりで、フィルム使うヤツは微々たるものだから。 「ペトリの話はおもしろかったよ。」 「そうかい、そうかい、では別のカメラの話だ。」 「日本が大東亜戦争に負けたことは知ってるね。」 「太平洋戦争のこと?」 「まあ、米軍は太平洋戦争と呼んでるが。」 「それで、日本が負けたとき、米軍が日本に軍事技術の生産から研究をやめさせたのさ。」 「それで、飛行機などを作っていた会社は潰されて、社員や技師などは、オマンマの食い上げとなった。」 「うん。」 「それで、軍事に関係ない物なら許されて作ることができた。」 「負けたら文句もいえないもんね。」 「それで、トラックやナベ、ヤカンなどを作ったところもあった。」 「しかし、当時の最先端の軍事技術者たちは、誇りがあり、ナベ、ヤカンは作らなかった。」 「まあ、そうだね。」 「それで、技術が使えて儲けが大きい物を作ることにした。」 「なに?」 「カメラさ。」 「ヘーっ。」 「戦後に生まれたカメラメーカーはほとんどそうさ。」 「日本は安いカメラを作ることには、一番なのさ。」 「そういう、安いカメラが米兵に飛ぶように売れたんだ。」 「それで、外貨を稼いで、日本は少しずつ復興してきたのさ。」 と、じいさんは1台のカメラを出した。 「これは、オリオン光機が作ったミランダというカメラだ。」 「一眼レフだね。」 「帝国海軍で、ジェットエンジンを研究して作っていた技師らが造り上げたカメラさ。」 「ヘーーーーーっ。」 「オレのOM10とは雰囲気が違うね。」 「そうだろう、なんか、こう軍事技術っていう色が見えるんだ。」 じいさんは、ミランダカメラをなでなでしていった。  
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