ノラ猫カメラ店

望遠レンズとは？

初心者は望遠レンズを欲しがる。

　カメラを幼い頃から趣味としているヒトは、ある程度年齢を過ぎたら広角レンズ、それも超広角レンズを欲しがる。　しかし、ヘタな望遠レンズより、超広角レンズは高額である。　望遠レンズは３００ミリくらいになると押し出しもある。　重いが、写真機としての迫力がある。　だからか、初心者は望遠を最初に欲しがる。　写真では、望遠レンズは、ものを拡大するから、なんとなくボケた画像になりやすい。　がっしりとした三脚で、静かにシャッターを押すなら、それなりに見栄えがするが、手持ちで、構えると甘い写真になる。　（最近はデジカメでブレ防止があるが、この話はフィルムの普通のカメラだ。）　

　　　休日で、ヒマな少年、いや青年は、ノラ猫カメラ店へ足を向けた。　アイも変わらずに、誰もいない。　「オーイ。」　だいぶ慣れてきたのか、ぞんざいに呼んだ。　「おう、君か。」　老人、いやオジサンが出てきた。　いったい、なにをして生活費を稼いでいるかわからない店だ。　実際、この一週間で、客は、この青年がただ一人である。　「よく、きたな。」　「ほれ、探してたらでてきた。」　コロンとレンズが顔を出した。　「オリンパスの１３５ミリのＦ３．５だ。」　「また、フィルムを買ってくれるなら進呈しよう。」　「え、それはまた期待したみたいで・・・・」　「遠慮すんなよ、よその中古店で買っても数千円より安いから。」　「ヘーそんなに安いの。」　「まあ、デジカメ用でないし、ズームでもないからな。」　「しかし、レンズはズームは無理してるから、単焦点がいいぞ。」　「アダプターで、ミラーレスデジカメならいけるから。」　これで、良太は２８ミリ広角レンズと５０ミリ標準レンズに望遠１３５ミリが加わった。　「ありがとう、おじさん。」　「まあ、あとは撮り比べて、レンズのおもしろさを実感してみるんだな。」　老人は、苦笑いでかえした。　そして、「レンズにカビを生やさないようにするんだよ。」　「どうしたら。」　「そうだな、防湿庫なんてないだろう。」　「なに、ソレ。」　「それなら、しまわないで、７日に１回くらい使えば、カビは生えないよ。」　「カビは湿度が高いと生えやすい、それにカビたレンズはゴミだから、修理も安くない。」　「カビの話は、今度しよう。」　「あ、それとフィルムがないから１本。」　と良太はゴマをするのを忘れなかった。