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北満隊の冒険
満州型の強さ。
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「本日の偵察班、集合しました。」 四名の戦車乗員が集まる。 「うむ、ごくろう。」 「吹雪くが、ソ連のヤツらは侮れん、目視を密にし、偵察に励むように。」 「敬礼!」 答礼で返す司令官だ。 ここは、北満隊の戦車隊だ。 国境偵察の戦車が出る。 まあ、いつものことだ。 たとえ、吹雪だろうと偵察は欠かさない。 でないと、ヤツらは(ソ連のイワンが)進攻してくるのだ。 こちらは(満州国は覇権意識は無い。)覇権意識は無いが、ソ連は遠慮なく国土を乗っ取る国だ。 そこは、シナといい勝負である。 二重ドアを出る。 最近、隊舎のドアが二重になり温度管理がよくなった。 以前はスキマ風がすごかったが・・・ 戦車は車庫に入ってる。 でないと、凍結してエンジンが掛からないからだ。 氷点下30度はザラな天候だ。 整備係りが、「エンジンは十分ですだ、燃料も満タンですだ。」 「ごくろうさん。」 「では、行ってくる。」 整備士が車庫の扉を開ける。 急いで出る。 車庫の扉が雪で閉まらなくなるからだ。 「まえが雪で、見えん。」 と操縦手だ。 「いつもの、道だ。」と車長がいう。 「わかってはいるんですが。」 「だれも、歩いておらん。」 凍った雪道を戦車は進む。 履帯のある戦車だから動ける道だ。 少しのワダチを頼りに進む。 たまに溝に落ちるが、そこは戦車だ這い上がれるのだ。 「ガ、ガ、ガ。」 無線の調子が悪い。 天候の所為だ。 アンテナが凍りつくのも原因だ。 アンテナの絶縁が氷で悪くなるのだ。 不純物がまじる水は電気を通すからだ。 「まあ、いつもの事だ。」 車長は気にもしないで、偵察任務をこなす。 「まだ、無線はダメか。」 無線係りは、「なんとも言えませんが、天候しだいでしょう。」 これでは、どこかの国の天気予報だ。 「まあ、いちおう巡回したら帰隊するか。」と車長だ。 「そろそろ、燃料半分ですが。」 と操縦手だ。 「よし、引き返すぞ。」 「了解です。」 戦車は大きく旋回する。 履帯に無理はさせない。 戦時ではないからだ。 無理な動きだと履帯はカンタンに切れるのだ。 「おい、そろそろ別れ道のはずだが・・・」 と車長がいう。 「え、え、わかってるんですが・・・」 「迷ったらしい。」 「無線は?」 「ガー、スー、ピイ。」 と雑音ばかりだ 車長はハッチを開けて、景色を観る。 「わからん、オレもわからん。」 どうするべきか、迷子になった。 つまり、遭難だ。 「夜、星で天測しかないな。」 「それまで、動かず、燃料を節約するぞ。」 「わかりました。」 車長は操縦手を叱らない、叱ったところで帰れない。 それに、操縦手も仲間だ、互いに溝は作りたくない。 それに、この吹雪で地形も変わる。 そして、現在のようなGPSは夢の話だ。 遭難したとはいえ、全員が健在で生きてるのだ。 ここは、サバイバル教育の成果を試すときなのだ。 車長は必死に思い出していた。 雪山での訓練をだ。 もう、20年以上前だ。 新兵訓練のときだ。 そうだ、今現在の装備の点検だ。 それで、先の道が見える可能性もあるのだ。 「全員、装備の再点検だ。」 「わかりやした。」 それぞれ、身の回りを調べ始めた。
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