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アイデアが浮かばない。
方法が無いのだ。
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戦車隊のエンジンオイルの温め方を聞いたが、戦闘機には応用は無理だ。 揮発性の高いガソリンが充満している格納庫だ。 火花が一発で、ドカンだ。 とても炭鉱用カンテラも無理である。 もちろん、いつでも飛び立てる体制なら、余計にガソリンがタンクに満タンなのである。 そこで、戦闘機エンジンのオイルタンクに電熱で暖まるニクロム線を仕込んだ。 そして、ソケットで電気を通す。 そして、発電器から電気を供給するのだ。 発電器は屋外の倉庫に仕込んだ。 発電器はデーゼルで、戦車用のお古を使った。 12ボルトあれば十分だ。 そして、停電対策で、バッテリーを間に挟んだ。 戦闘機は3機が待機であるから、配線コードは3機分でよい。 まずは、試験だ。 「ポン、ポン、ポン。」と発電器が廻りだした。 デーゼルだから燃費は良好である。 燃料は、暖房にも使える灯油と同じだ。 しばらく発電器を運転して、97戦のエンジンに触れてみる。 ほのかに暖かい。 これは、使えそうだ。 火を使わないからガソリンの引火の危険はない。 いざ、発進なら機体のコンセントからコードを抜くだけだ。 本郷隊長が検分する。 「お、お、なんとか使えそうだな。」 「ハイ、これから寒くなりますから。」 「そうだな、寒いより痛い寒さだからな。」 「そうだ、97戦は開放風防だな。」 「え、え、前だけですからね。」 「しかし、密閉風防は評判が悪いからな。」 「そうですね。」 「だが、雪の中を飛行は降雪なら無理だ。」 「なんか、考えてくれ。」 「ハイ。」 しまった、またハイと答えてしまった。 本郷隊長は、よろしくと隊舎に帰ってしまった。 どうしよう、今さら無理とは言えない。 ままよ、なんとかなるさ。 戦闘機の風防はアクリルガラスという、合成樹脂まがいの透明の板で作られていた。 ふつうのガラスでは、振動で割れてしまうからだ。 しかし、古くなると曇ったりして交換が必要であった。 防弾のアクリルガラスは厚く、何枚も重ねて造られていた。 大きいアクリルは製造が難しく、一体型の風防は、まだ完成していないのだ。 窓枠が多い密閉式風防は評判が悪かった。 だから、97戦は前だけの開放風防だ。 操縦士の評判も、まあまあだ。 しかし、冬の降雪だから飛べない、馬賊の警戒もできないのでは、面目が立たないのだ。 吹雪では、飛行が無理だから、納得できるが。 これからの季節は、雪はヒンパンだ。 飛行機の車輪はソリを履けば解決であるが、寒くて飛ばないは理由にはならない。 さあ、どうする。
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