359 / 380
ロンメロ将軍の演説
戒厳令の意味は?
しおりを挟む
ここは、独逸帝国の国営ラジオ放送局だ。 午後から放送する内容をレコード盤に刻んでいる。 (まだ、日本のような紙テープの磁気録音は、独逸帝国でも研究段階だ。) その内容は、シュリーマン総帥の犯罪の糾弾であった。 新聞号外で、戒厳令と、その戒厳令の理由は歌っていた。 しかし、詳細には記述していなかった。 まあ、極秘文章を国民全員に公開など出来はしない。 部分的に、クーデター臨時政府が発表したことのみだ。 混乱を招く可能性が大きい、ソ連とシュリーマン総帥の関係などは、極秘事項であったのだ。 なんせ、まだシュリーマン総帥を確保していないのだ。 躍起になって、検問やパトロールを広範囲に実施しているが、どこに雲隠れしたか・・・・ さて、録音室には司会者と、近衛連隊のシュミットとシュリーマン総帥付の秘書のフローラが居た。 司会者が、「近衛連隊のシュミット少尉と総帥秘書のフローラさんに、今回の戒厳令の騒動を解説してもらいます。」 「今日はお忙しいところ・・・」と定番の挨拶だ。 シュミットは、「じつは、以前からゲッペルン総帥の遭難事故は仕組まれたのではないかとの疑問はありました。」 「ほう、どんな疑問ですか。」と司会者だ。 「その日の総帥リムジンが、本来のリムジンではなかったのです。」 「本来のリムジンですか。」 「詳しい性能や防御は軍事機密ですから、しかし、いつもと違うクルマだったのです。」 「そして、鉄道の陸橋をリムジンが通過すると、同時にフランス国鉄の貨物機関車が陸橋から脱線して落ちてきました。 総帥のクルマから警備の者まで、多くの兵がなくなりました。」 「とうぜん、機関士や助手もです。」 「そして、これは、私がフランス国鉄の保線区員から聞いたのですが、陸橋の保線区員は、よっぱらいのケンカに巻き込まれて事故のあと死んでるんです、それも、多額の借金を返したあとにですよ。」 「それは、なんとも、はや、あきらかに偶然とは思えないですね。」 「私はなにか、途方も無い、なにかの仕業としか。」 とシュミットが説明する。 司会者は、フローラへ、「フローラさんは、シュリーマン総帥の秘書とか。」 「ハイ、応募で雇われました、総帥とは血縁など関係はありません。」 「では、今回の戒厳令とのかかわりは、ありますか。」 「私は、応募して雇われただけですから、かかわりは無いです。」 「そうですか、では昨夜の総帥の様子は?」 「いつもと、かわりなかったかな。」 まあ、フローラは秘書という立場で放送に出ているだけである。 ロンメロのスパイであることは、極秘であるのである、シュミツトも知らないのだ。 シュミットは続ける、「それで、私は、総帥の身辺を、それとなく調べていたのです。」 「シュリーマン総帥はどこへ、逃走したのでしょう。」 「わかりません、鋭意捜査中です、国民の皆さんの協力が不可欠です。」 「今日は、戒厳令の詳細について近衛連隊の少尉殿に説明をうかがいました。」 ・・・「カット。」 ディレクターの声だ。 「本日は、お忙しいところ、放送に協力したいただき、ありがとうございました。」 とラジオ局の局長が定番の挨拶だ。 シュミツトも捜索に加わりたいのだが、ロンメロの依頼では、無下に断われないのである。 市内には、号外の新聞が飛び交い、あわたたしく、兵員輸送車が捜索員を運んでいた。 もう、アリの這い出るスキもないのだが、シュリーマンは捕まらない。 どこへ、行ったのか? ソ連へ逃げられれば、最悪 開戦だ! しかし、独逸帝国とソ連クレムリンの密約を下手に公開なぞ出来ない。 独逸帝国内で、何とかしなければ、ソ連に付け入るスキを与えかねない。 どうする、シュミット、どうするロンメロ将軍、フローラは他人事のようにロンメロとの新婚生活を考えて、薬指を眺めて、(婚約指輪だ。)ニンマリ顔が止まらない。 ・・・ ロンメロ将軍の演説は?・・・・・
0
お気に入りに追加
293
あなたにおすすめの小説
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
大和型戦艦4番艦 帝国から棄てられた船~古(いにしえ)の愛へ~
花田 一劫
歴史・時代
東北大地震が発生した1週間後、小笠原清秀と言う青年と長岡与一郎と言う老人が道路巡回車で仕事のために東北自動車道を走っていた。
この1週間、長岡は震災による津波で行方不明となっている妻(玉)のことを捜していた。この日も疲労困憊の中、老人の身体に異変が生じてきた。徐々に動かなくなる神経機能の中で、老人はあることを思い出していた。
長岡が青年だった頃に出会った九鬼大佐と大和型戦艦4番艦桔梗丸のことを。
~1941年~大和型戦艦4番艦111号(仮称:紀伊)は呉海軍工廠のドックで船を組み立てている作業の途中に、軍本部より工事中止及び船の廃棄の命令がなされたが、青木、長瀬と言う青年将校と岩瀬少佐の働きにより、大和型戦艦4番艦は廃棄を免れ、戦艦ではなく輸送船として生まれる(竣工する)ことになった。
船の名前は桔梗丸(船頭の名前は九鬼大佐)と決まった。
輸送船でありながらその当時最新鋭の武器を持ち、癖があるが最高の技量を持った船員達が集まり桔梗丸は戦地を切り抜け輸送業務をこなしてきた。
その桔梗丸が修理のため横須賀軍港に入港し、その時、長岡与一郎と言う新人が桔梗丸の船員に入ったが、九鬼船頭は遠い遥か遠い昔に長岡に会ったような気がしてならなかった。もしかして前世で会ったのか…。
それから桔梗丸は、兄弟艦の武蔵、信濃、大和の哀しくも壮絶な最後を看取るようになってしまった。
~1945年8月~日本国の降伏後にも関わらずソビエト連邦が非道極まりなく、満洲、朝鮮、北海道へ攻め込んできた。桔梗丸は北海道へ向かい疎開船に乗っている民間人達を助けに行ったが、小笠原丸及び第二号新興丸は既にソ連の潜水艦の攻撃の餌食になり撃沈され、泰東丸も沈没しつつあった。桔梗丸はソ連の潜水艦2隻に対し最新鋭の怒りの主砲を発砲し、見事に撃沈した。
この行為が米国及びソ連国から(ソ連国は日本の民間船3隻を沈没させ民間人1.708名を殺戮した行為は棚に上げて)日本国が非難され国際問題となろうとしていた。桔梗丸は日本国から投降するように強硬な厳命があったが拒否した。しかし、桔梗丸は日本国には弓を引けず無抵抗のまま(一部、ソ連機への反撃あり)、日本国の戦闘機の爆撃を受け、最後は無念の自爆を遂げることになった。
桔梗丸の船員のうち、意識のないまま小島(宮城県江島)に一人生き残された長岡は、「何故、私一人だけが。」と思い悩み、残された理由について、探しの旅に出る。その理由は何なのか…。前世で何があったのか。与一郎と玉の古の愛の行方は…。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
札束艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
生まれついての勝負師。
あるいは、根っからのギャンブラー。
札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。
時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。
そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。
亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。
戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。
マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。
マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。
高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。
科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!
暁のミッドウェー
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。
真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。
一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。
そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。
ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。
日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。
その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
(※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる