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なんという、ことだ。
事故だが、考えたくもないことだ。
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「う、う、っ。」 オレは生きているのか。 あたりを見回す。 助手が近くに倒れていた。 ピクリとも動かない。 「おい、大丈夫か。」 しかし、助手は動かなかった。 しかたがない、オレだけでも状況を把握して駅に知らせねば。 そういえば、あの時VIPの乗るクルマは下を走っていたが。 ふと、前を見た。 煙が所々から上がり、瓦礫があたりを覆っていた。 機関車は車輪を上に腹ばいになっていた。 あたりには、材木が散乱している。 陸橋のぐずれた土砂がヒドイありさまだ。 「オーーーーイ。」 声を出すが、だれも返事などしない。 事故を駅に知らせねば、後続の列車が・・・・ 機関士は動けない体を無理に動かして、近所の家を探した。 電話で、知らせようと考えたのだ。 さいわいにして、道路の先に民家が見えた。 片足を引きずり機関士は民家へ急いだ。 「電話を貸してくれ、事故で、駅に知らせなくては。」 民家の住民は、機関士の傷だらけの服装から事故がウソではないと、電話の受話器を差し出した。 「ハイ、○×○駅です。」 「機関士のボウマンだ、事故だ、脱線事故だ、場所は・・・・で、すぐに後続の列車に知らせてくれ。」 そこまで、言うのが精一杯であった。 機関士ボウマンは安心したか、そのまま息を引き取った。 民家の住民は、急いで救急車を手配した。 救急車の要請を受けた消防署は、鉄道事故と聞いて、フランス警察へ連絡した。 そのころ、いつまで待っても総帥様御一行のクルマが着かないから、訪問予定の病院から独逸帝国中央本部の広報担当に連絡が入る。 「あれ、総帥は時間どうり、クルマでそちらの病院へむかったが。」 「まだ、お見えになりません、もう30分も過ぎてるんですが。」 「わかりました、では、また連絡いたします。」 広報担当は電話を切る。 「オイ、総帥がまだ到着していない、至急、通過する道へ近衛連隊のバイク隊を出せ。」 「近衛機動部隊にも連絡しろ。」 広報担当はドアを開けたまま走っていった。 「総帥の後続指揮戦闘車へ無線連絡を入れろ。」 「それが、先ほどから定時連絡をしているのですが、応答ありません。」 「なんか、事故かテロか、至急探索隊を出せ。」 もう、総帥本部はサイレンが鳴り、近衛機動連隊がバイクで、飛び出していく。 緊急時にはバイクが速いのだ。 近衛機動連隊は総帥の向かった先の病院を聞いて、フランス共和国までの幹線道路を駆ける。 総帥のクルマは、まずコースが決まっている。 主幹線道路を通るのだ。 主幹線道路は広く、見通しもいいので警戒しやすく、万一の攻撃でも、対策が立てやすいからだ。 それに、後続の指揮戦闘車は装甲もあり、機関砲まで装備しているのだ。 テロなんかにはヤラれない自負が近衛機動隊にはあった。 それが、応答がナイ。 どんな敵なのだ。 戦車の2~3両くらいでは、指揮戦闘車は負けない。 総帥の乗る装甲リムジンも機関砲くらいでは破壊できないはずだ。 近衛機動隊のバイク隊は側車に重機関砲(20ミリバルカン)を装備している。 陸軍の中でも精鋭から選りすぐった者達である。 シャキーンと弾込めを忘れずに、(最初の1発は手動で込めなければならない。)用意万全で、バイク隊は急いだ。
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