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偵察の結果は最悪だ。
ソ連軍の捕虜
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佐藤君が尾翼修復の最中に木戸が偵察から帰って来た。 あまりイイ顔ではない。 「サトウよ、あまりいい話ではない、ここから4キロほど先にソ連軍の前線基地がある。」 「規模は。」 「まあ、前線であるから、大したことはないが。」 「戦車は。」 「うむ、4両が整備中で、テントが6張りあった。」 「人員はざっと50ぐらいだ。」 どうやら、不時着は国境ギリだったようだ。 「その基地に例の。」 「イヤ、対空戦車はいなかった、しかし出払ってるのかもしれん。」 「オイ、サトウよお前望遠カメラもってたな。」 「ありますよ、今見せましょう。」 なんと佐藤君は飛行機撮影用の望遠カメラを肌身離さずに持ってたのだ。 「よし、明日にでも前線基地の偵察で対空戦車がいたら撮影してやる。」 「おまえは、なんとしても機体をなんとかしろ。」 「了解です。」 佐藤君、キオツケ敬礼で返礼した。 「よし、それだけ気合があれば間違いない。」 夕方になり、あたりが暗くなってきた。 灯りをつけると敵に発見される危険がある。 テントを張り、中で暖をとりながら交代で眠った。 夜、星の位置から緯度などがわかった。(正確な時計がいる。) 国境ギリで、かろうじて満州国内らしい。 無線がダメで、人里も遠い、機密事項満載の軍用機から離れられない。 いまごろ空母はどうしてるだろう。 信号弾を込めた銃を脇に置いて毛布に包まり見張りを替わった佐藤君であった。 ・・・・ で、朝だ。 木戸大先輩がおもむろにモカを入れる。 マグカップで飲む、「朝はコーヒーが最高ですね。」 「そうだろう、今度入れ方を教えよう。」 「よろしく、お願いします。」 「うむ、まあ帰ったらだが。」 なかなかゴマすりの佐藤君だ。 「では、オレは偵察に行ってくる、カメラを頼む。」 佐藤君は木戸大先輩に望遠カメラを渡した。 パッと見、連発機関砲のようだ。 肩当があり、ライフルを構えるように引き金を引いて撮影するのだ。 帝国光学製の日本の誇れる国産名品である。 さて、昨日の仕上げだ。 操縦装置はOKだ。 あと機内配線もOKだ。 エンジンの点検とエンジン始動が問題である。 ジェットエンジンは起動装置がないと始動は無理だ。 レシプロエンジンなら慣性動力を使えばOKだ。 月光改はジェットエンジン始動用レシプロエンジンが装備されていた。 ジェットエンジンのタービンブレードを回転させるためのエンジンだ。 まあ、自動車のセルモーターと同じだ。 ジェットエンジンのブレードを廻せばいいから小さいエンジンであった。 それを点検して、ジェットエンジンのタービンブレードの点検だ。 これが、大変なのだ。 カケがあったら事故につながる、特に不時着で衝撃を喰らってるから、点検が鉄則であった。 とりあえず、レシプロエンジンを始動してタービンブレードの回転にムラなどないか点検していた。 なかなかいいぞ、これはジェットエンジンが始動できそうだ。 佐藤君、ジェットエンジンを掛けたくてムラムラだ。 操縦免許がないから、本来はダメである。 しかし、飛ぶわけではない、少しならいいか、周りには誰もいないからね。 佐藤君、ジェットのタービンブレードを廻すスイッチを入れて、さながらジェット戦闘機の雰囲気を味わっていた。 ・・・・ と、木戸大先輩が誰か連れて逃げてきた。 えらく派手な着物様のヒトだ。(満州国の貴婦人の衣装だ。) そうして、「廻せ、廻せ。」 と手で合図だ。 すると、木戸先輩のはるか後方から無限軌道の音だ。 なんとソ連戦車に追われているのか。 たいへんだ。 佐藤君、風防ガラスを全開にして木戸先輩らを迎える。 月光改は最高6人まで搭乗できる。 派手な着物様のヒトも乗り込んで、ベルトを佐藤君が締めた。 操縦席に飛び込んだ木戸先輩がエンジン出力スロットを上げた。 キーーーーンとジェットエンジンが吼える。 機体がスルスルと走り出した。 ソ連戦車が砲撃する。 あぶない、先ほど駐機していたところが爆発している。 「いくぞ、なむさん。」 木戸が操縦幹を握り、スロット全開だ。 ゴーーーーーーー ジェットエンジンの轟音を残して満州の空に月光改は飛び出した。
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