193 / 380
空母キラーの潜水艦
これが、独逸帝国の技術だ!
しおりを挟む
総帥の助言から、空母開発の重荷を解かれた海軍工廠技術者らは、潜水艦の設計を対空母型に舵を切った。 いままでは、通商破壊の商船を狙う潜水艦が空母狙いとなる。 とうぜん、空母の周りには駆逐艦が居る。 だいたい6隻の護衛駆逐艦が空母の周りに展開している。 その駆逐艦から身を隠し空母のドテッパラに魚雷を撃ち込むのだ。 技術者のひとりである、ハイネンは考えた、日本の潜水艦は機関音やスクリュー音が聞えない。 別の技術者のベルクも考えた、「ハイネンよ、対空母の潜水艦だが、Uボートの欠点はなんだ。」 「それは、海中で蓄電池で動くから速度が遅いし(15ノット)潜航時間も限られている(8ノットで60時間くらい)ことだ。」 「それに、Uボートの推進音が駆逐艦のソナーで感づかれることだ。」 「日本のは音がしないらしい。」 「英国に日本の派遣潜水艦がいるな。」 「日本のサブマリンが、どんな音の機関音やスクリュー音か聞いてみたい。」 「だが、どうする。」 「わが、Uボートで英国のポーツマス軍港の沖に網を張り、音を聴くのだ。」 どこも考えることは同じだ。 「では、キール軍港の海軍司令部に相談するか。」 「総帥からの開発要望だ、イヤとはいわないだろう。」 ふたりは、キール軍港に向かった。・・・こちらは英国のポーツマス海軍基地だ。 英国戦艦が幅を利かせている。 英国に譲渡した日本の空母が居るが、そこは天下の大英帝国だ。 空母より戦艦の国なのだ。 空母は研究用として軍港の奥のドックに仕舞われていた。 潜水艦も、開発は遅れていた。 まあ、ソナーなどは例外だ。 独逸帝国のUボートに比べて、あきらかに劣っていた。 天下の大英帝国が海中に隠れて攻撃などありえない、が本音だ。 古くは、スペイン無敵艦隊を破ってからの伝統である。 伝統は、まず変わらない。 戦艦偏重の大英帝国海軍である。 ・・・・ポーツマス沖にUボートが日本の潜水艦偵察にやってきて網を張った。 独逸帝国Uボートは水中聴音器をとうぜん装備している。 感度までは著者は知らないが。 一応、領海のギリである。 軍艦旗と国旗を掲げている(国際法で決まっているのだ。)民間船は国旗を掲げる、掲げていないのは海賊船と思われても文句はいえない。 レーダーに感あり。 Uボート艦長は潜航を指令する。(旗は当然しまう。) 海中でモーターを止めて、潜望鏡深度で様子をうかがうUボートだ。 「おい、やってきたぞ。」 「英国の潜水艦だ、録音用意。」 ソナー員が磁気テープ録音機のスイッチを入れる。 紙に磁石の粉(フェライトマグネット)を塗った細長いテープに音を電気の強弱に変えて録音する。 一応、独逸帝国の最新秘密兵器だ。 まだ、一般にはレコードぐらいしかない。 日本海軍は録音を紙テープではなく、石油から加工したナイロンテープを使っていた。 磁力粉はアルニコマグネットを粉にして塗ったものだ。 記録できる周波数帯の広さなど、録音では日本に一日の長があるようだ。 グワン、グワン、グウンと英国潜水艦が通りすぎた。 まるで軍楽隊のようだ。 Uボート艦長は天下の大英帝国もこんなものかとバカにした。 と、その後ろに日本海軍のイ号だ。 「おい、こんどは日本のヤツラだ、しっかり録音しろよ。」 ソナー員は緊張する。 汗が額から伝わる。 ウワサで音がしない、と聞いていたが、全くということは無いハズだ。 ヘッドフォンを掛けなおす。 まだか、ん、ん、チャプ、チャプと小さく波の音が聞えるような気がするが、まだ日本のサブマリンは来ないのか。 「おい、録音できたか。」 艦長が聞いた。 「え、通り過ぎたのですか。」 「あ、あ、今、目の前を行ったが、どうか。」 ソナー員は呆けたように固まった。 なんにも聞えなかった。 水鳥が波をかき分ける感があっただけだ。 とても録音できる音ではない。 海上だからデーゼルは動かしていたはずだ。 でも、聞えない。・・・・そのころ、イ号艦では、ソナー員が「近くに独逸帝国のUボートらしきフネが潜望鏡深度で当方の様子をうかがっていましたが。」 Uボートは動力のモーターを止めても、電気装置や、もろもろの装置から音がすこしは出るのだ。 艦長が、「あ、あ、たぶん音でも録音しようとしたのだろう。」 「どうします。」 「今は戦時ではない、が、そうだ!独逸帝国に敬意を示してベートーベンの第九のさわりを流してヤレ。」 艦長もなかなかイタズラが好きなようだ。 アクデブソナーから第九のさわりが流れる。 Uボートのソナー員は水中聴音器のスイッチを外部スピーカーにつなぐ。 流れる第九の音楽を聴いて、艦長が、「感づかれていたのか。」 思わずゾッとして、制帽を脱いで額の冷や汗を拭った。
1
お気に入りに追加
314
あなたにおすすめの小説


土方歳三ら、西南戦争に参戦す
山家
歴史・時代
榎本艦隊北上せず。
それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。
生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。
また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。
そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。
土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。
そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。
(「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です)

織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
札束艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
生まれついての勝負師。
あるいは、根っからのギャンブラー。
札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。
時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。
そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。
亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。
戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。
マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。
マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。
高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。
科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!
【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?
俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。
この他、
「新訳 零戦戦記」
「総統戦記」もよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる