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第24話 初依頼
しおりを挟む先程のやりとりの後、彼女から簡単な依頼を受けてみないかと提案された俺は、二つ返事でギルドに向かってきたのだった。
「あら、おかえりなさい」
「ただいまニャ!」
ギルドへ戻って来た俺達を受付のカリーナさんが出迎えてくれる。
何やら紙の束を抱えて作業をしているところのようだ。
「あ! もしかして今依頼書張り出してるとこニャ?」
「ええ、そうよ。…もしかして彼の初依頼でも探しに来たの?」
「フッフッフ…実はそうなのニャ! 先輩には新人を見守る義務があるのニャ!」
どこか自慢気に胸を張るシーラ。
もう先程までの不安は拭いきれたようだ。
「フフ…そうなの。 それだったら丁度良いのが来てるわよ」
そう言ってカリーナさんが一枚の依頼書を差し出してくる。
2人でそれを覗き込むと、簡単に内容を説明してくれた。
「内容は回復薬の材料となる薬草20束の採取。状態や質にもよるけど、余剰分は今は大体1束30ゼルくらいで買い取るわ。」
「期限は2~3日、初回ということで、契約金はサービスしておきます。何か質問はありますか?」
( …いや、無いな )
首を横に振り、問題無いことを示す。
「では、受領の手続きを行いますので受付の方へお願いします」
依頼書を受け取り言われた通り受付へ向かうと、多少驚かれたつつも対応してもらえた。
「こ、こちらの納品依頼を受けるということで宜しいでしょうか?」
頷いて回答をする。
「はい、では身分証の方を…はい、はい、確認しました。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
無事に手続きを終え、シーラの所へ戻る。
「ほら、可愛い後輩が戻って来たわよ?」
「ニャ?! お、お疲れニャロイさん!」
何故か飛び上がり、眼を泳がせるシーラ。
何か内緒話でもしていたのだろうか?
誤魔化すようにシーラは話を続ける。
「そ、それじゃ早速、出発するニャ~!」
そのままバタバタと外へ駆け出していく。
カリーナさんは何故か笑っていたが、「よろしくね」とだけ言うとカウンターへ戻って行ってしまう。
俺は、慌ててシーラの後を追ってギルドを出た。
____________________
現在、俺達は依頼達成のために南の街道沿いにある森に来ていた。
あの後シーラにはギルドを出たすぐの所で追いつき、特に何を話していたのか聞けないままでいる。
彼女の方から言ってくることも無いため、あまり詮索もしない方が良いだろうと判断した。
そんな彼女から今は、薬草の見分け方や摘み方を教わっている。
「依頼された薬草は、葉の裏側が黄色いからスグ分かるニャ。積む時はなるべく、根も一緒に抜くようにすると買取の値段が上がっておトクなのニャ♪」
目の前の彼女は鼻歌混じりに薬草を摘み、合間に有益な情報を交えて俺に冒険者としての知識を与えてくれる。
「あ!この木の実は甘酸っぱくて美味しいやつニャ!」
…時折そうではないものも与えてくれるが、彼女が楽しそうなので良しとしておく。
そんなこんなで俺もいくらかコツを掴み、依頼に必要な納品分と余剰分10数束をまとめ終えた頃、近くの茂みがガサリと音を立てた。
「! 魔物かニャ!」
すぐさま音に反応してダガーを構えるシーラ。
俺も遅れてとりあえずの構えを取った次の瞬間、茂みから飛び出して来たのは1匹の兎だった。
兎には尖った角が生えており、何故か体から血を流している。
「…ニャんだ、只のホーンラビットだっ…」
言い終える前に目の前の兎が、新たに飛び出して来た影に喰らいつかれた。
影は仕留めた獲物を、ガツガツと貪っている。
そこに現れたのは、灰色の毛並みをした狼だった。
「グ、グレイウルフ!? 」
その言葉を皮切りに狼がゆっくりとこちらを見据え、低く唸る。
「ロイさん、あれは危険度Dランクの魔物ニャ。刺激しないよう静かに下がるニャ…」
シーラが小声でそう言い、その通りにゆっくりと後ろへ下がり始める。
狼はこちらを見ているが、未だ襲っては来ないところを見ると、このままいけば上手くやり過ごせそうだ。
そう思った矢先、狼の側に1本の矢が突き刺さる。
反射的に飛んできた方向へ顔を向けると、遠くの木の影に人影が見えた。
向かおうとする間に、刺激された狼が咆哮し、こちらへ駆け出して飛びかかって来る。
「! ロイさん!」
咄嗟に腕で防御するが、尚も食らいつこうと爪を立てて襲いかかる。
( ぅおおおお!? 離れろぉっ!)
がむしゃらに腕を振り回すと狼は軽く跳びのき、唸りながらこちらを伺っている。
「ロイさん! 大丈夫かニャ!?」
シーラが側に寄って来て、武器を構える。
鎧に少し傷が付いた程度で何も問題は無い。
親指を立てて無事を伝える。
「それにしても…一体誰が矢なんて打ち込んだニャ…?」
謎の一矢により、狼との戦闘が始まった。
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