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第14話 明かり
しおりを挟むレベルが上がったことで、ようやくスキルポイントを得ることが出来た俺は、探索を一旦やめて泉の広場まで戻って来た。
これで戦闘の悩みを解決できるような技能が得られれば、もっと戦いやすくなるだろう。
泉の側に腰を下ろし、早速検索を発動させる。
現在の状況や、物資、戦い方などを条件化して内容に絞り込みを掛けていった。
結果、候補に上がったのはこの2つ。
《 投擲 》:物を投げる技能。熟練度により射程が伸び、命中率に補正がかかる。
《 雷魔法 》:雷系統の魔法が扱えるようになる技能扱える魔法は、使用者のイメージと熟練度によって
左右される。
どちらも遠距離からの攻撃が期待出来そうな技能だ。
ポイントは1つ分しかないため、片方を選ばなくてはならない。
《水魔法》を練習していて思ったが、正直なところ魔法の扱い方がかなり難しい。イメージを強く持ちつつ、集中して魔力のコントロールを続けなければならず、少しでも気が緩むとすぐに魔法が崩れてしまう。
今の自分には精々、歪な水球を十数秒手のひらに浮かべる程度が限界で、とても攻撃には使えたものではなかった。
恐らく、《雷魔法》も自分には静電気を起こすのが関の山だろう。
そう考えれば自分には、物を投げるだけの《投擲》の方が向いていそうな気がした。
決心がついたので、早速技能を取得する。
《 技能:投擲を 取得しました 》
新しい技能に心躍らせ、手頃な石を手にして《投擲》を発動し、正面の木に向かって石を投げる。
…石は目標を逸れ、隣の茂みに消えていった。
( …魔法にせよ何にせよ、練習は必要か… )
それからしばらく、《投擲》の練習として石を投げ続けた。
いくらか命中するようになってきたところで、めぼしい小石が無くなったため代わりはないかと辺りを見回していると、大きめの岩が目に入った。大きさにして大体80cmくらいはある岩だ。
そして思った。的に上手く当たらないなら球を大きくすれば当たるのではないか、と。
岩を鷲掴み、実際に思い切って投げてみると、そこそこの力だったにもかかわらず岩が木にめり込み、大木がへし折れた。
ズズゥンと辺りに木の倒れる音が響く。
これ、猪相手に使ったらとんでもないことになるのでは…?
実際に想像をしてしまい、もう少し威力は落とすようにしようと心に誓った。
小一時間して、投げた石を収納に集め終え、念のために岩もいくつか加えておく。
実際に使う気は無いがあくまで保険として持っておく。
またあの巨大猪が出てこないとも限らないからだ。
そうして準備を終えて、ようやく森の探索を再開する。
実は変形魔法を解いた時に、遠くで煙のようなものが上がっているのが見えた。
誰か人がいるのかも知れない。
何かの見間違いかも知れないが、それでも探索の指針が出来たことは喜ばしいことだ。
俺は嬉々としてその方向へ足を進めて行った。
なるべく真っ直ぐに進み、邪魔な草木をかき分けて歩いていく。
道中でつまづいて転んだり、角の生えた兎に追いかけられたり、本当に真っ直ぐ進めているのか不安になりながらも、とにかく前へと進み続けた。
辺りはもう薄暗くなり始め、時たま差し込む月明かりだけが行き先を照らしてくれる。
( …明かりの技能の方が良かったかな… )
歩きながら今更、そんなことを考えていた。
暗いせいか段々と、思考が後ろ向きになってきている。
城の地下にいた時のことがじわじわと思い出され、心細くなっていた心を更に追い詰めてくる。
それでも歩みを止めずにはいるものの、目に見えて速さは失われていった。
そんな時、遠くに小さな火が揺れているように見えた。
( ……あれは…? )
瞬間、考えるよりも身体が先に動く。
木々をへし折り、葉を吹き飛ばし、ひたすらに森を駆ける。
あれは明かりだ、誰か居るんだ、誰か…!
もはや足元は見えていなかったが、不思議と躓くことも無く、ただ全速力で明かりの元へ走った。
何一つ警戒などしないまま。
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