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第13話 戦闘終了
しおりを挟む視線の位置が高い。
それは俺の目論見が上手くいったことを示していた。
土壇場での賭けだったが、成功のようだ。
ブヒブヒと鳴き声が聞こえて下を向くと、
黒猪は鼻息を荒げ、こちらを威嚇している。
そこに先程までの迫力は、微塵も無かった。
( …これは…勝負にならないだろうなぁ… )
体格差は逆転し、大体相手の2~3倍はある。
今ならあの突進を受けたところで、転びもしないだろう。
試しに一歩ズシンと足を踏み出すとボスは怯み出し、
一目散に林の奥へ逃げていった。
他の猪達も後を追って行く。
突然の戦闘がようやく終わり緊張が解け、その場にガシャン
と尻餅を着いて大の字に倒れ込んだ。
( …勝った…で良いのか…? )
猪のボスは逃げて行ったがこちらも何とか1匹倒した。
ボスはこちらを恐れて逃げていった訳だから、勝敗をつける
ならギリギリ辛勝といったところだろう。
変形魔法の解除が間に合わずあの突進を受けていたら、
俺は今頃只の鉄クズになっていた筈だ。
今回は何とか追い返せたが、次は死ぬかもしれない。
( …少しは戦えるようにならないとな )
今の身体のサイズならやられることは無いだろうが、
それでは森の中を満足に探索することが出来ない。
そのため、どうにか変形後のサイズでの戦い方を考えなくて
はならなかった。
頭の中で戦闘をあれこれシミュレーションしてみる。
( 殴る蹴るでも戦えそうではあるけど…素手は
やっぱり不安だよな…)
先程の戦闘での凄惨な光景を思い出し、少し背中がゾワッとした。
正直もう、直に生き物とやり合いたくは無い。
( 何かこう、ちょっと距離をとって戦えるようなものが欲しいな… )
やはりそういった武器と言えば槍だろうか。
( 森の中に使えそうな物があれば良いんだが… )
恐らく、尖らせただけの木の棒程度ではきっと歯が立たないだろう。
( 出来ればしっかりした刃物が欲しいけど… )
体を起こし、改めて周囲を観察してみる。
( …まぁ、あるわけ無いが…)
近くには雑草や白い花、大きな木、寝床代りの泉、あとは木の枝や石ころが落ちているくらいだ。
この中で使えそうなものといえば…石くらいか。
( …投げても牽制くらいにしかならないよなぁ… )
そもそも当てられるのかすら怪しいところだ。
技能に頼ることも考えたが、水魔法や検索は戦闘向きではないし、得意の変形魔法も一度につき1つの対象にしか使えないため、自身に掛けているもので精一杯だ。
( 仕方ないか…。 まあ無いよりはマシだろう )
そう言って俺は自身に再び変形魔法を掛けてから、なるべく大きめの石を探し始めることにした。
少しして拳大の石をいくつか見つけたので、それを収納に入れ、森の探索を再開する。
特に何事もなく探索を続けていると、不意に足元でべちゃりとした嫌な感触を感じた。
恐る恐る下を見ると、足の下で薄緑色の粘液のようなものがグニュグニュと蠢いていた。
( うわぁっ!? )
慌てて飛び退き、地面で足の裏をひたすら擦る。
その間にも目の前の粘液は蠢き、こちらへゆっくりと迫ってくる。
( …うわぁ…なにあれ… )
とりあえず収納から石を取り出し、粘液に向かって投げつける。
石は粘液のど真ん中に飛び込んだものの、特に効いたそぶりは見せずに粘液は前進する。
俺は、ありったけの石やそこらにあった枝や木をひたすら投げて応戦した。
すると、パンッと小さな音が鳴り、粘液はほどけるようにして動かなくなった。
( 倒した…のか…? )
ビビりながら足先で、積み重なった石の山をつついていると頭に久々の鈴の音が響き、かなり驚いた。
《 経験値 32 を得ました 》
《 ※※※※ の レベル が 4 に 上がりました 》
《 ステータス が 上がりました 》
《 5 の スキルポイント を 得ました 》
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