鉄巨人、異世界を往く

銀髭

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第7話 ステータス

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…夢を見ていた。

懐かしいような、寂しいような、不思議な感覚。

誰かが、自分を呼んでいる。

あれは、誰だっただろう…?

………。

____________________


俺は、ゆっくりと目を開けた。
何か、夢を見ていたような気がするが、その内容が
思い出せない。
まあ夢なんて大抵、そんなものだろうと深くは
気に留めずにいた。
そのまま、ボーっと視線だけを彷徨わせていると、視界が揺らいでいることに気付く。

 ( 昨日はたしか…やっと城を脱出して、森で迷って、その後は…泉に来て…? )

そこまで記憶を辿っていく内に、ようやく思考を覚醒
させ、自分が今何処にいるのかを理解した。

  ( ……ここ、泉の中か!? )

自分が水中にいることに気付いて、慌てて立ち上がる。
派手に飛沫を上げ、泉から鎧の上半身が飛び出す。

気を失って入水など本来なら自殺行為だが今の自分が呼吸の要らない身体であったことを思い出す。

そのことに悲しむべきか喜ぶべきなのか悩みつつ、
水から上がると、城の地下で聞いたあの、無機質な
鈴の音が聞こえた。

   《 プロローグ:暗闇の巨騎士 を 達成しました。》

   《 経験値 120 を 取得しました 》

   《 ※※※※ の レベル が 3 に 上がった 》

   《 ステータス が 上昇しました 》

   《 10 の スキルポイント を 取得しました 》

矢継ぎ早に声が響き、頭がクラクラする。
告げられた言葉の意味について考えてみるが、
どうにも要領を得ない単語ばかりだった。

だが、不思議と身体に力が湧いてくる感覚がある。

  ( レベルが上がった ってこういうことなのか? )

  ( 言われてみれば、前の時もそうだった様な気が… )

そう先日の事を思い浮かべていると、謎の板が突然目の前に現れた時のことを思い出す。

  ( そういえば、あの板は何だったんだ? )

  ( 今回は出てこなかったみたいだけど… )

周囲を見回すが、それらしきものは見当たらない。
だがふと下を見ると、水面に写る鎧姿の自分と目が合った。

初めてまともに自身の姿と対面する。

こうして自分の姿を見るのは初めてだったが、あまり驚きなどは無かった。 

水面に目を向け、改めて自分を観察する。

ガッシリとした胴体に、赤い飾り髪の付いた頭部。
張り出した肩当てから、太い腕が伸びている。
全体が鈍い銀色をしており、各部に細やかな金の装飾
がなされた騎士のような出で立ちをしていた。

よく見るとあちこちに、鎖の傷跡が付いている。
その跡に触れ、何故捕まっていたのか再度疑問を
浮かべるも、答えは出ない。

  ( まあ…、無事に脱出は出来た訳だし、もう考え
   無くてもいいか )

俺は浮かべた疑問を放り投げ、地面に腰を下ろす。
改めて、例の板の件について考え始める。

思い返すとあの時、板には何か文字が書いてあった
気がしたが、何が書いてあったのかまでは
見る暇が無かった。

  ( 多分、レベル や ステータス って単語に関係してるものだとは思うんだが… )

俺が頭を悩ませていたその瞬間、目の前に半透明の
黒い板が現れた。

驚きつつも書いてある文字に目を通すと、板には以下の
内容が書かれていた。



 名前:※※※※   

レベル:3

 年齢:??? 

 種族:???

 職業:なし

 状態:正常

 経験値:138 / 284

 SP:15

 生命力:353 / 353
 魔力:434 / 523

 筋力:226
 技量:87                                      
 防御:850                          
 敏捷:54                           
 知性:72       
       
 装備:巨人騎士ギガントナイトの鎧

 技能スキル:なし

 称号:転移者


俺は、珍妙な文字の羅列に困惑していた。

   ( ……これが、ステータス ってやつなのか? )
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