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 リベッタさんから貰ったレシピを精査した翌日、私達の姿は冒険者組合の会議室にいた。
 トラヤが組合長さんに話を通してくれたおかげで、すんなり状況が整った。
 今、私とトラヤの前には、机を挟んでセラさんと組合長さんがいる。

「話は聞いている。ドラゴンを倒す方法を持って来たそうだな」

「はい。私の錬金具とトラヤの魔法でドラゴンを地面に落とした後、冒険者の皆さんに用意した錬金具を使って貰います。『氷雪の槍』って聞いたことありますか?」

 錬金具の名前にセラさんが反応した。

「火属性の魔獣に特化した錬金具と聞いたことがあるね。なかなか作るのが難しいと聞いたことがあるな」

「作るのは難しくありません。素材がちょっと珍しいだけです。……それを先生に手伝ってもらって作成できます」

 私はまだ特級錬金術師じゃないので、一応誤魔化しをいれておく。
 それと『無の爆裂球』のことは秘密だ。あれは不確定要素が多いし、説明しにくい。
 まずは普通に倒せそうな作戦を提案して、話を通すのが今回の目標である。

「地面に落ちたドラゴンを、トラヤが魔法で足を固定します。そこで槍で攻撃。私も防御用の錬金具で援護します。防御用の錬金具も皆さんに配布します」

 『金剛壁』は魔力の障壁を周囲に張る強力な錬金具。ドラゴンの攻撃だっていくらか耐えてくれるはずだ。

「合成魔獣の魔境に行ったときの話は聞いている。……セラはどう思う?」

 どうやら、組合長さんは現場の人間に意見を求める方針のようだった。
 セラさんはしばし瞑目した後、ゆっくりとした口調でトラヤを見た。

「トラヤ嬢、飛んでいるドラゴンを落とすというが、自信はあるのか?」

「もちろん! イルマの錬金具で魔法を強くするし、お師匠様と似たようなこと、やったことあるよ!」

 自信満々で答えるトラヤを見て、セラさんは頷いた。

「この二人の実力は信頼できます。話の通りの錬金具が用意できるならば、いけるかもしれません」

「素材はちょっと難しいのもあるんですけど……」

 ちょっと遠慮がちに言うと、今度は組合長さんが頷いた。

「素材に関してはこちらも協力する。条件としてはそうだな、少しでも失敗しそうと感じたら即撤退すること。装備は必要以上に調えるように」

 どうやら、私の提案は通ったらしい。ほっと胸をなでおろす。

「良かった。駄目だって言われるかと……」

「実は、『ドラゴンのいる魔境』への行き方が思った以上に広まっているんだ。私達としてもこういう提案は非常にありがたい」

 私の本音に、組合長さんは苦笑気味にそう教えてくれた。
 なるほどね。ドラゴン相手に本気で戦う方法を考える錬金術師なんて、多分この町に私だけだ。きっと、最初の提案だったに違いない。

「そういうことで。宜しく頼む」

「はい。よろしくお願いします」

 組合長さんが右手を差し出してきたので、私もそれに答えて握手をした。
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