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二十四章 潜入

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そうと決まりゃあ後は実行に移すのみ!だ。

セルジオの昼休憩の間、次男はいつも半刻程は城の図書館に入り浸るらしいからな。

俺はマーシエに頼んで休憩をいつもより少し早めに取らせてもらって、早速図書館まで足を運ぶ事にした。

ダンの話じゃあ次男は薄色の金髪にダークブルーの目の持ち主で、髪は長髪。

そいつを首の後ろで一つにまとめているってのと、目にはメガネをかけてるってのが特徴だ。

服は文官の緑の制服を着てるらしいから、たぶん見りゃあすぐに分かるだろうってな話だった。

さ~て、上手い事会えるといいんだけどな。

思いつつかなり立派な装飾の施された図書館の扉を開ける。

──と、そこには。

俺がこれまでに見た事もねぇ程すげぇ世界が広がっていた。

目の前いっぱいに──それこそ床から天井まで、壁から壁まで全てを埋め尽くす本棚と、そこに収められた大量の本。

奥にある黒い格子付きの大窓からの光が館内全体に広がっていて、中々壮麗だ。

……うっわー、これが城の図書館か。

俺ら庶民が使う図書館とはレベルが違うぜ。

広さだってこれ、ゴルドー商会一つすっぽり収まっちまうくらいあるんじゃねぇのか?

思わず顔を上げたまま口をあんぐり開けてその場に立ち尽す。

そーして大量の本につられる様にふらふらと図書館内に足を踏み入れた。

こんなに大量の本、一生かかったって読み切れる気もしねぇ。

ダルの家やヘイデン家の書棚も中々のもんだと思ってたが、こいつはまたレベルが違うぜ。

この世の全ての本をここに一挙に集めたみてぇだ。

半ば感心、半ば呆けながら辺りを見回している──と。

「──失礼、」

不意に後ろから、声がかかった。

俺はハッと我に返ってパッと後ろを振り返る。

神経質そうな、男の声。

声の主は、声の通りに見た目もどこか神経質そうだった。

薄金色の眉が僅かに顰められている。

同じ色の薄金色の長髪は、後ろで一つにまとめてて、ダークブルーの目にはメガネ。

歳は二十歳前後って所か?

文官の着る緑の制服をキッチリと着込んでいる……。

~って、おいおいまさかこいつ……。

こいつがセルジオん家の次男坊、か?

確かに俺はそいつと会えるよーに場所と時間を狙ってここに来たわけだけどよ。

まさかここまで簡単に会えるとは思ってなかったぜ。

つーか今、何で声かけられたんだ?

別に道を塞いでる訳じゃねえし、本棚の前に立ってて本を取るのを邪魔してる訳でもねぇ。

いや、まぁ向こうから声をかけてきてくれんのはこっちとしちゃあありがてぇけど。

俺は──……とりあえず「はい?」となるべく大人しく見える様にセルジオの次男坊(まぁそう言っちまってまず間違いねぇだろう)に返す。

『なるべく大人しく見える様に』ってのにはもちろん理由がある。

こーゆー神経質そうなのにゃあいつもの『かわいい』リアはあんま通用しねぇ様な気がしたからだ。

相手がラビーンやクアンみてぇな奴らだったらいいんだけどよ、何ていうか、ヘイデン相手にかわいこぶっても何の意味もねぇのと感覚としては同じだ。

まぁ、ただの俺の感覚っつーか勘だが。

そう思っての俺の返事に、次男坊が少し戸惑った様に、口を閉ざす。

まるで、思わず声をかけちまったが後が続かなくて困っちまったみてぇな、そんな感じだ。

おいおい、これってまさか。

ナンパしよーとしてるってんじゃねぇだろうなぁ?

俺のあまりのかわいさに思わず声をかけちまったがこの後どうしていいか分からねぇみたいな?

……いや、まぁ別にそんならそれで今回に限っては好都合だ。

リアにメロメロになってくれりゃあこんなに情報を引き出しやすいこたぁねぇからな。

実際初めにこっちから話を振る手間も省けてるし。

思いつつ……俺はにこ、と軽く微笑んで、次男坊に問いかける。

「あの……私に何か?
それともこの場所、お邪魔だったかしら?」

なるべく好印象になる様に問いかけると、次男坊が少しだけ慌てたように片手を振り、「いいえ」と返す。

「まさか。
とんでもありません」

言って──次男坊は、やっぱりちょっと言うのを迷った様に目線を斜め下に下げて──そうしてようやっと覚悟を決めたように俺を見た。

「──失礼ですが、リア・スノーウィルさんでしょうか?
クライン卿の遠いご親戚の、最近メイドとしてお勤めに上がられた、」

「──え?ええ、まぁ」

いきなり んな事を聞かれ、やや戸惑いつつも答える。

次男坊は、けどそいつに話に弾みがついたらしかった。

「お噂を聞いていたので、そうではないかと思いお声をお掛けしました。
──失礼、私は文官のオレット・クロクスナーと申します」

「はい。
もしかして、宰相閣下のご子息様でしょうか?
ガイアスおじ様やダンおじ様から少しお話を伺った事があって」

俺のってのが何なのかやや気になりはしたが……。

まぁどうせ『ガイアスの遠い親戚の新人メイドがめちゃくちゃかわいい』とか何とか、そんなとこだろ。

話の腰を折るよりは、ちゃんと情報収集する方に集中しなくちゃな。

思いつつ、聞いてみると次男坊──オレットが軽く目を瞬く。

あ、やべ。

こっちこそいきなり戸惑わせちまったか?

俺は内心で少しあせあせしながら、表面ではにっこり笑顔で言葉を付け足した。

「──見た目通りにとても優秀な方だと。
お名前までは存じ上げなかったのですが、おじ様達にお聞きしていた特徴とよく似ておられたので……。
もし違っていたらごめんなさい」

「いえ……。
宰相、セルジオ・クロクスナーは私の父です。
あまりいい噂はお耳にされていないでしょうが」
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