222 / 254
二十四章 潜入
11
しおりを挟むミーシャやレイジス、それにジュードは、この道の事を知ってるんだろーか。
ダルクは──?
あいつもこの道の事を、知っていたのか──?
ふと、そんな事を思う。
思えばあいつにはいつも、謎が付きまとう。
ただの鍛冶屋の息子が、どうしてよりにもよってサランディールからトルスにまで繋がる様な重要な地下通路の事を知ってた?
あいつとあいつのじーさんは何で反逆の罪なんか被る事になった?
ダルクは──ダルは、どうして殺されなけりゃあならなかった?
答えの出るはずのねぇ事を考えて──俺は軽く頭を振る。
……いや、今は んな事どうだっていいんだ。
ダルはもうこの世のどこにもいねぇんだから。
それに今の俺にはもっと考えなきゃならねぇ事や、やるべき事が山程ある。
そう、自分に言い聞かせて──俺は隣に並んだダンへと目線を向けた。
ダンがその目線を受けて──って訳じゃあ全然ねぇんだろうが、そっと小さく口を開く。
「──そろそろ戻ろうか。
万が一にもここで誰かに私達の姿を見られる事は避けたい」
ダンの意見に全く賛成だった俺は、そいつにこくりと一つ頷いてみせたのだった──。
◆◆◆◆◆
「──それからダンと少し気になるとこを見て回ったんだけどよ。
今話したような、建物の外とかちょっと別な場所に繋がる隠し通路は他に二つくらい見つけたけど、トルスまで繋がるよーな本格的?な地下通路じゃあなかったぜ。
ちなみにアルフォンソに関する情報も全くナシ、だ。
そっちはどうだった?」
言うと──俺と向き合う形で椅子に掛けたジュードが「こちらもこれと言った収穫は何も……」といつも通りやや重い声で答える。
夕方までのメイドの仕事を終え、ガイアスの屋敷に帰って来てからしばらく。
うまい夕食を皆で楽しく食って皆それぞれ自室に戻り、今はもう寝てるか寝ようかってな時間だ。
いつも通りジュードが俺(と犬カバ)の部屋にやって来て、俺と犬カバがベッドの端に腰を下ろし、ジュードがそこに向かい合う形で置いた椅子に掛けて今に至る。
ちなみに言やぁミーシャがちゃんと自室に戻ったのはもちろん確認済みだ。
ミーシャにジュードが毎日ここに来ててなんかしばらく話していく──なんて知れたら何か勘ぐられそうだからな。
確かな事が何にも分かっちゃいねぇ今の段階で、俺等がアルフォンソの行方を探してる、なんて事に気づかれたくねぇ。
とにもかくにもそんなこんなで今日もこっそり三人寄り合って話をしていた訳だが……。
俺は隠し通路の話繋がりで「そういやさぁ、」とジュードに向かって口を開く。
「前にミーシャに聞いたことがあったんだけど、お前、一年前の内乱の時ミーシャを隠し通路に案内したんだって?」
「──ああ、」
「その道ってどーして知ってたんだ?
フツー一介の騎士が知るはずのねぇ道、だよな?
ミーシャはアルフォンソが自分を逃がす為にお前に道を教えたんじゃねぇかって言ってたけど。
お前の内乱の時の話を聞く限り、その線はねぇよな……と思ってよ」
聞く──と……。
ジュードが──思いの外あっさり、答えてきた。
「──あの道は、ダルクさんに教わったものだ」
言ってくる。
俺は──思わず目を丸くしてジュードを見る。
「……はぁ?」
「クヒ?」
犬カバも隣から声を上げる。
ジュードはそんな俺と犬カバの双方を見ながら、話を続けた。
「ダルクさんが城を出る、前日の事だ。
どうして教えてくれたのか、何故その道をダルクさんが知っていたのか、俺にも分からない。
あの頃はまだ俺も子供の時分だったから、小さな入口は俺でも通る事が出来ただろうと思う。
試した事はなかったが……。
ダルクさんからも、本当に緊急の時以外は使うな、誰にもこの道の事は話してはいけないと念を押されたしな。
まさかあんな形でそれが役に立つとは思わなかったが……」
言う。
~ちょっと待て、どういう事だ?
ダルクがジュードに教えた道だった?
~いや、冷静に考えりゃああり得ない話でもねぇ。
ダルクは実際、反逆罪でサランディールから追われる時、その秘密の入口を使って地下通路を通り、トルスへ来たんだろうしな……と考えかけて。
いや、とすぐに頭の中でその考えを打ち消す。
今ジュードが言ってたじゃねぇか、『小さな入口は子供の頃のジュードなら通れただろう』って。
ダルクは今のジュードほど体格が良かった訳じゃあなかったはずだが、それでもひょろひょろって事はなかった。
それに背だってかなり高かったはずだ。
サランディールを追われる時だってまあまあな大人だろ?
ダルクがその通路を使うのはちょっとムリがあるんじゃねぇか?
それに、だ。
あいつはその何年か後にその地下通路を通ってサランディールに行っている。
ミーシャが見つけたダルクの遺体は、“ミーシャが通った”入口の先にあったんだろ?
て事は、考えられる事は一つ……。
通路は同じでもそこに繋がる別の入口が存在してた──。
そしてそっちの入口は、ダルクでも通れる様な大きさの間口だった。
それなら話の筋が通る。
けど、だ。
……ダルクは何で地下通路に通じる入口を、二ヶ所も知ってたんだ?
結局そこに、一つの疑問が残る。
あいつは一介の鍛冶屋だぜ?
ミーシャだってダルクみてぇな奴が知るはずのねぇ道だと言っていた。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
鑑定能力で恩を返す
KBT
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。
彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。
そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。
この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。
帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。
そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。
そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる