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十六章 再会
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◆◆◆◆◆
ジュードとレイジスと共にヘイデンの屋敷を出てしばらく。
俺は街道の脇道を使って旧市街へ向けて先導して歩いていた。
まぁ、脇道っつっても実際には道って言える程大した道な訳でもねぇ。
草を掻き分けて歩かなきゃならねぇ場所もあるし、地面ももちろん舗装されてねぇ。
歩くのにめちゃめちゃ難儀するわけでもねぇが、ほとんど獣道っつってもいい様な道だ。
レイジスとジュードならそこまで人目を気にして歩く必要はねぇのかもしんねぇが、街道を行くよりこっちの方がかなりの近道になる。
それに俺には、レイジスに聞いておきてぇ事が一つあった。
辺りに俺ら以外の誰もいない事を気配で感じながら──俺は俺の後ろをのんびりと歩くレイジスをちらっと見る。
ついさっきまでの王子らしい表情も態度も、今はまったく見えねぇ。
どっか飄々とした面持ちに、『誰か』の姿が重なりそうで──やっぱりその『誰か』には重ならない。
ミーシャと兄妹だって知った時にはその『誰か』はミーシャだったんだ、と得心したんだが……。
何でか……それだけじゃねぇ様な気がしてしょうがねぇ。
こうして街まで送りがてら一緒にいりゃあちょっとは思い出せるかとも思ったが、まったくそんな気配はなかった。
俺は早々にそいつを思い出そうとすんのを諦めて、前を先導して草を分けて歩きながら「なぁ、」とレイジスに呼びかける。
と、レイジスが「ん?」と人好きのする声で返してくる。
話しかけられてほんの少しうれしそうな感じすらすんのは、俺が『リアの弟』でその『弟』に話しかけられたからだろう。
俺は──ゆっくりと立ち止まって、レイジスを振り返る。
レイジスが微笑みながら俺を見下ろす後ろで、ジュードが何を言う気だ、とばかりに俺を睨む。
お~、怖っ。
けど……ここで話を引く訳にはいかねぇ。
俺はこの話をする為にわざわざこうして街までの案内役を買って出たんだからよ。
俺は睨みを利かせるジュードをよそにレイジスを真っ直ぐ見上げて口を開く。
「レイジス……さん、」
いずれは──ミーシャとこのままいい感じにいけば──俺の義兄になるかもしんねぇ人物だから、ちゃんとさん付けで呼ぶと、レイジスがなんだかやたらに機嫌良く、
「いや、リッシュくん。
いずれは君の義理の兄になる予定だ。
俺の事は兄と呼んでくれ」
片手を前に出して、真面目にんな事を言ってくる。
呼び捨てさえ通り越していきなり兄呼びかよ。
しかもたぶん、俺の思う義理の兄とレイジスの思う義理の兄は、同じだが内容が全然違う。
──けど、まぁ……。
「じゃ、じゃあレイジスの兄貴」
若干戸惑いながらも呼ぶと、レイジスが心底うれしそうにパァァッと顔を輝かせる。
ぬか喜びさせちまってるみてぇで申し訳ねぇ様な気もしなくもねぇが……。
本人もうれしそうだし、俺も本当に兄貴が出来たみてぇで悪い気もしねぇし、構わねぇだろ。
俺は──俺もちょっと照れて笑いつつ──そのままスッと気を引き締めて真面目な顔で先を続けた。
「──ダルク・カルト。
この名前に、聞き覚えはねぇか?」
問いかけた先で──……レイジスが思わずって感じで軽く目を張って、俺を見る。
だが次の瞬間にはんな事をおくびにも出さなかった様にやんわりと笑って「ああ、」と普通に返してきた。
「そういえば昔サランディールで、そんな名の刀鍛冶職人がいた様にも思うが……。
どうしてそんな事を?」
問い返す言葉も笑顔と同様やんわりとしている。
けどその中に──俺はほんの少しピリリとしたものを感じた。
──やっぱり、レイジスはダルクの事を知っている。
本人は『そんな人間もいたかも』みてぇな曖昧な口調で言ったが、わざとそらっとぼけてるのがはっきりと分かる。
俺はそいつを感じながらもこっちもわざとにこやかにレイジスの問いに返した。
「──いや、さっき、昼食の席で言ってただろ?
冒険者ダルクと賞金首のリッシュ・カルトの噂を聞いてこの街に来たって。
さっきは裏にノワールの影ありって聞いて、それで来たんだって言ってたけど……本当はそれだけじゃなかったんじゃねぇのかな、と思ってさ。
そこにいるジュードもそうだったが──兄貴も、こう思ったんじゃねぇか?
噂の『冒険者ダルク』は、以前サランディール城で鍛冶職人として働いてた、あの『ダルク・カルト』の事なんじゃないか……って」
半分カマをかける様にしながら言うが、レイジスの表情は動かねぇ。
ジュードが段々に眉を寄せ、俺の方をギロリと睨みつける。
俺はそいつに気づかねぇフリをしながら先を続ける。
「──そりゃ、ダルクの事を知ってりゃあそう考えるよな。
一緒に上がってる俺の名には『カルト』の姓がついてる訳だし。
ジュードと兄貴、そんなに年は変わらなさそうだし、ダルクが城を追われてこのトルスへ逃げた頃、兄貴だってその事が記憶に残るくらいの年齢にはなってたはずだ。
一介の鍛治職人の事を王族が覚えてる、なんて事は普通に考えりゃあまずなさそうだが……ダルクの場合は事情が違う。
ダルクは、自分のじいさん同様反逆罪を問われて死刑を求刑されたが、処刑されずに城を逃げた──。
子供の頃起きた事件なら詳しい事情は全部知らなくても、多少なりとも印象に残ってんじゃねぇのか?
だからこの山賊事件に『ダルク』と『カルト』って名を見つけて、気になって自分の目で確かめに来た──違うか?」
問いかける。
ハッキリ言って、こいつは完全なる俺のヤマ勘だ。
レイジスがもし『それは違う、純粋にノワールの影があるって噂が気になっただけだ』って言やぁそれで話が終わっちまう。
だが……。
レイジスは表情を変えないまま、俺の言葉を肯定する訳でも否定する訳でもなく「それで?」と俺に先を促す。
俺ははぁっと大きく息をついて言う。
「……もし、俺のこの仮説が正しけりゃ、兄貴はジュードに真偽を聞いたはずだ。
この『冒険者ダルク』ってぇのは、昔サランディール城で刀鍛冶として働いてたあの『ダルク・カルト』なのか?って」
レイジスからの反応はねぇ。
脇目にジュードを見るが、こいつも眉を寄せたまま何も口を開こうとはしなかった。
答えも分からないまま俺は続ける。
「ジュードは“全部”を話したんだろ?
俺やミーシャの事、『冒険者ダルク』の事、十数年前に死んだ本物のダルク・カルトの事、それに、俺とダルクの関係も……。
その過程で、兄貴は思いがけずダルク・カルトが飛行船なんてモンを作っていて、おそらく俺がそいつを所持してるだろうって話を聞いた──。
──カフェの裏口で、兄貴とジュードで話してんのを、俺聞いたんだよ。
俺の飛行船がどーいう代物なのか、兄貴の『計画に使える物』なのか、探りを入れてる……って」
言うと──ジュードが罰が悪そうに目を横へ逸らす。
俺は続けた。
「そん時は兄貴がどこの誰なのかも、どんな計画に飛行船を利用する気なのかも分からなかったが……。
さっきの昼食会での話を聞いて、ようやく分かった」
真っ直ぐレイジスを見上げ、俺はレイジスの表情を読みながら最後のセリフを口にする。
「サランディールの皆の無念を晴らすその計画に、俺の飛行船は『使える様な大層な代物』なのか。
あれはそーゆー意味だったんだろ?」
長い話の最後を、そう締めくくって問いかける。
レイジスがじっと俺を見下ろしている。
そーして二、三秒程も真面目ともそーでないとも言える表情で俺を見続けてから──。
フッとレイジスが口元を緩めて見せた。
思いもかけねぇ反応に、俺が思わず目を瞬く中、レイジスは穏やかな目で俺を見下ろして口を開いた。
「リッシュくんは真っ直ぐな性格なんだな。
リアさんと、よく似ているよ」
言ってくる。
……まぁ、似てるも何も本人なんだからトーゼンなんだが……。
真っ直ぐな性格、なんて、今の今まで誰にも言われた事もねぇよ。
レイジスが何でんな風に思ったのかよく分からねぇが……レイジスの方ではそいつをわざわざ説明しようって気はないらしい。
その代わりにこんな事を言った。
「俺は、基本的には君や君のお姉さんの悲しむ様な事をしたくはないから──あえてここで言おう」
言って──レイジスが穏やかな雰囲気はそのままに、ふいに真面目な顔になる。
そうして俺を見下ろす様な形で、話を続けた。
「君の言うとおりだよ。
俺はダルク・カルトの事を覚えていた。
だから噂を聞いた時、その名に興味を惹かれてこの街に来たし、ジュードと再開した折にはダルク・カルトの事を聞いた。
そしてその時ダルク・カルトの──いや、君の、なのかな?──飛行船の事の事を知り、ジュードに探りを入れさせた──。
自在に空を飛び、国境を越え、どこにでも降り立てる。
そんな要素を持つ飛行船が、もしかしたらサランディール奪還の為の、突破口になるかもしれないと思ったからだ」
きちんと俺の目を見て、あくまで穏やかにレイジスは言う。
そうしてふっと笑った。
「──さて。
これで俺は君の質問には全て答えたつもりだが──今の話を踏まえた上で、今度は俺から君に質問しよう。
君の飛行船は、俺の計画に使える様な大層な代物、なのか?」
やんわりと問いかける目が、俺を試すみてぇだ。
ジュードとレイジスと共にヘイデンの屋敷を出てしばらく。
俺は街道の脇道を使って旧市街へ向けて先導して歩いていた。
まぁ、脇道っつっても実際には道って言える程大した道な訳でもねぇ。
草を掻き分けて歩かなきゃならねぇ場所もあるし、地面ももちろん舗装されてねぇ。
歩くのにめちゃめちゃ難儀するわけでもねぇが、ほとんど獣道っつってもいい様な道だ。
レイジスとジュードならそこまで人目を気にして歩く必要はねぇのかもしんねぇが、街道を行くよりこっちの方がかなりの近道になる。
それに俺には、レイジスに聞いておきてぇ事が一つあった。
辺りに俺ら以外の誰もいない事を気配で感じながら──俺は俺の後ろをのんびりと歩くレイジスをちらっと見る。
ついさっきまでの王子らしい表情も態度も、今はまったく見えねぇ。
どっか飄々とした面持ちに、『誰か』の姿が重なりそうで──やっぱりその『誰か』には重ならない。
ミーシャと兄妹だって知った時にはその『誰か』はミーシャだったんだ、と得心したんだが……。
何でか……それだけじゃねぇ様な気がしてしょうがねぇ。
こうして街まで送りがてら一緒にいりゃあちょっとは思い出せるかとも思ったが、まったくそんな気配はなかった。
俺は早々にそいつを思い出そうとすんのを諦めて、前を先導して草を分けて歩きながら「なぁ、」とレイジスに呼びかける。
と、レイジスが「ん?」と人好きのする声で返してくる。
話しかけられてほんの少しうれしそうな感じすらすんのは、俺が『リアの弟』でその『弟』に話しかけられたからだろう。
俺は──ゆっくりと立ち止まって、レイジスを振り返る。
レイジスが微笑みながら俺を見下ろす後ろで、ジュードが何を言う気だ、とばかりに俺を睨む。
お~、怖っ。
けど……ここで話を引く訳にはいかねぇ。
俺はこの話をする為にわざわざこうして街までの案内役を買って出たんだからよ。
俺は睨みを利かせるジュードをよそにレイジスを真っ直ぐ見上げて口を開く。
「レイジス……さん、」
いずれは──ミーシャとこのままいい感じにいけば──俺の義兄になるかもしんねぇ人物だから、ちゃんとさん付けで呼ぶと、レイジスがなんだかやたらに機嫌良く、
「いや、リッシュくん。
いずれは君の義理の兄になる予定だ。
俺の事は兄と呼んでくれ」
片手を前に出して、真面目にんな事を言ってくる。
呼び捨てさえ通り越していきなり兄呼びかよ。
しかもたぶん、俺の思う義理の兄とレイジスの思う義理の兄は、同じだが内容が全然違う。
──けど、まぁ……。
「じゃ、じゃあレイジスの兄貴」
若干戸惑いながらも呼ぶと、レイジスが心底うれしそうにパァァッと顔を輝かせる。
ぬか喜びさせちまってるみてぇで申し訳ねぇ様な気もしなくもねぇが……。
本人もうれしそうだし、俺も本当に兄貴が出来たみてぇで悪い気もしねぇし、構わねぇだろ。
俺は──俺もちょっと照れて笑いつつ──そのままスッと気を引き締めて真面目な顔で先を続けた。
「──ダルク・カルト。
この名前に、聞き覚えはねぇか?」
問いかけた先で──……レイジスが思わずって感じで軽く目を張って、俺を見る。
だが次の瞬間にはんな事をおくびにも出さなかった様にやんわりと笑って「ああ、」と普通に返してきた。
「そういえば昔サランディールで、そんな名の刀鍛冶職人がいた様にも思うが……。
どうしてそんな事を?」
問い返す言葉も笑顔と同様やんわりとしている。
けどその中に──俺はほんの少しピリリとしたものを感じた。
──やっぱり、レイジスはダルクの事を知っている。
本人は『そんな人間もいたかも』みてぇな曖昧な口調で言ったが、わざとそらっとぼけてるのがはっきりと分かる。
俺はそいつを感じながらもこっちもわざとにこやかにレイジスの問いに返した。
「──いや、さっき、昼食の席で言ってただろ?
冒険者ダルクと賞金首のリッシュ・カルトの噂を聞いてこの街に来たって。
さっきは裏にノワールの影ありって聞いて、それで来たんだって言ってたけど……本当はそれだけじゃなかったんじゃねぇのかな、と思ってさ。
そこにいるジュードもそうだったが──兄貴も、こう思ったんじゃねぇか?
噂の『冒険者ダルク』は、以前サランディール城で鍛冶職人として働いてた、あの『ダルク・カルト』の事なんじゃないか……って」
半分カマをかける様にしながら言うが、レイジスの表情は動かねぇ。
ジュードが段々に眉を寄せ、俺の方をギロリと睨みつける。
俺はそいつに気づかねぇフリをしながら先を続ける。
「──そりゃ、ダルクの事を知ってりゃあそう考えるよな。
一緒に上がってる俺の名には『カルト』の姓がついてる訳だし。
ジュードと兄貴、そんなに年は変わらなさそうだし、ダルクが城を追われてこのトルスへ逃げた頃、兄貴だってその事が記憶に残るくらいの年齢にはなってたはずだ。
一介の鍛治職人の事を王族が覚えてる、なんて事は普通に考えりゃあまずなさそうだが……ダルクの場合は事情が違う。
ダルクは、自分のじいさん同様反逆罪を問われて死刑を求刑されたが、処刑されずに城を逃げた──。
子供の頃起きた事件なら詳しい事情は全部知らなくても、多少なりとも印象に残ってんじゃねぇのか?
だからこの山賊事件に『ダルク』と『カルト』って名を見つけて、気になって自分の目で確かめに来た──違うか?」
問いかける。
ハッキリ言って、こいつは完全なる俺のヤマ勘だ。
レイジスがもし『それは違う、純粋にノワールの影があるって噂が気になっただけだ』って言やぁそれで話が終わっちまう。
だが……。
レイジスは表情を変えないまま、俺の言葉を肯定する訳でも否定する訳でもなく「それで?」と俺に先を促す。
俺ははぁっと大きく息をついて言う。
「……もし、俺のこの仮説が正しけりゃ、兄貴はジュードに真偽を聞いたはずだ。
この『冒険者ダルク』ってぇのは、昔サランディール城で刀鍛冶として働いてたあの『ダルク・カルト』なのか?って」
レイジスからの反応はねぇ。
脇目にジュードを見るが、こいつも眉を寄せたまま何も口を開こうとはしなかった。
答えも分からないまま俺は続ける。
「ジュードは“全部”を話したんだろ?
俺やミーシャの事、『冒険者ダルク』の事、十数年前に死んだ本物のダルク・カルトの事、それに、俺とダルクの関係も……。
その過程で、兄貴は思いがけずダルク・カルトが飛行船なんてモンを作っていて、おそらく俺がそいつを所持してるだろうって話を聞いた──。
──カフェの裏口で、兄貴とジュードで話してんのを、俺聞いたんだよ。
俺の飛行船がどーいう代物なのか、兄貴の『計画に使える物』なのか、探りを入れてる……って」
言うと──ジュードが罰が悪そうに目を横へ逸らす。
俺は続けた。
「そん時は兄貴がどこの誰なのかも、どんな計画に飛行船を利用する気なのかも分からなかったが……。
さっきの昼食会での話を聞いて、ようやく分かった」
真っ直ぐレイジスを見上げ、俺はレイジスの表情を読みながら最後のセリフを口にする。
「サランディールの皆の無念を晴らすその計画に、俺の飛行船は『使える様な大層な代物』なのか。
あれはそーゆー意味だったんだろ?」
長い話の最後を、そう締めくくって問いかける。
レイジスがじっと俺を見下ろしている。
そーして二、三秒程も真面目ともそーでないとも言える表情で俺を見続けてから──。
フッとレイジスが口元を緩めて見せた。
思いもかけねぇ反応に、俺が思わず目を瞬く中、レイジスは穏やかな目で俺を見下ろして口を開いた。
「リッシュくんは真っ直ぐな性格なんだな。
リアさんと、よく似ているよ」
言ってくる。
……まぁ、似てるも何も本人なんだからトーゼンなんだが……。
真っ直ぐな性格、なんて、今の今まで誰にも言われた事もねぇよ。
レイジスが何でんな風に思ったのかよく分からねぇが……レイジスの方ではそいつをわざわざ説明しようって気はないらしい。
その代わりにこんな事を言った。
「俺は、基本的には君や君のお姉さんの悲しむ様な事をしたくはないから──あえてここで言おう」
言って──レイジスが穏やかな雰囲気はそのままに、ふいに真面目な顔になる。
そうして俺を見下ろす様な形で、話を続けた。
「君の言うとおりだよ。
俺はダルク・カルトの事を覚えていた。
だから噂を聞いた時、その名に興味を惹かれてこの街に来たし、ジュードと再開した折にはダルク・カルトの事を聞いた。
そしてその時ダルク・カルトの──いや、君の、なのかな?──飛行船の事の事を知り、ジュードに探りを入れさせた──。
自在に空を飛び、国境を越え、どこにでも降り立てる。
そんな要素を持つ飛行船が、もしかしたらサランディール奪還の為の、突破口になるかもしれないと思ったからだ」
きちんと俺の目を見て、あくまで穏やかにレイジスは言う。
そうしてふっと笑った。
「──さて。
これで俺は君の質問には全て答えたつもりだが──今の話を踏まえた上で、今度は俺から君に質問しよう。
君の飛行船は、俺の計画に使える様な大層な代物、なのか?」
やんわりと問いかける目が、俺を試すみてぇだ。
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