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三章 投資
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「……で?」
と いかにもかったるそうに口を開いたのはゴルドーだった。
客の誰もいないカフェの中、いつものカウンター席に腰を下ろしながらの事だ。
ブラインドの下りた窓の外はまだ暗い。
リッシュやロイたちと別れてから数十分、きっとゴルドーが来るだろうと予測してここに残っていたが、案の定だった。
カフェの店長は微笑みを最小限に抑えながら──そうでないとゴルドーが気を悪くする為だ──言う。
「万事、うまく収まりました。
リアさんの提案でね。
ロイと少年を、許すことにしましたよ」
「──そうか」
ゴルドーが物思いに耽りながら応える。
店長はそれに何も言わず、ゴルドーの目の前に一杯のコーヒーを差し出した。
ゆったりと漂う湯気がカップから上へと上がっていく。
コーヒーのいい香りが店内に満ちていった。
「報酬は予定通りの額をお渡ししようと思いますが、それでよろしいですかな?」
問うと、ゴルドーがふと店長の言葉に気がついたように「ああ」と簡単に返事した。
「あんたがそれに見合う働きをしたって思うんなら、俺から言うこたぁ何もねぇ。
報酬は明日にでもラビーンとクアンのバカコンビに預けよう。
あの二人、リアとかいう奴にゾッコンらしいからな。
ネコババなんかはしねぇだろうぜ」
へっと鼻で笑って言うのに、店長は微笑みながら頷いた。
そうして それにしても、と言葉を続ける。
「──昔を思い出しますな。
こんなこともあるのかと──不思議なことです」
「………」
店長の言葉に、ゴルドーが眉を寄せて黙したまま目の前に置かれたコーヒーのカップを見やる。
ゆったりと漂う湯気が豊かな香りを燻らせていた。
ゴルドーは何も言わずカップを持ち、口をつける。
店長はそんなゴルドーを見つめた。
「オーナーの“投資”は、間違っていなかったと思いますよ。
今も、昔も」
店長の言葉に──ゴルドーは遠く視線を外したまま、「そうだといいが」とだけ答えたのだった──。
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