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三章 投資
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夜の静かな闇が街を包む。
じーさんやロイ、リュートと別れてからしばらく。
俺はやっと ふーっと大きく一つ息をついて、頭の後ろで腕を組んだ。
俺の傍らにはダルが、足元では暗闇と半分くらい同化しちまってる犬カバが歩いていた。
「一時はどーしたモンかと思ったが、うまい事まとまって良かったぜ。
ロイもリュートも俺の事は黙っててくれるって言うし、じーさんもあの二人にゃ一切お咎めなしにしてくれるって言うし、万々歳だな。
報酬もバッチリもらえそーだしよ。
今回ばかりは依頼を持ってきたラビーンとクアンの奴等にもちーっとだけ感謝だな」
「──そうだな」
へへへ、と笑って語る俺の横でダルが何か考えてるみてぇに心なく返してくる。
俺が思わず 何だよ?と目線で問うと、ダルが横目でちらっと俺を見る。
「──いや、店長さんがあまりにも簡単にお前の説得に乗ってくれたんで、少し拍子抜けしたんだ。
まるで最初からそのつもりだったみたいで」
ダルが言うのに、俺も「あー、」と軽く宙を見上げる。
まあるい月が夜空に見えた。
「──たぶん、そーなんだろーぜ。
じーさん、リュートの事聞いても驚いてねぇみたいだったし、それに昼間、俺にこう言ったんだよ。
円満な解決を頼むって。
ありゃ、最初から許すつもりだったんだよ」
言うと、ダルが横で静かに頷いた。
そーして「そういえば」と思い出したかの様に全く別の事を口にする。
「具合はもういいのか?
さっき、頭に手をやっていただろう?
顔色も悪かった様だが」
言ってくる。
俺は何の事かって頭を巡らし ああ、と思い至った。
そーいやロイとリュートが初めて顔を突き合わせた時、一瞬ひでぇ頭痛に見舞われたんだった。
俺はへらっと笑って言う。
「おー。なーんか一瞬頭痛がしただけだよ。
もう全然何ともねぇよ」
気軽に笑って言うと、ダルもあっさり「そうか」と返してくる。
俺はそいつに満足して再び前を向いて歩きながら、あの時頭に流れた言葉を思い浮かべていた。
『飛行船が好きなのか?』
“俺の”飛行船についた手。
ニヤッと笑った口。
“そいつ”の顔を思い出そーとするが、口より上に黒い影がかかった様になっていて、どーにも思い出せねぇ。
物思いに耽りながら、俺はダルと犬カバと共に家への帰路についたのだった──。
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