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第一章
商人とモンスター
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外の世界は思ったよりは木々の数が少なかった。私の想像では密林のように生え続けており歩くのも困難だと思ったのだが。
しっかりとした道も設けられていて周りの木々もしっかりと倒されて処理されていた。
だから私たちが歩くのは森というよりは平原に近い物だと言える。
「この町はミラッカの町と呼ばれていて、全国の見習い勇者が集まる所だからね、道が通れるように整備されているんだろう」
ケーレスがガイドブックを片手で持ちながら呟く。その彼女のもう一方の手は私の裾をぎゅっと握っていた。
「情けない姿を晒してしまったね。ボクは外の世界が怖くてね、こうやって誰かが側に居ないと不安で堪らなくなるんだよ」
そう言ってオッドアイの目を細めてぎこちない笑いを浮かべるケーレス。私は黙って裾の握っていた手を振り払った。
「…………あ」
手が振り払われて不安になったのか目に涙を浮かべて悲しそうな顔をした。そんな彼女の手を今度は私がしっかりと握る。
その行動に白髪の死神は目を大きくして私を見た。
「どうせなら裾ではなく手を握ろうと思ってね。迷惑だったかな?」
「そ……そんな事はないけど、い、いいのかい? ボクの手なんて握って」
「私は構わないが……どうしてそう思う」
「だ、だって恋人だって思われたら迷惑だろう?」
そう言って伏し目がちになる彼女に今度は私が首を傾げてしまう。
別段、私とケーレスが恋人と思われた所で何が問題なのだろうか?
私たちは有名人でも有力者でもない、ゴシップになることも噂になることも無いだろう。
つまり何かしらの損害が起きるとは考えられないということだ。
「別に私は恋人でも良いのだが」
「宗室くん、君はボクの事が好きなのかい」
「嫌いではないな、どちらかというと好きでもある、が愛してはいない」
「はぁ……君という奴は…………」
白髪の髪を抱えて少女は呆れたように呟く。そんな彼女の様子に私はくすりと笑う。
「そうだな、もし私が君を愛す時が来れば、その時に恋人になろうじゃないか」
「その時はボクが君を振ることにするよ」
そう言って半目で睨まれた。その表情が可愛いと思いながら更に草原の奥へと進む。
「はぁ……そろそろ疲れたね。これだからボクは外に出るのが嫌いなんだ。体力が……」
「…………そうだな、モンスターが来たときに疲れていれば戦闘にも響くだろうからな」
私の言葉を聞いてケーレスが嫌そうにこちらを見た。
「……もしかして宗室くんはボクに戦えと言っているのかい?」
「君は死神なのだろう。ならば少しは戦えると思ったのだが……」
「一応、戦えなくも無いが……その、ボクの戦い方はあまりよくない。だからなるべく使いたくないんだよ」
何が良くないのか、それはいまいち理解が及ばなかったが。
それでも、彼女が戦いたく無いということだけは察する事が出来た。
武器もない今、モンスターと戦うにはケーレスの力も借りるべきだと思ったが仕方あるまい。
ここは私の自力によって相手を倒すしかないだろう。
願わくば、強敵とは当たりたくはない。この異世界に来てから一日と経っていないのだ。
やはり最初は簡単な敵から戦いたい物だ。例えばゴブリンとか。
そう思った矢先。
「宗室くん、茂みが動いているぞ……!」
身体をぷるぷると震わせて私に抱きつくケーレス。そんな彼女の頭を優しく撫でながら茂みの方を見据える。
しばらく茂みはガサゴソと物音を立て続けていて、その物音が終わったと同時にソイツは姿を現した。
緑色の身体に手には剣が握られている。身体の所には白銀の甲冑を纏っており、私が想像したモンスターとは少し異なっているように見える。
だが、ソイツはどこからどう見てもゴブリンだった。
しっかりとした道も設けられていて周りの木々もしっかりと倒されて処理されていた。
だから私たちが歩くのは森というよりは平原に近い物だと言える。
「この町はミラッカの町と呼ばれていて、全国の見習い勇者が集まる所だからね、道が通れるように整備されているんだろう」
ケーレスがガイドブックを片手で持ちながら呟く。その彼女のもう一方の手は私の裾をぎゅっと握っていた。
「情けない姿を晒してしまったね。ボクは外の世界が怖くてね、こうやって誰かが側に居ないと不安で堪らなくなるんだよ」
そう言ってオッドアイの目を細めてぎこちない笑いを浮かべるケーレス。私は黙って裾の握っていた手を振り払った。
「…………あ」
手が振り払われて不安になったのか目に涙を浮かべて悲しそうな顔をした。そんな彼女の手を今度は私がしっかりと握る。
その行動に白髪の死神は目を大きくして私を見た。
「どうせなら裾ではなく手を握ろうと思ってね。迷惑だったかな?」
「そ……そんな事はないけど、い、いいのかい? ボクの手なんて握って」
「私は構わないが……どうしてそう思う」
「だ、だって恋人だって思われたら迷惑だろう?」
そう言って伏し目がちになる彼女に今度は私が首を傾げてしまう。
別段、私とケーレスが恋人と思われた所で何が問題なのだろうか?
私たちは有名人でも有力者でもない、ゴシップになることも噂になることも無いだろう。
つまり何かしらの損害が起きるとは考えられないということだ。
「別に私は恋人でも良いのだが」
「宗室くん、君はボクの事が好きなのかい」
「嫌いではないな、どちらかというと好きでもある、が愛してはいない」
「はぁ……君という奴は…………」
白髪の髪を抱えて少女は呆れたように呟く。そんな彼女の様子に私はくすりと笑う。
「そうだな、もし私が君を愛す時が来れば、その時に恋人になろうじゃないか」
「その時はボクが君を振ることにするよ」
そう言って半目で睨まれた。その表情が可愛いと思いながら更に草原の奥へと進む。
「はぁ……そろそろ疲れたね。これだからボクは外に出るのが嫌いなんだ。体力が……」
「…………そうだな、モンスターが来たときに疲れていれば戦闘にも響くだろうからな」
私の言葉を聞いてケーレスが嫌そうにこちらを見た。
「……もしかして宗室くんはボクに戦えと言っているのかい?」
「君は死神なのだろう。ならば少しは戦えると思ったのだが……」
「一応、戦えなくも無いが……その、ボクの戦い方はあまりよくない。だからなるべく使いたくないんだよ」
何が良くないのか、それはいまいち理解が及ばなかったが。
それでも、彼女が戦いたく無いということだけは察する事が出来た。
武器もない今、モンスターと戦うにはケーレスの力も借りるべきだと思ったが仕方あるまい。
ここは私の自力によって相手を倒すしかないだろう。
願わくば、強敵とは当たりたくはない。この異世界に来てから一日と経っていないのだ。
やはり最初は簡単な敵から戦いたい物だ。例えばゴブリンとか。
そう思った矢先。
「宗室くん、茂みが動いているぞ……!」
身体をぷるぷると震わせて私に抱きつくケーレス。そんな彼女の頭を優しく撫でながら茂みの方を見据える。
しばらく茂みはガサゴソと物音を立て続けていて、その物音が終わったと同時にソイツは姿を現した。
緑色の身体に手には剣が握られている。身体の所には白銀の甲冑を纏っており、私が想像したモンスターとは少し異なっているように見える。
だが、ソイツはどこからどう見てもゴブリンだった。
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