3 / 23
第一章
ステータスの闇
しおりを挟む
「そう言えば君はステータスを確認したかい?」
「ステータス?」
始まりの宿を抜けての商店街、そこで突然ケーレスにそんな事を言われる。別段驚きはしないがその言葉に疑問を持った。
勿論ステータスという言葉自体は知っている。日本語で訳すならば状態という意味だ。そしてその外来語はほとんど日常生活で使われない。
だが、私自身その言葉は彼女にピッタリだと思った。
「貧乳はステータスとでも言いたいのかな」
「宗室くん、君はボクをバカにしているのかい?」
至極真面目に返して怒られてしまった。軽くジョークで言ったつもりなのだが、やはり私はそういった事を言うのが苦手らしい。
「バカにはしていない。そもそもまだ私とケーレスは知り合ったばかりだ。相手の知量が分かる時ではあるまいよ」
「そういう意味じゃない。頭脳ではなく身体の事を言ってるんだ!」
「勿論知っている、今のはジョークだ」
「君は表情が変わらないから分かりにくいんだよ……」
半ば呆れ気味の様子でそう呟くケーレス。そして一旦一呼吸置いて白髪の髪をかきあげると。
「ボクが言いたいのはね。この世界にはステータスという概念が存在しているって事だ」
「そのステータス……というのはゲームのステータスの事を言っているのか?」
「そうだ。スキルや魔力量、他にも身体能力各々が確認できるようになっている。でもHPいわゆる体力は確認できないみたいだね」
スキルというのは特定の技、魔力量はおそらくスキルを使えば消費されるのだろう。身体能力は俊敏性とか耐久力の事だろう。
だが、そのような物を確認する方法が分からない。話の内容からしてケーレスは既に理解しているようだが。
「ふむ……どうやって確認を取るのか分からんな」
「何も難しい事じゃないよ。頭のなかで思えば自然と出てくる筈だ」
ケーレスに言われた通り、頭の中でステータスが出るように念じる。すると……。
ぴこん、という間の抜けた音と共に自分のステータスが眼前に表示された。
名前島井 宗室 lv0
職業 ニート
魔力量999
魔力 SSS
筋力 F
俊敏 F
耐久力F
『スキル個数』
魔法スキル 0
ソードスキル 0
ユニークスキル 2
私は自分のステータスを眺めて硬直する。魔力がSSSと最強クラスなのに肝心の魔法スキルが一つもなかったからだ。
それにユニークスキルも意味が分からない。これは魔力を消費するのかしないのか。
私はそのままユニークスキルのボタンを押した。
『ユニークスキル』
『ロストアビリティ』詳細不明。
『ガラミティシステム』 詳細不明。
なるほど情報は開示されないのか、とりあえずこのスキルが何か分かるまでは触れない方が身のためだな。
私はステータス画面を指で操作して閉じると次は装備画面を開いてみる。
『装備品』
武器 なし
防具 軽装
この画面を見るに防具は鎧までしか表示されず、例えば仮面や兜などは対象外になるようだ。
武器は一本限定なのか。また、二刀持っていた場合はどうなるのかも試す必要がある。もっとも今は武器を買うお金が無いので試しはしないが。
「確認作業は終わったかい」
私が終わるのを見越してまな板の少女がオットアイの瞳でこちらを覗く。それに私は静かに頷いて。
「今終えたところだ。まだモンスターを退治していないとはいえ、level0は寂しいものがある」
もっとも寂しいと思うだけで感じてはいないのだが。
「…………ボクはそれよりも所持金ゼロの方が寂しく思えるよ」
そう言えばメニュー画面に書いていたな所持金。この異世界の通貨はグルドと言うらしい。乳酸菌のような名前をした通貨だ。
「さて、お金を稼ぐにはどうしたものか」
「君……商人を目指すんだよね。物でも売ってみるのはどうだろう」
「あいにく商品が在庫切れでね、売れる物なんてこの身体ぐらいしかない」
その言葉にケーレスは顔を真っ赤にする。そして声を震わせながら。
「ボ、ボクは嫌だぞ。そんな好きでもない人と……」
「安心しろ。身体を売るのは私で十分だ」
「な、なな何を言ってるんだい。君がそんな春を売る真似なんて……!」
そこで私はようやく彼女が勘違いをしている事に気づく。このまま誤解されれば私の評価が下がる気がする。
ここは面倒ではあるがしっかりと誤解を解くべきだ。
「私が言いたかったのは仕事で働くという意味だが」
「そ、それは普通の仕事の事だね?」
「そうだ。そもそもアレはリスクが高すぎる。病気の可能性だって否定はできないし、あまり効率的とは呼べんな」
私の意見を聞いてやっと安心したのか無い胸を撫で下ろすケーレス。そんな仕草が人形のようだと思いつつ。
「仕事となると日給制のバイトを探すべきだな。無難な辺りだと料理店と言った所だが……」
そこまで口に出して私の脳内に一抹の不安が浮かぶ。
それは言語の問題だ。私が覚えているのは日本語とネット用語のみ、それ以外は何も知らない。
「異世界語はどうなっている? 君が翻訳してくれるならそれでも構わないが」
死神は神だ。そもそも人間の言語が国ごとで異なったのは神の怒りによるものだという。
ならば、神と同じ種族であるケーレスならば言葉を訳すぐらいは出来るのかも知れない。そう思ったのだが。
「言っておくけどボクは日本語以外はまったく知らないよ」
「そうか……それは困ったな」
私は渋い顔を浮かべて顎に手を当てると長考する。
そんな私にケーレスは余裕の表情を浮かべたまま。
「いや、悩む必要はないよ。この異世界の共通語は日本語のようだからね」
「ステータス?」
始まりの宿を抜けての商店街、そこで突然ケーレスにそんな事を言われる。別段驚きはしないがその言葉に疑問を持った。
勿論ステータスという言葉自体は知っている。日本語で訳すならば状態という意味だ。そしてその外来語はほとんど日常生活で使われない。
だが、私自身その言葉は彼女にピッタリだと思った。
「貧乳はステータスとでも言いたいのかな」
「宗室くん、君はボクをバカにしているのかい?」
至極真面目に返して怒られてしまった。軽くジョークで言ったつもりなのだが、やはり私はそういった事を言うのが苦手らしい。
「バカにはしていない。そもそもまだ私とケーレスは知り合ったばかりだ。相手の知量が分かる時ではあるまいよ」
「そういう意味じゃない。頭脳ではなく身体の事を言ってるんだ!」
「勿論知っている、今のはジョークだ」
「君は表情が変わらないから分かりにくいんだよ……」
半ば呆れ気味の様子でそう呟くケーレス。そして一旦一呼吸置いて白髪の髪をかきあげると。
「ボクが言いたいのはね。この世界にはステータスという概念が存在しているって事だ」
「そのステータス……というのはゲームのステータスの事を言っているのか?」
「そうだ。スキルや魔力量、他にも身体能力各々が確認できるようになっている。でもHPいわゆる体力は確認できないみたいだね」
スキルというのは特定の技、魔力量はおそらくスキルを使えば消費されるのだろう。身体能力は俊敏性とか耐久力の事だろう。
だが、そのような物を確認する方法が分からない。話の内容からしてケーレスは既に理解しているようだが。
「ふむ……どうやって確認を取るのか分からんな」
「何も難しい事じゃないよ。頭のなかで思えば自然と出てくる筈だ」
ケーレスに言われた通り、頭の中でステータスが出るように念じる。すると……。
ぴこん、という間の抜けた音と共に自分のステータスが眼前に表示された。
名前島井 宗室 lv0
職業 ニート
魔力量999
魔力 SSS
筋力 F
俊敏 F
耐久力F
『スキル個数』
魔法スキル 0
ソードスキル 0
ユニークスキル 2
私は自分のステータスを眺めて硬直する。魔力がSSSと最強クラスなのに肝心の魔法スキルが一つもなかったからだ。
それにユニークスキルも意味が分からない。これは魔力を消費するのかしないのか。
私はそのままユニークスキルのボタンを押した。
『ユニークスキル』
『ロストアビリティ』詳細不明。
『ガラミティシステム』 詳細不明。
なるほど情報は開示されないのか、とりあえずこのスキルが何か分かるまでは触れない方が身のためだな。
私はステータス画面を指で操作して閉じると次は装備画面を開いてみる。
『装備品』
武器 なし
防具 軽装
この画面を見るに防具は鎧までしか表示されず、例えば仮面や兜などは対象外になるようだ。
武器は一本限定なのか。また、二刀持っていた場合はどうなるのかも試す必要がある。もっとも今は武器を買うお金が無いので試しはしないが。
「確認作業は終わったかい」
私が終わるのを見越してまな板の少女がオットアイの瞳でこちらを覗く。それに私は静かに頷いて。
「今終えたところだ。まだモンスターを退治していないとはいえ、level0は寂しいものがある」
もっとも寂しいと思うだけで感じてはいないのだが。
「…………ボクはそれよりも所持金ゼロの方が寂しく思えるよ」
そう言えばメニュー画面に書いていたな所持金。この異世界の通貨はグルドと言うらしい。乳酸菌のような名前をした通貨だ。
「さて、お金を稼ぐにはどうしたものか」
「君……商人を目指すんだよね。物でも売ってみるのはどうだろう」
「あいにく商品が在庫切れでね、売れる物なんてこの身体ぐらいしかない」
その言葉にケーレスは顔を真っ赤にする。そして声を震わせながら。
「ボ、ボクは嫌だぞ。そんな好きでもない人と……」
「安心しろ。身体を売るのは私で十分だ」
「な、なな何を言ってるんだい。君がそんな春を売る真似なんて……!」
そこで私はようやく彼女が勘違いをしている事に気づく。このまま誤解されれば私の評価が下がる気がする。
ここは面倒ではあるがしっかりと誤解を解くべきだ。
「私が言いたかったのは仕事で働くという意味だが」
「そ、それは普通の仕事の事だね?」
「そうだ。そもそもアレはリスクが高すぎる。病気の可能性だって否定はできないし、あまり効率的とは呼べんな」
私の意見を聞いてやっと安心したのか無い胸を撫で下ろすケーレス。そんな仕草が人形のようだと思いつつ。
「仕事となると日給制のバイトを探すべきだな。無難な辺りだと料理店と言った所だが……」
そこまで口に出して私の脳内に一抹の不安が浮かぶ。
それは言語の問題だ。私が覚えているのは日本語とネット用語のみ、それ以外は何も知らない。
「異世界語はどうなっている? 君が翻訳してくれるならそれでも構わないが」
死神は神だ。そもそも人間の言語が国ごとで異なったのは神の怒りによるものだという。
ならば、神と同じ種族であるケーレスならば言葉を訳すぐらいは出来るのかも知れない。そう思ったのだが。
「言っておくけどボクは日本語以外はまったく知らないよ」
「そうか……それは困ったな」
私は渋い顔を浮かべて顎に手を当てると長考する。
そんな私にケーレスは余裕の表情を浮かべたまま。
「いや、悩む必要はないよ。この異世界の共通語は日本語のようだからね」
0
お気に入りに追加
604
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
一人だけ竜が宿っていた説。~異世界召喚されてすぐに逃げました~
十本スイ
ファンタジー
ある日、異世界に召喚された主人公――大森星馬は、自身の中に何かが宿っていることに気づく。驚くことにその正体は神とも呼ばれた竜だった。そのせいか絶大な力を持つことになった星馬は、召喚した者たちに好き勝手に使われるのが嫌で、自由を求めて一人その場から逃げたのである。そうして異世界を満喫しようと、自分に憑依した竜と楽しく会話しつつ旅をする。しかし世の中は乱世を迎えており、星馬も徐々に巻き込まれていくが……。
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
セリオン共和国再興記 もしくは宇宙刑事が召喚されてしまったので・・・
今卓&
ファンタジー
地球での任務が終わった銀河連合所属の刑事二人は帰途の途中原因不明のワームホールに巻き込まれる、彼が気が付くと可住惑星上に居た。
その頃会議中の皇帝の元へ伯爵から使者が送られる、彼等は捕らえられ教会の地下へと送られた。
皇帝は日課の教会へ向かう途中でタイスと名乗る少女を”宮”へ招待するという、タイスは不安ながらも両親と周囲の反応から招待を断る事はできず”宮”へ向かう事となる。
刑事は離別したパートナーの捜索と惑星の調査の為、巡視艇から下船する事とした、そこで彼は4人の知性体を救出し獣人二人とエルフを連れてエルフの住む土地へ彼等を届ける旅にでる事となる。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる