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■5.聖夜の鬼は下僕に傅(かしず)く
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「んんっ、ふぁ……っ、あっ、あっ、んん……っ、んっ、ぁあっ」
そのまま激しいキスと抽送がはじまった。
「っ……薪、薪……」
「ああっ、んぁっ……しゅ、にん……もっと……っ」
「っ、煽るなよ……っ、すぐ出る」
「いいっ、からっ、欲しい……全部、私に……ください……っ」
真紘の動きに合わせて声が跳ねて、肌と肌が打ち付け合う音が忙しなく響く。真紘の息遣いにも、その間に交わす言葉にもどんどん余裕がなくなって、お互いに一気に登り詰めようとしているのがよくわかった。
薪は真紘の腕に必死にしがみつき、その雷撃のような甘い刺激を一身に受け止める。溢れた蜜が自分だけでなく真紘の下生えにもしっとりと絡みついてふたりの肌を湿らせ、それがより感度を高めていくようだった。
――主任が私にこんなに……。
そう思うだけで、薪もまた、すぐにでも果ててしまいそうだ。
「……出し、たい。一緒にいこう、薪。……いいか?」
いよいよ本当に余裕がなくなった真紘に切なげな声で尋ねられて、薪はよりいっそう高く甘くなっていく自分の声の合間に何度も頷く。
薪はもう喋ることすらできそうにない。ともすれば、自分で欲した激しいキスと抽送に呼吸すらままならず、息苦しさと溺れてしまいそうなほどの快感の連続に、もう〝今すぐ中に出してほしい〟という本能しか働かなくなっているほどだ。
すると直後、薪の頭を両手で包んだ真紘が、ひと際強く腰を打ち付けた。
「……んああっ――!」
「っ――」
その瞬間、爪先から頭のてっぺんまでビリビリと快感が走って、薪は目の前がチカチカと瞬く。真紘の自身を咥え込んで離さない薪の中心では、膣全体が真紘の中にあるものを搾り取ろうと大きくうねりを起こしていた。自分でもその強い締めつけによって腹部が波打つように連動しているのがわかって、シーツから浮いた背中がなかなか戻らない。
真紘もまた、これまで何度となくそこで果て、それと同時に自身の形をこれでもかと覚え込ませた薪の最奥で情熱を注ぎ込み続けていて、薪の頭をしっかりと抱いたまま、その快感の奔流に必死で耐えているようだった。
「ぁ……ぁっ、はぁっ……あ、ん……っ」
「薪、すごい締めつけだぞ。ちょっと緩めろよ、まだしたいのに」
「そんな……。主任のが、あんまり……っ、気持ちいいからですよ」
「煽るなよ。また出る」
やがて目が合うと、ふたりで長引く余韻に遊ばれながら、たどたどしく会話を重ねる。真紘の髪の毛先に集まった汗が薪の顔に触れて少し冷たい。無我夢中で掴んでいた真紘の二の腕もじっとりと汗ばんでいて、まだなお快感の余韻が全身を巡っているのだろう、ほんのりと鳥肌が立っているのを手の平や指先に感じる。
「ふふ。主任、可愛い」
そうは言っても、薪もまだほとんど余裕はない。
少しずつ余韻は静まりつつあるけれど、中で大きく張ったまま、その存在を主張し続ける真紘の自身の残り火に今にも身が焦がれてしまいそうだった。
「……笑ってろ。すぐにまた、全身、感じさせてやる」
「んっ――んん……っ!」
そのまま深いキスが落とされて、瞬く間に激しさを増していくそれに、薪は一瞬で笑っている余地もないほどに口の中を犯されていく。
「んぅ……、ふぁ……っ、んんぅ……っ」
唾液が絡み合って、くちゅくちゅと厭らしい音が立つ。
真紘の腕は顔の横――薪の頭を抱いたまま、すっぽりと包み込んでいるので、苦しくなって息継ぎのために少し離れようとしても、ほとんど余白はない。苦しくて、甘ったるくて、唇や舌先まで痺れるようなキスの雨はとめどなく降り続ける。
「んぅぅ……っ。んぁっ、ん……っ、んんっ」
まるで真紘の身体で四肢を拘束されているようなものだ。
息苦しさから二の腕を掴んでいる手に次第に爪が立って、真紘の肌にきつく食い込んでいく。これでは真紘が痛いだろうと頭の片隅で思うけれど、その真紘は、それすら幸せだと言わんばかりに深く激しく薪の口の中を責め立てるので、薪はそのうち、そんなことはどうでもよくなってきてしまう。
「あ、ん……っ!」
おもむろに唇を離した真紘と一瞬だけ目が合い、けれど直後、耳の下、後れ毛のあたりにチリっとした痛みが走れば、それと同時に、塞ぐもののなくなった薪の口からは、高く甘く、糸を弾いたような声がひとつ、零れていった。
深く繋がったまま、四肢も頭も甘く柔く真紘に拘束されて、首筋の高い位置には真紘によって付けられた花が散る――そんな自分の状況に薪の頭はもう追いつかない。ただただ、本能がまた〝真紘が欲しい〟と疼いて、まだ微かに残っていた理性なんていう余計なものをあっという間に取り払っていく。
「俺にも付けて。吸いにくかったら、思いっきり歯形を付けたらいい」
「――んっ。はぁ……っ、んっ、……んっ」
言われるままに薪は首筋を自分に寄せてきた真紘に口を大きく開けて吸い付く。
真紘が付けた位置と同じところに一箇所、ほんの少し下がって二箇所目、ちゅっちゅっとリップ音を立てながら首筋をゆっくりと伝って、鎖骨のあたりに三箇所目、今度は吸い付きながら少しだけ歯を立ててみる。
そのたびに真紘が自分から出そうになる声を必死に飲み込む気配と、喉がごくりと鳴る音、それから、喉仏が上下するのが薄っすらと開けた目に映って、薪は、自分に感じてくれているんだなという安心感が全身に広がっていく。
「ちょっ、薪、やりすぎだ」
四箇所目を付けようとして口を開いたところで、さすがに真紘に止められた。
それでも付け足りなくて「……やだ」と駄々をこねてみると、困ったように顔を覗き込んできた真紘が弱々しく「……これ以上されたら、本当にこの一回で今日は終わってしまう」なんて、とんでもなく可愛いことを言う。
「っ……」
そんな真紘に、薪は途端に子宮の奥がきゅんと疼いて仕方がなくなってしまった。それを奥に深く沈めたままの自身で感じたのだろう、真紘に「っ。だからちょっと緩めろって」と切なげに非難されたけれど、これは薪と真紘と、お互いがお互いを煽ったからなんじゃないかと、薪は少しだけ不服に思ってしまう。
だって、薪の中はずっと真紘でいっぱいで、一度、奥に注いでいるのに硬さも太さも何も変わらない。それどころか、むしろさっきまでの激しいキスや、俺にも付けてと自ら差し出してきた首筋への愛撫で大きくなっているような気さえする。
そんな愛しい人の愛しいものを身体の中心に据えたまま、煽り、煽られれば、また強く中がうねりはじめたって仕方がないだろう。
「このまま、もう一回。もっと薪に〝俺は薪のものだ〟って思ってもらう」
すると、がばりと起き上がった真紘が真っ直ぐに薪を見下ろしてそう言った。その目はまるで〝煽られっぱなしでたまるか〟と言っているようで、ぺろりと唇を舐めつつ高い位置から見下ろされた薪は、一気に背筋にゾクゾクとした感覚が走る。
真紘はけして、薪を乱暴に抱くようなことはしない。いつも受け入れる準備が整うまで愛撫を続けてくれるし、薪が嫌がるかもしれないと思ったときは、ちゃんと聞いてからという徹底ぶりだ。けれど、薪にとことん甘く尽くしてくれる真紘でも、三つも吸い付いた跡を付けられては、少々、不服なのかもしれない。
「薪は後ろからも好きだったよな?」
「あ……ぁ……っ」
ふーっと息を吐き、汗で濡れた髪を掻き上げながら問われれば、そのやけに艶っぽい仕草や射抜くような眼差しに薪の口から声が漏れ出ていく。激しく後ろから突き上げられる自分を想像しただけで身体がぷるぷると悦びに震えて、ともすれば、真紘のその容赦のない眼の力だけで軽く達しかけてしまうほどだ。
「待ちきれないって顔しやがって。天然煽り上手が」
「――んあっ……!」
直後、腕を引いて起こされた薪は、中で角度が変わったことで走った甘い刺激に力が分散されてしまい、真紘の肩にもたれかかるようにして抱きつく。
抱き留められる、と言い換えてもいいような抱きつき方に、ふっと愛おしそうに笑った真紘は、何度か薪の髪を優しく梳くと、そこにひとつキスをしてから、あまり力が入らない薪の身体を上手く反転させて後ろ向きにする。
その間も動くたびに角度が入れ替わって薪の身体にピリピリと快感が走り、真紘にほとんどしてもらう形でどうにか枕に顔を埋めたときには、薪はもう、すぐにでも中に溜まった快感を外に放ちたくて下腹部が切ないほどだった。
「好きなだけいっていいから。……動くぞ」
「……ああっ――!」
その合図とともに腰を取られ、ぐっと真紘のほうに引きつけられると、もうたまらなかった。たったそれだけで背中が仰け反り、さらに腰が真紘に付き出すように上がって、薪の全身を駆け抜けるような快感が走っていく。
「ぁ……んっ、あ……あ……んんっ」
目の奥がじんじんと熱くなって涙が滲み、顔を押しつけた枕に少し染みた。
「……いったな? 後ろの何が不満って、薪の顔が見られないことだよな。どんなふうに感じて、どこが気持ちいいのか、背中のしなりや腰のうねりでしか見られねーし。もっといろいろ触りたいのに、案外ちょっと遠いしな」
「あ、んっ! ゃ……待って、しゅ、にん……それ、ずるい……っ」
達した余韻にひとり翻弄されていると、そう言いながら背骨に沿って真紘が指を這わせ、薪はどうすることもできずに身体が大きく跳ねた。敏感になっているのは全身なのに、それをわかっているのに、真紘は背骨を辿る指をやめてくれない。
「ずるくない。好きなだけいっていいって言った」
「ぅぅん……っ、んぁっ、あぁ……っ、あ……んっっ!」
その指は今度は両の手の平になり、薪の身体の線を両側からなぞるように腰から脇腹へ、肩のほうまでゆっくりと伸びる。それから、するりと内側へ滑り込ませると、乳房を包んで形や実の硬さを確かめるように柔く優しく揉みはじめた。
「なんで薪はこんなに柔らかいんだろうな。前から思ってたんだよ、もとから俺の手の大きさに合わせて膨らんだみたいだって。手はわりと大きいほうだけど、すっぽり収まって可愛い。こうやって撫でるように転がすと反応がいいのも」
「んあっ、あ……ん、んっ、あっ、ん……」
そして、そう言いながら弄ぶようにころころと先端を転がす。
「あと、前でも後ろでも、優しく突かれるのも薪は好きだよな? 奥はもちろん、いいだろうけど、こうして入り口のところで動かれる、まどろっこしい感じも好きだし、ゆっくりゆっくり、くすぐるみたいに行き来するだけなのも好きだ」
「んん……っ、ぁ……ん……っ、はぁ……っん」
下腹部はまた真紘の手や口にする言葉に反応して快感を溜め込みはじめているけれど、言われた通り、中に挿れたまま身体を触ってもらうのも薪は好きだ。
激しいのも好きだけれど、奥を優しく突かれるのも身体がふわふわして気持ちいいし、入り口のところも、くすぐられるたびに合わせ目が擦れて、きゅんとなる。
それに、こうしてひとつひとつ、確かめるように触ってもらうと、そのたびに〝薪は俺のものだ〟と教えられているようでひどく安心するし、同時に〝私は主任のものなんだ〟という気持ちが込み上げてきて、心の底から、この人に好きになってもらえた自分はなんて幸せなんだろうと思う。
「薪、また辛そうになって。……そんなに欲しいんだな」
「――んああっ! ま、って、やぁ……っ、すぐっ、すぐだから……っ!」
「本当は待ってもらえないのも好きなくせに。違うか?」
「ち、ちがっ、違わな……い、あっ、んっ――んんんっ……ああっ!」
――それから、ときたま返事を聞かずに激しくされるのも。
「いいよ、何回でも。全部、俺に見せて」
「う、ん……っ、うん」
「可愛い、薪」
腰を取られて引きつけられる、それと同時に真紘が強く自身を薪の奥に穿つ。
何度も何度も、激しく情熱的に、それこそ薪の頭も身体も〝気持ちいい〟しかわからなくなっても、真紘は自分が果てを近くに感じるまでは、何度だって薪を登り詰めさせて、ずっとずっとそこから下ろしてくれない。
真紘はもう、薪がどのタイミングで自分にどうしてほしいのかをとっくに知っている。だから、ときに言葉でも行為でも甘く尽くして、ときに少し強い言葉や律動でサディスティックに責め立てて、それが薪を長く快感の中に閉じ込めるのだ。
「あ――あああっ、っっ!」
「……っ」
薪が何度目かの絶頂に達すると、真紘も少し遅れて動きを止めた。そのまま薪の背中に覆い被さるようにして身体を倒した真紘は、はぁはぁと荒い呼吸を繰り返す。薪も真紘の重さを愛おしく感じながら、肩で忙しなく息をする。
ドクドクと中で波打つ真紘の自身の熱い滾りが静まるのをふたりで待ちながら、たどたどしくシーツを辿って伸びてきた真紘の指に薪もしっかりと指を絡ませれば、言い表しようのない幸福感が全身を包み込んでいくようだった。
そのまま激しいキスと抽送がはじまった。
「っ……薪、薪……」
「ああっ、んぁっ……しゅ、にん……もっと……っ」
「っ、煽るなよ……っ、すぐ出る」
「いいっ、からっ、欲しい……全部、私に……ください……っ」
真紘の動きに合わせて声が跳ねて、肌と肌が打ち付け合う音が忙しなく響く。真紘の息遣いにも、その間に交わす言葉にもどんどん余裕がなくなって、お互いに一気に登り詰めようとしているのがよくわかった。
薪は真紘の腕に必死にしがみつき、その雷撃のような甘い刺激を一身に受け止める。溢れた蜜が自分だけでなく真紘の下生えにもしっとりと絡みついてふたりの肌を湿らせ、それがより感度を高めていくようだった。
――主任が私にこんなに……。
そう思うだけで、薪もまた、すぐにでも果ててしまいそうだ。
「……出し、たい。一緒にいこう、薪。……いいか?」
いよいよ本当に余裕がなくなった真紘に切なげな声で尋ねられて、薪はよりいっそう高く甘くなっていく自分の声の合間に何度も頷く。
薪はもう喋ることすらできそうにない。ともすれば、自分で欲した激しいキスと抽送に呼吸すらままならず、息苦しさと溺れてしまいそうなほどの快感の連続に、もう〝今すぐ中に出してほしい〟という本能しか働かなくなっているほどだ。
すると直後、薪の頭を両手で包んだ真紘が、ひと際強く腰を打ち付けた。
「……んああっ――!」
「っ――」
その瞬間、爪先から頭のてっぺんまでビリビリと快感が走って、薪は目の前がチカチカと瞬く。真紘の自身を咥え込んで離さない薪の中心では、膣全体が真紘の中にあるものを搾り取ろうと大きくうねりを起こしていた。自分でもその強い締めつけによって腹部が波打つように連動しているのがわかって、シーツから浮いた背中がなかなか戻らない。
真紘もまた、これまで何度となくそこで果て、それと同時に自身の形をこれでもかと覚え込ませた薪の最奥で情熱を注ぎ込み続けていて、薪の頭をしっかりと抱いたまま、その快感の奔流に必死で耐えているようだった。
「ぁ……ぁっ、はぁっ……あ、ん……っ」
「薪、すごい締めつけだぞ。ちょっと緩めろよ、まだしたいのに」
「そんな……。主任のが、あんまり……っ、気持ちいいからですよ」
「煽るなよ。また出る」
やがて目が合うと、ふたりで長引く余韻に遊ばれながら、たどたどしく会話を重ねる。真紘の髪の毛先に集まった汗が薪の顔に触れて少し冷たい。無我夢中で掴んでいた真紘の二の腕もじっとりと汗ばんでいて、まだなお快感の余韻が全身を巡っているのだろう、ほんのりと鳥肌が立っているのを手の平や指先に感じる。
「ふふ。主任、可愛い」
そうは言っても、薪もまだほとんど余裕はない。
少しずつ余韻は静まりつつあるけれど、中で大きく張ったまま、その存在を主張し続ける真紘の自身の残り火に今にも身が焦がれてしまいそうだった。
「……笑ってろ。すぐにまた、全身、感じさせてやる」
「んっ――んん……っ!」
そのまま深いキスが落とされて、瞬く間に激しさを増していくそれに、薪は一瞬で笑っている余地もないほどに口の中を犯されていく。
「んぅ……、ふぁ……っ、んんぅ……っ」
唾液が絡み合って、くちゅくちゅと厭らしい音が立つ。
真紘の腕は顔の横――薪の頭を抱いたまま、すっぽりと包み込んでいるので、苦しくなって息継ぎのために少し離れようとしても、ほとんど余白はない。苦しくて、甘ったるくて、唇や舌先まで痺れるようなキスの雨はとめどなく降り続ける。
「んぅぅ……っ。んぁっ、ん……っ、んんっ」
まるで真紘の身体で四肢を拘束されているようなものだ。
息苦しさから二の腕を掴んでいる手に次第に爪が立って、真紘の肌にきつく食い込んでいく。これでは真紘が痛いだろうと頭の片隅で思うけれど、その真紘は、それすら幸せだと言わんばかりに深く激しく薪の口の中を責め立てるので、薪はそのうち、そんなことはどうでもよくなってきてしまう。
「あ、ん……っ!」
おもむろに唇を離した真紘と一瞬だけ目が合い、けれど直後、耳の下、後れ毛のあたりにチリっとした痛みが走れば、それと同時に、塞ぐもののなくなった薪の口からは、高く甘く、糸を弾いたような声がひとつ、零れていった。
深く繋がったまま、四肢も頭も甘く柔く真紘に拘束されて、首筋の高い位置には真紘によって付けられた花が散る――そんな自分の状況に薪の頭はもう追いつかない。ただただ、本能がまた〝真紘が欲しい〟と疼いて、まだ微かに残っていた理性なんていう余計なものをあっという間に取り払っていく。
「俺にも付けて。吸いにくかったら、思いっきり歯形を付けたらいい」
「――んっ。はぁ……っ、んっ、……んっ」
言われるままに薪は首筋を自分に寄せてきた真紘に口を大きく開けて吸い付く。
真紘が付けた位置と同じところに一箇所、ほんの少し下がって二箇所目、ちゅっちゅっとリップ音を立てながら首筋をゆっくりと伝って、鎖骨のあたりに三箇所目、今度は吸い付きながら少しだけ歯を立ててみる。
そのたびに真紘が自分から出そうになる声を必死に飲み込む気配と、喉がごくりと鳴る音、それから、喉仏が上下するのが薄っすらと開けた目に映って、薪は、自分に感じてくれているんだなという安心感が全身に広がっていく。
「ちょっ、薪、やりすぎだ」
四箇所目を付けようとして口を開いたところで、さすがに真紘に止められた。
それでも付け足りなくて「……やだ」と駄々をこねてみると、困ったように顔を覗き込んできた真紘が弱々しく「……これ以上されたら、本当にこの一回で今日は終わってしまう」なんて、とんでもなく可愛いことを言う。
「っ……」
そんな真紘に、薪は途端に子宮の奥がきゅんと疼いて仕方がなくなってしまった。それを奥に深く沈めたままの自身で感じたのだろう、真紘に「っ。だからちょっと緩めろって」と切なげに非難されたけれど、これは薪と真紘と、お互いがお互いを煽ったからなんじゃないかと、薪は少しだけ不服に思ってしまう。
だって、薪の中はずっと真紘でいっぱいで、一度、奥に注いでいるのに硬さも太さも何も変わらない。それどころか、むしろさっきまでの激しいキスや、俺にも付けてと自ら差し出してきた首筋への愛撫で大きくなっているような気さえする。
そんな愛しい人の愛しいものを身体の中心に据えたまま、煽り、煽られれば、また強く中がうねりはじめたって仕方がないだろう。
「このまま、もう一回。もっと薪に〝俺は薪のものだ〟って思ってもらう」
すると、がばりと起き上がった真紘が真っ直ぐに薪を見下ろしてそう言った。その目はまるで〝煽られっぱなしでたまるか〟と言っているようで、ぺろりと唇を舐めつつ高い位置から見下ろされた薪は、一気に背筋にゾクゾクとした感覚が走る。
真紘はけして、薪を乱暴に抱くようなことはしない。いつも受け入れる準備が整うまで愛撫を続けてくれるし、薪が嫌がるかもしれないと思ったときは、ちゃんと聞いてからという徹底ぶりだ。けれど、薪にとことん甘く尽くしてくれる真紘でも、三つも吸い付いた跡を付けられては、少々、不服なのかもしれない。
「薪は後ろからも好きだったよな?」
「あ……ぁ……っ」
ふーっと息を吐き、汗で濡れた髪を掻き上げながら問われれば、そのやけに艶っぽい仕草や射抜くような眼差しに薪の口から声が漏れ出ていく。激しく後ろから突き上げられる自分を想像しただけで身体がぷるぷると悦びに震えて、ともすれば、真紘のその容赦のない眼の力だけで軽く達しかけてしまうほどだ。
「待ちきれないって顔しやがって。天然煽り上手が」
「――んあっ……!」
直後、腕を引いて起こされた薪は、中で角度が変わったことで走った甘い刺激に力が分散されてしまい、真紘の肩にもたれかかるようにして抱きつく。
抱き留められる、と言い換えてもいいような抱きつき方に、ふっと愛おしそうに笑った真紘は、何度か薪の髪を優しく梳くと、そこにひとつキスをしてから、あまり力が入らない薪の身体を上手く反転させて後ろ向きにする。
その間も動くたびに角度が入れ替わって薪の身体にピリピリと快感が走り、真紘にほとんどしてもらう形でどうにか枕に顔を埋めたときには、薪はもう、すぐにでも中に溜まった快感を外に放ちたくて下腹部が切ないほどだった。
「好きなだけいっていいから。……動くぞ」
「……ああっ――!」
その合図とともに腰を取られ、ぐっと真紘のほうに引きつけられると、もうたまらなかった。たったそれだけで背中が仰け反り、さらに腰が真紘に付き出すように上がって、薪の全身を駆け抜けるような快感が走っていく。
「ぁ……んっ、あ……あ……んんっ」
目の奥がじんじんと熱くなって涙が滲み、顔を押しつけた枕に少し染みた。
「……いったな? 後ろの何が不満って、薪の顔が見られないことだよな。どんなふうに感じて、どこが気持ちいいのか、背中のしなりや腰のうねりでしか見られねーし。もっといろいろ触りたいのに、案外ちょっと遠いしな」
「あ、んっ! ゃ……待って、しゅ、にん……それ、ずるい……っ」
達した余韻にひとり翻弄されていると、そう言いながら背骨に沿って真紘が指を這わせ、薪はどうすることもできずに身体が大きく跳ねた。敏感になっているのは全身なのに、それをわかっているのに、真紘は背骨を辿る指をやめてくれない。
「ずるくない。好きなだけいっていいって言った」
「ぅぅん……っ、んぁっ、あぁ……っ、あ……んっっ!」
その指は今度は両の手の平になり、薪の身体の線を両側からなぞるように腰から脇腹へ、肩のほうまでゆっくりと伸びる。それから、するりと内側へ滑り込ませると、乳房を包んで形や実の硬さを確かめるように柔く優しく揉みはじめた。
「なんで薪はこんなに柔らかいんだろうな。前から思ってたんだよ、もとから俺の手の大きさに合わせて膨らんだみたいだって。手はわりと大きいほうだけど、すっぽり収まって可愛い。こうやって撫でるように転がすと反応がいいのも」
「んあっ、あ……ん、んっ、あっ、ん……」
そして、そう言いながら弄ぶようにころころと先端を転がす。
「あと、前でも後ろでも、優しく突かれるのも薪は好きだよな? 奥はもちろん、いいだろうけど、こうして入り口のところで動かれる、まどろっこしい感じも好きだし、ゆっくりゆっくり、くすぐるみたいに行き来するだけなのも好きだ」
「んん……っ、ぁ……ん……っ、はぁ……っん」
下腹部はまた真紘の手や口にする言葉に反応して快感を溜め込みはじめているけれど、言われた通り、中に挿れたまま身体を触ってもらうのも薪は好きだ。
激しいのも好きだけれど、奥を優しく突かれるのも身体がふわふわして気持ちいいし、入り口のところも、くすぐられるたびに合わせ目が擦れて、きゅんとなる。
それに、こうしてひとつひとつ、確かめるように触ってもらうと、そのたびに〝薪は俺のものだ〟と教えられているようでひどく安心するし、同時に〝私は主任のものなんだ〟という気持ちが込み上げてきて、心の底から、この人に好きになってもらえた自分はなんて幸せなんだろうと思う。
「薪、また辛そうになって。……そんなに欲しいんだな」
「――んああっ! ま、って、やぁ……っ、すぐっ、すぐだから……っ!」
「本当は待ってもらえないのも好きなくせに。違うか?」
「ち、ちがっ、違わな……い、あっ、んっ――んんんっ……ああっ!」
――それから、ときたま返事を聞かずに激しくされるのも。
「いいよ、何回でも。全部、俺に見せて」
「う、ん……っ、うん」
「可愛い、薪」
腰を取られて引きつけられる、それと同時に真紘が強く自身を薪の奥に穿つ。
何度も何度も、激しく情熱的に、それこそ薪の頭も身体も〝気持ちいい〟しかわからなくなっても、真紘は自分が果てを近くに感じるまでは、何度だって薪を登り詰めさせて、ずっとずっとそこから下ろしてくれない。
真紘はもう、薪がどのタイミングで自分にどうしてほしいのかをとっくに知っている。だから、ときに言葉でも行為でも甘く尽くして、ときに少し強い言葉や律動でサディスティックに責め立てて、それが薪を長く快感の中に閉じ込めるのだ。
「あ――あああっ、っっ!」
「……っ」
薪が何度目かの絶頂に達すると、真紘も少し遅れて動きを止めた。そのまま薪の背中に覆い被さるようにして身体を倒した真紘は、はぁはぁと荒い呼吸を繰り返す。薪も真紘の重さを愛おしく感じながら、肩で忙しなく息をする。
ドクドクと中で波打つ真紘の自身の熱い滾りが静まるのをふたりで待ちながら、たどたどしくシーツを辿って伸びてきた真紘の指に薪もしっかりと指を絡ませれば、言い表しようのない幸福感が全身を包み込んでいくようだった。
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相手は『王子様』と名高い白河財閥の三男白河壱都(しらかわいちと)。
彼は裏表のあるくせ者で、こんな男が私の結婚相手!?
父と継母は財産を奪われたと怒り狂うし、異母妹は婚約者を盗られたと言うし。
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【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~
蓮美ちま
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