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藤原史郎の殺人遊戯10
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(逃げるか)
どんどん悪化していく戦況にポン太は簡単に敵前逃亡を選んだ。
銃撃など不意を突かれなければ避ける事など容易いが、妙に嫌な予感が拭えない。このまま敵の増員を許してしまえば何か取り返しの付かない事態に陥るような気がし始めたのだ。
それに高難易度のイベントはレベルアップをしてから挑むのが鉄則だ。
穂村雫を殺害してから明らかに身体能力が向上している。予想通り現実での殺人による経験値の入手は可能だったのだ。それならば街中に屯している雑魚モンスターを狩って地道にレベルアップをするべきだとポン太は思った。
このイベントは相手だけが一方的に復活可能なエインヘリヤル属性の敵が登場する負けイベントのようなものだ。最終的にプレイヤーが逃亡して次のステージへと進む。そういうイベントだったのだろうとポン太は納得した。
(エインヘリヤルか。厄介だけど、復活するってことはレアエネミーが幾らでも再ポップするって事っすよね。上手く行けば経験値を稼ぎ放題?)
レベルアップをして楽に殺せるようになったら、一人くらい浚って殺し続けてみよう。そんな悪魔的な発想をしてポン太は嗤った。
江利香の言う人間の悪意を煮詰めたような笑顔で。
逃亡前に復活できないだろう警官へ嫌がらせのように瓦礫を大量にばらまいてポン太は身体を翻した。
瓦礫が飛来する中、渡辺は意地で銃弾をポン太の頭部へと撃ち放った。そのまま避けなければ脳を破壊するだろう弾道だ。
だが、既にポン太は銃弾を見てから避ける事も可能な身体能力を持つ。余裕で避けられると笑って。
「ロック」
白岩姫に後回しにされた。
「何、逃げようとしてんのさ。ここで死んでおけよ」
ポン太の投擲した瓦礫もロックで後回しにされ、警察官達はギリギリで生き延び。
一方的にポン太だけが銃弾に脳を破壊されたのだった。
「ふぅ。助かりました白岩姫」
「君の事だから何時か封印を解くだろうとは思ってたけどね穂村。まさか封印したその日の夜に解除するとはボクも予想しなかったよ」
「必要でしたから」
「ボクに再び殺されるとは思わなかったのかい?」
「例えそうなっても必要でしたから」
ポン太が銃弾を受けて倒れた姿を見て、ホッとした穂村は白岩姫と対峙していた。
この場で藤原史郎が逃亡する事に比べれば白岩姫を自由にした方が何倍もマシだと穂村は判断したのである。
それだけの脅威を穂村はポン太に感じていたのだ。場合によってはディストピアの未来予知を悪い方に変えてしまいかねないような危うさがポン太にはあった。
穂村の記憶を共有した白岩姫も穂村の意見に無言で同意した。何の問答もなく、穂村に協力していたのが証拠だ。
白岩姫は仲間が危険に晒された程度では意見を翻さない。場合によってはポン太ではなく穂村に牙を剥いていた可能性もあっただろう。
決定的な瞬間までポン太に悟られないよう姿を現さなかったのは穂村の指示だ。穂村の指揮下に完全に白岩姫は組み込まれていた。
恐るべきなのは、あの穂村雫と白岩姫に問題を棚上げにしてまで団結させた藤原史郎だろう。英雄に希代な巨悪だと認識される程、藤原史郎は常人から並外れていた。
だが、それでも尚。
二人は藤原史郎を甘く見ていた。
「バンッ」
そう笑ってポン太は白岩姫に頭部を抉った銃弾を投げ返した。
RPGで頭を攻撃された。その程度じゃゲームでは死なない。故に脳味噌が破壊された。その程度ではポン太も死なない。
そういう理論を何の疑問もなく言ってのけるのが、この男なのだ。
「かふっ」
強靱な精神と固有能力とは裏腹に、白岩姫は身体能力は人間とさして変わらない。銃撃されるのと変わらない速度で飛来した銃弾を避ける事が出来ず、白岩姫は肺に穴が空いて吐血した。
それを見てポン太は笑った。
「バーチャルキャラクターも死ぬんすね。なら主のいないピグマリオンさんあたりは復活も出来ずに消滅するんじゃないっすか?」
逃げる前に挑戦してみようかとポン太は嗤って江利香を見た。ピグマリオンは必ず江利香を庇う。
ならば接近戦ではなく、逸らす事すら出来ない重量物を江利香に高速で投げつければ防ぐことも出来ずに身代わりになるのではないかと思ったのだ。
脳を破壊しようが復活する殺人鬼に気圧され、誰もが息を呑んでポン太を見つめる中、その男は現れた。
「人の妹を変な目で見てんじゃねえ」
最強のリンク能力者、佐藤浩介。遅まきながらの参戦であった。
どんどん悪化していく戦況にポン太は簡単に敵前逃亡を選んだ。
銃撃など不意を突かれなければ避ける事など容易いが、妙に嫌な予感が拭えない。このまま敵の増員を許してしまえば何か取り返しの付かない事態に陥るような気がし始めたのだ。
それに高難易度のイベントはレベルアップをしてから挑むのが鉄則だ。
穂村雫を殺害してから明らかに身体能力が向上している。予想通り現実での殺人による経験値の入手は可能だったのだ。それならば街中に屯している雑魚モンスターを狩って地道にレベルアップをするべきだとポン太は思った。
このイベントは相手だけが一方的に復活可能なエインヘリヤル属性の敵が登場する負けイベントのようなものだ。最終的にプレイヤーが逃亡して次のステージへと進む。そういうイベントだったのだろうとポン太は納得した。
(エインヘリヤルか。厄介だけど、復活するってことはレアエネミーが幾らでも再ポップするって事っすよね。上手く行けば経験値を稼ぎ放題?)
レベルアップをして楽に殺せるようになったら、一人くらい浚って殺し続けてみよう。そんな悪魔的な発想をしてポン太は嗤った。
江利香の言う人間の悪意を煮詰めたような笑顔で。
逃亡前に復活できないだろう警官へ嫌がらせのように瓦礫を大量にばらまいてポン太は身体を翻した。
瓦礫が飛来する中、渡辺は意地で銃弾をポン太の頭部へと撃ち放った。そのまま避けなければ脳を破壊するだろう弾道だ。
だが、既にポン太は銃弾を見てから避ける事も可能な身体能力を持つ。余裕で避けられると笑って。
「ロック」
白岩姫に後回しにされた。
「何、逃げようとしてんのさ。ここで死んでおけよ」
ポン太の投擲した瓦礫もロックで後回しにされ、警察官達はギリギリで生き延び。
一方的にポン太だけが銃弾に脳を破壊されたのだった。
「ふぅ。助かりました白岩姫」
「君の事だから何時か封印を解くだろうとは思ってたけどね穂村。まさか封印したその日の夜に解除するとはボクも予想しなかったよ」
「必要でしたから」
「ボクに再び殺されるとは思わなかったのかい?」
「例えそうなっても必要でしたから」
ポン太が銃弾を受けて倒れた姿を見て、ホッとした穂村は白岩姫と対峙していた。
この場で藤原史郎が逃亡する事に比べれば白岩姫を自由にした方が何倍もマシだと穂村は判断したのである。
それだけの脅威を穂村はポン太に感じていたのだ。場合によってはディストピアの未来予知を悪い方に変えてしまいかねないような危うさがポン太にはあった。
穂村の記憶を共有した白岩姫も穂村の意見に無言で同意した。何の問答もなく、穂村に協力していたのが証拠だ。
白岩姫は仲間が危険に晒された程度では意見を翻さない。場合によってはポン太ではなく穂村に牙を剥いていた可能性もあっただろう。
決定的な瞬間までポン太に悟られないよう姿を現さなかったのは穂村の指示だ。穂村の指揮下に完全に白岩姫は組み込まれていた。
恐るべきなのは、あの穂村雫と白岩姫に問題を棚上げにしてまで団結させた藤原史郎だろう。英雄に希代な巨悪だと認識される程、藤原史郎は常人から並外れていた。
だが、それでも尚。
二人は藤原史郎を甘く見ていた。
「バンッ」
そう笑ってポン太は白岩姫に頭部を抉った銃弾を投げ返した。
RPGで頭を攻撃された。その程度じゃゲームでは死なない。故に脳味噌が破壊された。その程度ではポン太も死なない。
そういう理論を何の疑問もなく言ってのけるのが、この男なのだ。
「かふっ」
強靱な精神と固有能力とは裏腹に、白岩姫は身体能力は人間とさして変わらない。銃撃されるのと変わらない速度で飛来した銃弾を避ける事が出来ず、白岩姫は肺に穴が空いて吐血した。
それを見てポン太は笑った。
「バーチャルキャラクターも死ぬんすね。なら主のいないピグマリオンさんあたりは復活も出来ずに消滅するんじゃないっすか?」
逃げる前に挑戦してみようかとポン太は嗤って江利香を見た。ピグマリオンは必ず江利香を庇う。
ならば接近戦ではなく、逸らす事すら出来ない重量物を江利香に高速で投げつければ防ぐことも出来ずに身代わりになるのではないかと思ったのだ。
脳を破壊しようが復活する殺人鬼に気圧され、誰もが息を呑んでポン太を見つめる中、その男は現れた。
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