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四十話 魔性の女
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先行公開したピグマリオンのダンス動画は早々に20万回再生まで届き、チャンネル登録者数は3万人を超えた。
チートの恐ろしさを垣間見たな。アリス姫のチャンネル登録者数を簡単に超えそうで複雑な気分だ。
ただコメントはほぼ海外の言語で埋まっていて日本語は少数だ。これはピグマリオンのダンス動画の広告費を奮発した結果、海外にまでCMが流れたからだろう。
言語を用いないピグマリオンは、逆に考えると何処の国だろうと通用しうる可能性を持っているのだ。
ピグマリオンのキャラデザや背景、小道具を漫画家,イラストレーター,デザイナーで合作しプログラマーに高クオリティの3Dを作らせ、ダンサーの演者が踊るのに合わせてミュージシャンがピアノを弾く。ツイッターでのピグマリオンのメッセージを翻訳家に各言語に通訳してもらってるし、合計で7人のチート能力者が関わってることになる。
複数のチーターによるクオリティの暴力。それがピグマリオンだ。
「俺、この後にデビューする予定なんですが、もうちょっと手加減してくれませんかね……」
「アカリは既にアリス姫の配信に登場してるだろ。気楽に行けって」
チートな裏方によるクオリティアップは別にピグマリオンだけの話じゃないしな。
アリス姫のドレス姿も白色のシックなバージョンだけじゃなく黒色のゴシックロリータバージョンの新衣装を導入したし。
アカリも赤毛を三つ編みにしてメイド姿の小生意気だけど甲斐甲斐しい感じに仕上がったし、モロホシも童貞を殺す服で可愛らしくも清楚な感じに仕上がった。
他にもこれまでのアリス姫の配信に海外の言語で翻訳した内容を表示できるようにしたりとチート裏方は大活躍している。
そう言ってレッドの姿をした浩介の背中をバンバン叩く。俺と同じく浩介も引き出し屋の件以来この姿だ。赤毛に染めた髪のタッパの高い日本人青年はギリギリ日本にいても違和感はない。
この姿で甲斐甲斐しくエプロンを着けて料理をしてくれたりするから妙な気分になるな。スタッフの元ニート達からも浩介は人気がある。
不良が子猫を拾って世話をしてるようなギャップがあるんだろう。最初は結構ビビってたが。
この姿でアカリのアバター情報を喉だけリンクさせて女声を出したりも可能だ。
実際にそうやってアリス姫の配信に登場させてもみた。全身をリンクさせた時との違いも感じないらしくリスナーもアカリとして接してくれた。
うん、ネカマ需要はこれで十分満たせるな。実は女でしたって二番煎じをすると寒いし、それは避けたかったのだ。
配信スタジオを借りて利用してるのは現状だとピグマリオンとアリス姫だけだけど、何処に人目があるか分からないし身バレの可能性は消せないしな。
ちなみにこの部分リンクは現状では浩介にしか出来ない。
うちのギルドでもトップのシンクロ率を誇るし、一日の大半をリンクしっぱなしで過ごしているし、習熟度が違うんだろう。
「アカリさんは既に人気があるじゃないですか……。わ、私なんてトリを任せられてるんですよ? 無理です、無謀です、死んじゃいます」
青い顔をしてるのは俺達が引き出し屋へ救出に行ったギルメン、モロホシだ。
18歳の女子高生くらいの年齢で容姿も半端ない美人でヒロインっぽい。
中学生からヒキコモリになってずっとネトゲをしていたらしいんだが、引き籠もる原因になった虐めも聞いてみればその卓越した美貌を嫉妬されてのものみたいだな。
クラスカースト上位の女子の片思い相手に告白されて振ったんだとか。しかもその告白の断り方が、恋愛とかまだ考えられないと断ったのかキープしたのか分からないような感じで、そりゃまあ反感を買うだろっていう。
これで本人には一切悪気がないからなぁ。むしろ、それで恋愛にトラウマを持って男を避けるようになったらしいし。
ヒビキ、お前は親切なオッサン的立ち位置で脈はないぞ。
それなのにオフ会で何度も会ってるあたり天然のサークルクラッシャー体質だな。どうやらネトゲを題材にしたアニメの影響と、社会復帰しなきゃという脅迫観念の複合的理由でオフ会に出たらしいが。オフパコ狙いのクズ男に引っかからなくて良かったよ。ヒビキの見守らなきゃって使命感も少しは理解できる。
「いやモロホシは素のままの自分を曝け出せば人気が出る。清純派のアイドル的立ち位置を狙えると思うぞ」
こういうタイプを魔性の女という。
男にあまり執着心がなく、計算で籠絡してるわけでもなく、優柔不断で、それなのに意外と芯が強く、誰かに構われていないと不安になる。
メンヘラと紙一重だが卓越した美貌や話術で人を惹き付けることが出来ると、思わせぶりな態度で無意識に自分の周囲に侍らせようとするのだ。
本物は実は男女の違いとか気にしないから、女友達相手にも同じような態度を取る。
それで蛇蝎の如く嫌われるから女受けが悪いんだが、中には男と同じように惹かれるような女性もいる。自分で気付いてないだけでバイセクシャルの気があって女性のセックスアピールに惑わされているんだな。
でも魔性の女は無意識で誘惑してるから本気になると断られたりする。うーん、質が悪い。
モロホシは普通に社会へ出ると天然のサークルクラッシャー体質を発揮して問題を起こしそうだが、アイドルとして見るならこれほどの逸材は珍しい。
もう本能で人の魅了の仕方をわきまえているからな。
今もモロホシを肯定した俺へ縋るように袖を掴んで上目遣いで見てくる。涙目で見上げてくる様は狙ってるんじゃないかと思うだろうが、完全に無意識だ。恐ろしい。
本人的には自分の進退が掛かった大一番を前にボスから励ましの言葉とアドバイスが欲しいんだろう。まあ、ね。大事な仕事だからね。少しでも成功確率を上げたいって気持ちは分かる。
でも切ない表情はよせ。それは俺にも効く!
「あー、姫様がトリを任せた理由がよく分かりましたわ」
外野で見ていた浩介が納得した様子で頷いた。
チートの恐ろしさを垣間見たな。アリス姫のチャンネル登録者数を簡単に超えそうで複雑な気分だ。
ただコメントはほぼ海外の言語で埋まっていて日本語は少数だ。これはピグマリオンのダンス動画の広告費を奮発した結果、海外にまでCMが流れたからだろう。
言語を用いないピグマリオンは、逆に考えると何処の国だろうと通用しうる可能性を持っているのだ。
ピグマリオンのキャラデザや背景、小道具を漫画家,イラストレーター,デザイナーで合作しプログラマーに高クオリティの3Dを作らせ、ダンサーの演者が踊るのに合わせてミュージシャンがピアノを弾く。ツイッターでのピグマリオンのメッセージを翻訳家に各言語に通訳してもらってるし、合計で7人のチート能力者が関わってることになる。
複数のチーターによるクオリティの暴力。それがピグマリオンだ。
「俺、この後にデビューする予定なんですが、もうちょっと手加減してくれませんかね……」
「アカリは既にアリス姫の配信に登場してるだろ。気楽に行けって」
チートな裏方によるクオリティアップは別にピグマリオンだけの話じゃないしな。
アリス姫のドレス姿も白色のシックなバージョンだけじゃなく黒色のゴシックロリータバージョンの新衣装を導入したし。
アカリも赤毛を三つ編みにしてメイド姿の小生意気だけど甲斐甲斐しい感じに仕上がったし、モロホシも童貞を殺す服で可愛らしくも清楚な感じに仕上がった。
他にもこれまでのアリス姫の配信に海外の言語で翻訳した内容を表示できるようにしたりとチート裏方は大活躍している。
そう言ってレッドの姿をした浩介の背中をバンバン叩く。俺と同じく浩介も引き出し屋の件以来この姿だ。赤毛に染めた髪のタッパの高い日本人青年はギリギリ日本にいても違和感はない。
この姿で甲斐甲斐しくエプロンを着けて料理をしてくれたりするから妙な気分になるな。スタッフの元ニート達からも浩介は人気がある。
不良が子猫を拾って世話をしてるようなギャップがあるんだろう。最初は結構ビビってたが。
この姿でアカリのアバター情報を喉だけリンクさせて女声を出したりも可能だ。
実際にそうやってアリス姫の配信に登場させてもみた。全身をリンクさせた時との違いも感じないらしくリスナーもアカリとして接してくれた。
うん、ネカマ需要はこれで十分満たせるな。実は女でしたって二番煎じをすると寒いし、それは避けたかったのだ。
配信スタジオを借りて利用してるのは現状だとピグマリオンとアリス姫だけだけど、何処に人目があるか分からないし身バレの可能性は消せないしな。
ちなみにこの部分リンクは現状では浩介にしか出来ない。
うちのギルドでもトップのシンクロ率を誇るし、一日の大半をリンクしっぱなしで過ごしているし、習熟度が違うんだろう。
「アカリさんは既に人気があるじゃないですか……。わ、私なんてトリを任せられてるんですよ? 無理です、無謀です、死んじゃいます」
青い顔をしてるのは俺達が引き出し屋へ救出に行ったギルメン、モロホシだ。
18歳の女子高生くらいの年齢で容姿も半端ない美人でヒロインっぽい。
中学生からヒキコモリになってずっとネトゲをしていたらしいんだが、引き籠もる原因になった虐めも聞いてみればその卓越した美貌を嫉妬されてのものみたいだな。
クラスカースト上位の女子の片思い相手に告白されて振ったんだとか。しかもその告白の断り方が、恋愛とかまだ考えられないと断ったのかキープしたのか分からないような感じで、そりゃまあ反感を買うだろっていう。
これで本人には一切悪気がないからなぁ。むしろ、それで恋愛にトラウマを持って男を避けるようになったらしいし。
ヒビキ、お前は親切なオッサン的立ち位置で脈はないぞ。
それなのにオフ会で何度も会ってるあたり天然のサークルクラッシャー体質だな。どうやらネトゲを題材にしたアニメの影響と、社会復帰しなきゃという脅迫観念の複合的理由でオフ会に出たらしいが。オフパコ狙いのクズ男に引っかからなくて良かったよ。ヒビキの見守らなきゃって使命感も少しは理解できる。
「いやモロホシは素のままの自分を曝け出せば人気が出る。清純派のアイドル的立ち位置を狙えると思うぞ」
こういうタイプを魔性の女という。
男にあまり執着心がなく、計算で籠絡してるわけでもなく、優柔不断で、それなのに意外と芯が強く、誰かに構われていないと不安になる。
メンヘラと紙一重だが卓越した美貌や話術で人を惹き付けることが出来ると、思わせぶりな態度で無意識に自分の周囲に侍らせようとするのだ。
本物は実は男女の違いとか気にしないから、女友達相手にも同じような態度を取る。
それで蛇蝎の如く嫌われるから女受けが悪いんだが、中には男と同じように惹かれるような女性もいる。自分で気付いてないだけでバイセクシャルの気があって女性のセックスアピールに惑わされているんだな。
でも魔性の女は無意識で誘惑してるから本気になると断られたりする。うーん、質が悪い。
モロホシは普通に社会へ出ると天然のサークルクラッシャー体質を発揮して問題を起こしそうだが、アイドルとして見るならこれほどの逸材は珍しい。
もう本能で人の魅了の仕方をわきまえているからな。
今もモロホシを肯定した俺へ縋るように袖を掴んで上目遣いで見てくる。涙目で見上げてくる様は狙ってるんじゃないかと思うだろうが、完全に無意識だ。恐ろしい。
本人的には自分の進退が掛かった大一番を前にボスから励ましの言葉とアドバイスが欲しいんだろう。まあ、ね。大事な仕事だからね。少しでも成功確率を上げたいって気持ちは分かる。
でも切ない表情はよせ。それは俺にも効く!
「あー、姫様がトリを任せた理由がよく分かりましたわ」
外野で見ていた浩介が納得した様子で頷いた。
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