ネカマ姫のチート転生譚

八虚空

文字の大きさ
上 下
17 / 222

十話 リアルとオカルト前編

しおりを挟む
 アリス姫は可愛らしい顔立ちにゴシックロリータを着た典型的な幼女キャラだが、性格はクールで辛辣。その上、ツンデレ。
 これはネカマ宣言をしてから次から次へとやって来たキモオタのセクハラを罵倒し続けた結果だ。オタクの中には陰キャコミュ障が多数混じってて、空気が読めずTPOも考えず加減も出来ずセクハラをしてくる輩も多いのだ。まあ、人が嫌がることをするのが唯一の楽しみ的な確信犯も混ざっているが。
 それでも癒やし系幼女を最初は目指していたんだから罵倒する時は優しく傷つけないように加減するようにしている。ネカマだからって何しても良いわけじゃないようにセクハラされたからって何しても良いわけじゃないのだ。
 それが弱腰対応と見られたのか反応に興奮したのか知らないが、更にキモオタが寄ってくるようになったが。

 他のツンデレ成分はアリス姫としてロールプレイをしてない時の素の対応が原因だな。ネトゲをしてる間中、ロールプレイを続けていたんじゃ疲れてしまう。
 アリス姫というキャラとプレイヤーは別だという認識も広まっていて、ツッコミやボケのお笑いや理不尽な目に遭ってる時なんかは俺として反応を返している。
 それが良いって俺の方が好きな変態もいて大変気持ち悪い。
 最低限、キャラ崩壊をしないようにと女声だけは続けていたのが原因だろうか。男の声をネタにしたり歌ったりすればウケるし反応も良いだろうが、アリス姫というキャラクターが本格的に崩壊してしまう危険性がある。アリス姫ガチ勢なんかは離れていくんじゃないかな。
 タラコ唇さんあたりはアリス姫ガチ勢だから危なかった気がする。思い留まって良かった。
 今じゃもう、男の声は出せない。頑張っても少年風にしかならないだろうな。声帯が女になって変化したから。
 これはひょっとして、女疑惑の払拭が不可能になったのでは?

「にょわー!」
「頑張れ、姫様!」
「効いてるっ。効いてるよ!」
「あざとい」
「うむ、これはあざとい」
「だがそれがいい」

 チート能力、リンクを最大限活用する為に現在はシンクロ率を鍛えようと雑魚モンスターをポコポコ殴っている。
 シンクロ率が低いとステータスが低くスキルに魔法を発動できないだけでなく、装備も低レベルのものしか装備できないとは思った以上に制限がある。
 その上、普通のプレイヤーからは本来のキャラとは別キャラのように見えてるらしく同一キャラ扱いされない。
 リバースリンクで魂がアバターに宿るシーンはどんな感じに認識されてるのかね。危険なんでギルメンには隠れてやるように指示したけど。

「た、倒した……」
「姫様、レベルアップしてるよ」
「おめでとう」
「おめ」
「やっと回復魔法が解禁されるな」
「パーティメンバーを回復させるだけじゃ経験値効率、悪いけどな」
「でも現実で回復魔法を使えるようになったんだぜ?」
「奇跡じゃん」

 うげっ、現実で不用意に魔法を使うなよ。言い訳が出来なくなる。
 まあリンクチートを持ってる時点で今更か。ギルメンを信頼するしかない。
 俺のチートの仕様上、チートをばらまくのは確定事項だ。神様も最初からそのつもりで俺に他者覚醒チートを与えただろうから、迷いはない。
 問題は現代社会に何時までバレずに居られるかだ。神様に許して貰えても社会に許容して貰えるとは思えない。
 チートの存在が現実のものとして表社会に明らかになる前に現代社会に対応できるようなチートが必要なんだが、無差別にチートをばらまいた所で死なねえだろうしな。
 俺のチートにゃならない。むしろ発覚の時期が早まるだけだ。
 今は潜伏してリンクチートを鍛えつつ見付からないように祈るしかないのだ。

 ま、自分達から掲示板に色々と書き込んだけどね!
 ガチで馬鹿だな。俺らって……。

 落ち込みながらも続けた修行は、ホーリーバーストというプリースト系列が使える攻撃魔法を習得したところでお開きとなった。
 これで何とか一人でも普通にシンクロ率修行が出来る。ホーリーバーストはゾンビや幽霊といったアンデッド系統にしか効果がないけど。まあ、そこは墓場エリアを狩場にすればいいだけだ。問題なのはプレイヤーには無力だってとこだな。PKに狙われたらどうにもならない。
 ゲーム内では護衛を引き連れて歩くように注意するか。街中でも安全エリアじゃないからギルドホームに入るまでは気が抜けない。GvGの際には市街戦が始まるのがブレイブソルジャーでは常識だからな。ギルド戦はイベント時限定だけど、PKはいつでも可能だ。

【お姫ちん、急いでログアウトをしてくれ】

 ん、タラコ唇さんからギルドチャットで呼びかけられてるな。現実の身体に何かあったのか?
 現在地はもうギルドホームの目の前だ。元より解散しようとしていたとこだし、一足先に抜けさせて貰うか。

「それでは騎士様方、所用がありますのでお先に失礼させて頂きます」
「姫様に敬礼!」
「うーすっ」
「お疲れ様~」
「乙」
「晩飯どうすっかな。ゲーム飯を食ったばかりなんだが」
「肉体は栄養を補給してないから、食わないと餓死するぞ。気を付けろ」
「え、マジ?」

 ちょっと気になる情報を聞きながらログアウト処理とリバースリンクの解除を行う。
 ログアウトをすれば自動的にリバースリンクも解除されるからゲーム内にアバターがないのに意識だけは閉じ込められるなんて事態もない。
 こういう細かな部分は神様側が調整してくれてるのかね。サポートが行き届いてる感じがする。

 何時の間にか閉じていた瞼を開くと、目の前には自室から持ってきたデスクトップパソコンがあった。画面はブレイブソルジャーのログアウト直後だ。
 強張った身体を動かすと華奢な身体と長い金髪が視界に入る。ビスクドールのような綺麗な身体に未だに違和感を抱く時がある。
 確かめるように発した声だけはネカマをやってた頃と変わらない女声で安心する。つーか、男の身体でよく出せてたな。
 溜息を一つ吐くと、タラコ唇さんにログアウトを急かされた理由を聞こうと振り向いた。が、そこにあり得ない人影を見て硬直する。

「よ、タカ坊。ゲームは楽しかったか?」

 ニヤリと人の悪い笑みを浮かべて姉が立っていた。魂だけで。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

カジュアルセックスチェンジ

フロイライン
恋愛
一流企業に勤める吉岡智は、ふとした事からニューハーフとして生きることとなり、順風満帆だった人生が大幅に狂い出す。

【完結】【R18百合】女子寮ルームメイトに夜な夜なおっぱいを吸われています。

千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。 風月学園女子寮。 私――舞鶴ミサが夜中に目を覚ますと、ルームメイトの藤咲ひなたが私の胸を…! R-18ですが、いわゆる本番行為はなく、ひたすらおっぱいばかり攻めるガールズラブ小説です。 おすすめする人 ・百合/GL/ガールズラブが好きな人 ・ひたすらおっぱいを攻める描写が好きな人 ・起きないように寝込みを襲うドキドキが好きな人 ※タイトル画像はAI生成ですが、キャラクターデザインのイメージは合っています。 ※私の小説に関しては誤字等あったら指摘してもらえると嬉しいです。(他の方の場合はわからないですが)

【R18】無口な百合は今日も放課後弄ばれる

Yuki
恋愛
※性的表現が苦手な方はお控えください。 金曜日の放課後――それは百合にとって試練の時間。 金曜日の放課後――それは末樹と未久にとって幸せの時間。 3人しかいない教室。 百合の細腕は頭部で捕まれバンザイの状態で固定される。 がら空きとなった腋を末樹の10本の指が蠢く。 無防備の耳を未久の暖かい吐息が這う。 百合は顔を歪ませ紅らめただ声を押し殺す……。 女子高生と女子高生が女子高生で遊ぶ悪戯ストーリー。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

新 或る実験の記録

フロイライン
恋愛
人々を震撼させた国ぐるみの犯罪から十年 高校生の菅原乃亜は、期せずして闇深い事件に巻き込まれていく。

達也の女体化事件

愛莉
ファンタジー
21歳実家暮らしのf蘭大学生達也は、朝起きると、股間だけが女性化していて、、!子宮まで形成されていた!?

処理中です...