上 下
22 / 23

大団円(?)ハッピーエンドってこういうことよね!③

しおりを挟む
翌日。
お話ストーリーに沿う事ばかり気にしていたせいで、大事なことを忘れていた私は自己嫌悪に陥っていた。

そう、そうなんだよ、クリストファー様は私たち姉妹の事を知っているわけだから、何も逃げなくても良かったんじゃない。
ガラスの靴は落とすものと思っていたから、盲点だった~~~~!!!
この人生、最大のミス!!!
これでバッドエンドになってしまったら、どうするの~~~~!!!?
しかも、アナスタシアのプロポーズを見たことで、なんだかうやむやになってしまってエイダと話が出来ていないじゃない!!ばか!私のばかー!


朝から悶々としていたら、屋敷のドアをドンドン!と激しく叩く音が聞こえた。
はーい、とたまたまドアの近くにいた私が出ると、サミュエル様がやたら仰々しく立っている姿が目に入ってきた。


「あれ?サミー様???」


驚いて梨蘭の口調で呟いてしまった。
不躾な口調に、サミュエル様は面食らった顔をしている。


「大変失礼いたしました。近衛隊長様が当家にどういった御用でしょうか?」


カーテシーをして、失礼を詫びると後ろからクリストファー様の声が聞こえた。


「ドリゼラ様、エラはご在宅でしょうか?」

「これは、クリストファー様。ごきげんよう。」


もう一度カーテシーをして、深々と頭を下げる。


「ドリゼラ様。師であるあなたは、私に頭を下げる必要はないですよ。頭を上げてください。」

「ですが、私は一介の商人の娘です。王子様に無礼があっては・・・。」

「クリストファー様がこう言っていらっしゃるのだ。頭を上げよ。」


なぜか、ぶっきらぼうに付け足すようにサミュエル様が言うのがおかしくて、笑いをこらえながら顔を上げる。
良く見ると、ものすごい数の従者が控えているのが目に見えた。
クリストファー様の手には、赤い布とその上にガラスの靴。

これは・・・イベントキターーーーー!!!

心の中でガッツポーズをしながら、急いで家族全員を呼ぶ。
何か非礼があったのではないかと家族全員がおどおどしている中、クリストファー様がエラにプロポーズを行った。

エラは戸惑った表情でちらりと私の顔を見る。
どうしたらいいのか分からないのだろう。
人生初のプロポーズ。しかも、人との付き合いが希薄な恥ずかしがり屋のエラ。
でも、昨夜は確実にエラもクリストファー様との恋に落ちていた。

私は促すように頷くと、エラに耳打ちをする。


「エラの心の思うように。」


すると、エラは決心したかのようにクリストファー様の元へ一歩足を踏み出した。
ガラスの靴に足を入れ、二人は見つめ合う。
私がその感動的なシーンを脳裏に焼き付けようと凝視していると、エラが話をはじめた。


「ガラスの靴を拾ってくださってありがとうございます。クリストファー様。
 この靴は、お姉さまからいただいたこの世にひと揃えしかない、私だけの靴でしたの。
 姉は何年も私の為に奔走してくださいました。その恩を仇で返すところでしたわ。
 お申し出、有難くお受けいたします。」


その場がわっと沸いた。
義父とう様とお母さまは驚きながらも抱き合って喜び、アナスタシアは自分も昨夜プロポーズされたこともあり、それを思い出したのか「良かった」と、笑いながら泣き崩れる。
私も勝手に涙があふれてくる。この瞬間の為にこの10年近く本当に頑張ってきた。
お母さまを改心させたり、仲の良い姉妹であるよう自分を律して姉として頑張ったり、お義父様の死亡フラグを回避したり。
色々あったけど、今、全てが報われた気がした。


「ですが。」


ん?ですが?????


「私、クリストファー様のことを何も存じ上げません。ですから、まずは半年ほどきちんとしたお付き合いをしてくださいませんか?」

「真面目か!!!!!」


エラの仰天発言に、すかさずツッコミを入れてしまった。
私のツッコミによりその場は喜びの涙から笑いに変わってしまった。

正直、すっごい恥ずかしかったけど、でもエラの落としどころも悪くない。

そりゃそうだ。いくら相手が王子様とはいえ結婚を前提にお付き合いくらいしたいよね。
結婚したら皇太子妃なわけだし、軽々しく遊びになんていけないもんね。


それから先は、本当にとんとん拍子に話が進んで行った。
アナスタシアはパン屋に嫁ぎ、幸せな新婚生活を送っている。
私はエイダにきちんと恋愛感情がないことを伝え、お友達でいたいとお断りを入れた。
かなり泣かれたけど、今はもう仲の良い姉妹のような関係に戻っている。
エラは順調交際をしていたクリストファー様との正式な結婚が決まり、王城へと入る日取りも決まった。


「お姉さま、お話いいですか?」


王城に入る前日、エラが私の部屋を訪ねてきた。


「今まで、私のことを沢山支えてくださってありがとうございました。本当に・・・お姉さまには・・・。」

「嫌ですわ、エラ。泣かないで。私はあなたの姉ですもの。あなたの幸せが私の幸せですわ。」


抱き合ってしばらく泣いて、幼い頃の昔話をしながら二人で一緒のベッドで眠った。
ルシファーも遠慮がちだったけど、一緒に寝てくれた。

翌朝、王城から迎えの馬車が来て、エラは笑顔で旅立っていった。
エラを乗せた馬車が小さくなるまで、私とお母さまとお義父とう様の三人で肩を寄せ合って見送った。


「なんだか、一気に寂しくなったな。」


お義父様がぼそっと言うと、お母さまも同意する。


「まだ、私が居ますわ。私はこの家の長女ですから、きっちり家督を継ぎますわ!」

「それは心強い。ドリゼラが居て、私たちは幸せ者だな。」

「そうですわね、あなた。
 ですがドリゼラ。あなたももう良い年齢としですからお見合いでもして早く私たちを安心させてくれなくては。」

「あら、お母さま。女の幸せは結婚だけとは決まっていませんわ!」


私は次はあなたと結婚を迫るお母さまの言葉を交わして、その場を退散した。

さらに半年後。お城で盛大な結婚式が行われた。
エラはとてもキラキラと輝いていて、舞踏会の日が最上級だと思っていたのに軽々とその上を行く美しさを放っていた。
私はと言えば、小鳥に目をつつかれることもなく、素晴らしい結婚式を堪能して無事にハッピーエンドを見届けることができた。

エラの居ない日々は、少し物足りないけれど私にはルシファーがついていてくれるし。
商会のお仕事も王室御用達となったこともあり、今まで以上に忙しくなった。
毎日慌ただしいけれど、それなりに楽しい日々を送ることができている。


こうして、長い長い私のバッドエンド回避の日常は大団円で幕を閉じたのだった。
ハッピーエンド、最高!


----------------------------------------------------
あとがき
最後までお読みいただきありがとうございました。
現在、作品を好きでいてくださる方々より「続きを書いてほしい」と要望が複数寄せられたので続編を書いています。
ドリゼラとサミュエルのすれ違いストーリー。
お互いの目線で描かれているので、両方読めばお互いの心理描写が分かるので楽しめる内容となっています。
物語の先を歩むドリゼラをぜひ応援してください。

★ドリゼラ目線の話
溺愛したい意地悪な姉は難攻不落です!?
https://www.alphapolis.co.jp/novel/685039149/687790282
★サミュエル目線の話
魔力が少ない騎士団長は鉄壁の彼女を攻略したい~幸せへの道は彼女の攻略、だけじゃない!?~
https://www.alphapolis.co.jp/novel/685039149/410747172
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

王様とお妃様は今日も蜜月中~一目惚れから始まる溺愛生活~

花乃 なたね
恋愛
貴族令嬢のエリーズは幼いうちに両親を亡くし、新たな家族からは使用人扱いを受け孤独に過ごしていた。 しかし彼女はとあるきっかけで、優れた政の手腕、更には人間離れした美貌を持つ若き国王ヴィオルの誕生日を祝う夜会に出席することになる。 エリーズは初めて見るヴィオルの姿に魅せられるが、叶わぬ恋として想いを胸に秘めたままにしておこうとした。 …が、エリーズのもとに舞い降りたのはヴィオルからのダンスの誘い、そしてまさかの求婚。なんとヴィオルも彼女に一目惚れをしたのだという。 とんとん拍子に話は進み、ヴィオルの元へ嫁ぎ晴れて王妃となったエリーズ。彼女を待っていたのは砂糖菓子よりも甘い溺愛生活だった。 可愛い妻をとにかくベタベタに可愛がりたい王様と、夫につり合う女性になりたいと頑張る健気な王妃様の、好感度最大から始まる物語。 ※1色々と都合の良いファンタジー世界が舞台です。 ※2直接的な性描写はありませんが、情事を匂わせる表現が多々出てきますためご注意ください。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました

あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。 どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。

ユニコーン聖女は祈らない

下城米雪
ファンタジー
 人類は、魔物の脅威から国を護るため結界を作った。  この結界を維持できるのは「聖女」と呼ばれる特別な力を持った女性だけ。  平民として生まれたノエルは、聖女の力を持っていた。そのため王家に迎え入れられ、王子と婚約することになった。しかし彼女は、ふたつの大きな問題を抱えていた。  ひとつは平民であること。平民差別が蔓延っており、彼女と婚約した王子を始め多くの貴族が彼女を好ましく思っていなかった。もうひとつは、ノエルが女性を好み、彼女の師である先代の聖女から「ユニコーン聖女」と揶揄される程の変態であること。  ノエルは王子を好ましく思っている令嬢を唆し、国外追放されることに成功する。  その後、多くの美少女が集まるとされる国へ向かう途中、赤髪の少女と出会った。  少女の話を聞きノエルは提案をする。  それは二人の運命のみならず、国の未来をも大きく変えるものだった。

元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!

楠ノ木雫
恋愛
 貧乏な実家を救うための結婚だった……はずなのに!?  貧乏貴族に生まれたテトラは実は転生者。毎日身を粉にして領民達と一緒に働いてきた。だけど、この家には借金があり、借金取りである商会の商会長から結婚の話を出されてしまっている。彼らはこの貴族の爵位が欲しいらしいけれど、結婚なんてしたくない。  けれどとある日、奴らのせいで仕事を潰された。これでは生活が出来ない。絶体絶命だったその時、とあるお偉いさんが手紙を持ってきた。その中に書いてあったのは……この国の大公様との結婚話ですって!?  ※他サイトにも投稿しています。

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

悪役令嬢、第四王子と結婚します!

水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします! 小説家になろう様にも、書き起こしております。

処理中です...