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エンディング
【派生ルート】ハルエンド
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ギイイイイイ…………
中庭への扉が開く。かわいらしいピンクのドレスに身を包んだ私は、中庭の中央にお父様のエスコートで進む。
沢山の中に、名前の通り春の光のような笑顔でハルがこちらを見るのが見えた。なんだろう、緊張が解けてすごくほっこりする。
ほわほわ笑顔になった私は、集まった皆様へのスピーチを終えると、立食パーティーのテーブルを巡りながら、学友と語り合う。本当はみんなと話したかったけど、行く場所行く場所で捕まっちゃうのよ……トホホ。
今日は主役だから仕方ないかと沢山の人と話していたら、気付けば結構な時間が経っていたので驚く。
まだ招待したみんなと話せてないのに。
あちこち見回してみたけど、知った顔を見つけるのは至難の業のように思えた。
「うう、人が多いなあ。もうちょっと小規模だと思ってた」
ちょっと人に酔ったみたいで、気持ち悪くなってきた私は裏庭に避難する。裏庭にはベンチがあるし、流石に家人しか使わない場所だから誰も居ないはず。
屋敷の横を通り、裏庭に出ると先客が居た。
「……ハル!」
ちょっと具合が悪そうに見え、自分も気分が悪かったことを忘れて駆け寄る。
「なんだか顔色が悪くない? ハル、大丈夫?」
「うん、だいぶ良くなってきたところ。クロエさんもなんだか具合が良くないように見えるけど?」
「ちょっとだけ、人当たりしただけだから……少し休めば元気回復すると思う。今、ハルに会えたからだいぶ回復できたしね!」
サムズアップして大丈夫アピールをすると、ハルがクスクスと笑う。
なんていうか、本当に短髪にしたハルは程よく色気が出てかっこよくて、大人びて見える。
──クロエよりも年齢は上だから、十分大人なんだけど。
ハルの腰かけるベンチの隣に座ったら、意図せずハルの手の上に手が乗ってしまった。
「ごめんなさい」
慌てて手を離すと、ハルは困ったような笑みを浮かべている。
「どうしたの? ハル。やっぱり、具合悪いなら客間に案内しようか?」
「ううん、違う。そうじゃないんだ、クロエさん。ボク、やっぱり……」
そう言って、ハルはうつむいてしまった。次の言葉がなかなか出てこない。
ゆっくりとした時間が流れていく。なんだかもう言葉は出てこないのかな?と思って、私から静寂を破ることにした。
「うーん、だいぶ気分が良くなってきたー! ハルの隣は落ち着く。ね?」
ちらっとハルの方を見ると、ハルの頬が赤くなっているように見える。あれ? 熱でも出てる?
「ハル、やっぱり具合悪い? 熱でもある?」
自分のおでこに手を当て、ハルのおでこにも手を当てる。んー、ちょっと熱いかな?
「ち、違う! 違うんだよ、クロエさん。これはその……嬉しくて」
ハルは、おでこに置いた私の手を取ると、ギュッと握りしめて真っすぐに目を向けてくる。
静かな時は一瞬なはずなのに、スチルの時みたいにちょっと長く感じてしまうから不思議よね。
「そのピンク色のドレス、ボクが贈ったものなんだ。似合うと思って贈ったんだけど、やっぱりクロエさんにとっても良く似合う。選んでくれてすごく嬉しかったよ。
クロエさん……ボクは、あなたの事が心から好きです」
「ふぇ? え、す・好き?」
真剣なハルの凛々しい顔と声。いつもの可愛いイメージとはギャップが激しすぎる。
呆けた私の顔は、さっきのハルの比じゃないくらい真っ赤に染まっている。自覚はある、全身の血が顔に集まってるみたい。
「ふふ、その反応。少しはボクを異性として認めてくれているってことかな?」
いつものハルの表情は、ちょっと楽しそう。もしかして、私はからかわれたのかな?
「もう! ハルの意地悪。からかうなんてヒドイ!」
「からかってなんてないよ、意地悪でもない。ボクはクロエさんが好き。愛してる」
伝えてスッキリしたのか、もうハルの顔には迷いもなく晴れやかだ。さっきまでの緊張感が嘘のよう。ハルは穏やかないつものぽわーんとした空気を纏っている。
私は、どうだろう? こうしていつも精神面で私を助けてくれるハル。いつも弱音を吐く私を叱ってくれるハル。私にとって太陽のような温かさを持っているハル。
「ハル……ありがとうございます。私も、ハルのことは大好きです」
ハルの誠意に応えるために真っすぐハルを見る。ハルも真剣に受け止めようとしてくれているのが分かる。
「正直、まだ愛というのは良く分かりません。けれど、ハルとなら一緒に探せると思います」
「本当!? クロエさん! 嬉しい!」
私は握られたハルの手を、もう一方の空いていた方の手で握り返す。
私の返事と同時に、時間がフリーズして花が舞い散り、お互いの手を取り合うスチルが出現する。キャラクターボイスの声優が歌う恋愛エンディング曲「Colorful Love」が流れ、脳内に今までの出来事が走馬灯のように流れる。
まだ、始まったばかりの恋。
ハルとなら、ゆっくりでもきっと大きく育てていけると思う。
── ハルエンド 完 ──
初期設定:ハル(初期設定のため多少、小説の設定とは異なります)
中庭への扉が開く。かわいらしいピンクのドレスに身を包んだ私は、中庭の中央にお父様のエスコートで進む。
沢山の中に、名前の通り春の光のような笑顔でハルがこちらを見るのが見えた。なんだろう、緊張が解けてすごくほっこりする。
ほわほわ笑顔になった私は、集まった皆様へのスピーチを終えると、立食パーティーのテーブルを巡りながら、学友と語り合う。本当はみんなと話したかったけど、行く場所行く場所で捕まっちゃうのよ……トホホ。
今日は主役だから仕方ないかと沢山の人と話していたら、気付けば結構な時間が経っていたので驚く。
まだ招待したみんなと話せてないのに。
あちこち見回してみたけど、知った顔を見つけるのは至難の業のように思えた。
「うう、人が多いなあ。もうちょっと小規模だと思ってた」
ちょっと人に酔ったみたいで、気持ち悪くなってきた私は裏庭に避難する。裏庭にはベンチがあるし、流石に家人しか使わない場所だから誰も居ないはず。
屋敷の横を通り、裏庭に出ると先客が居た。
「……ハル!」
ちょっと具合が悪そうに見え、自分も気分が悪かったことを忘れて駆け寄る。
「なんだか顔色が悪くない? ハル、大丈夫?」
「うん、だいぶ良くなってきたところ。クロエさんもなんだか具合が良くないように見えるけど?」
「ちょっとだけ、人当たりしただけだから……少し休めば元気回復すると思う。今、ハルに会えたからだいぶ回復できたしね!」
サムズアップして大丈夫アピールをすると、ハルがクスクスと笑う。
なんていうか、本当に短髪にしたハルは程よく色気が出てかっこよくて、大人びて見える。
──クロエよりも年齢は上だから、十分大人なんだけど。
ハルの腰かけるベンチの隣に座ったら、意図せずハルの手の上に手が乗ってしまった。
「ごめんなさい」
慌てて手を離すと、ハルは困ったような笑みを浮かべている。
「どうしたの? ハル。やっぱり、具合悪いなら客間に案内しようか?」
「ううん、違う。そうじゃないんだ、クロエさん。ボク、やっぱり……」
そう言って、ハルはうつむいてしまった。次の言葉がなかなか出てこない。
ゆっくりとした時間が流れていく。なんだかもう言葉は出てこないのかな?と思って、私から静寂を破ることにした。
「うーん、だいぶ気分が良くなってきたー! ハルの隣は落ち着く。ね?」
ちらっとハルの方を見ると、ハルの頬が赤くなっているように見える。あれ? 熱でも出てる?
「ハル、やっぱり具合悪い? 熱でもある?」
自分のおでこに手を当て、ハルのおでこにも手を当てる。んー、ちょっと熱いかな?
「ち、違う! 違うんだよ、クロエさん。これはその……嬉しくて」
ハルは、おでこに置いた私の手を取ると、ギュッと握りしめて真っすぐに目を向けてくる。
静かな時は一瞬なはずなのに、スチルの時みたいにちょっと長く感じてしまうから不思議よね。
「そのピンク色のドレス、ボクが贈ったものなんだ。似合うと思って贈ったんだけど、やっぱりクロエさんにとっても良く似合う。選んでくれてすごく嬉しかったよ。
クロエさん……ボクは、あなたの事が心から好きです」
「ふぇ? え、す・好き?」
真剣なハルの凛々しい顔と声。いつもの可愛いイメージとはギャップが激しすぎる。
呆けた私の顔は、さっきのハルの比じゃないくらい真っ赤に染まっている。自覚はある、全身の血が顔に集まってるみたい。
「ふふ、その反応。少しはボクを異性として認めてくれているってことかな?」
いつものハルの表情は、ちょっと楽しそう。もしかして、私はからかわれたのかな?
「もう! ハルの意地悪。からかうなんてヒドイ!」
「からかってなんてないよ、意地悪でもない。ボクはクロエさんが好き。愛してる」
伝えてスッキリしたのか、もうハルの顔には迷いもなく晴れやかだ。さっきまでの緊張感が嘘のよう。ハルは穏やかないつものぽわーんとした空気を纏っている。
私は、どうだろう? こうしていつも精神面で私を助けてくれるハル。いつも弱音を吐く私を叱ってくれるハル。私にとって太陽のような温かさを持っているハル。
「ハル……ありがとうございます。私も、ハルのことは大好きです」
ハルの誠意に応えるために真っすぐハルを見る。ハルも真剣に受け止めようとしてくれているのが分かる。
「正直、まだ愛というのは良く分かりません。けれど、ハルとなら一緒に探せると思います」
「本当!? クロエさん! 嬉しい!」
私は握られたハルの手を、もう一方の空いていた方の手で握り返す。
私の返事と同時に、時間がフリーズして花が舞い散り、お互いの手を取り合うスチルが出現する。キャラクターボイスの声優が歌う恋愛エンディング曲「Colorful Love」が流れ、脳内に今までの出来事が走馬灯のように流れる。
まだ、始まったばかりの恋。
ハルとなら、ゆっくりでもきっと大きく育てていけると思う。
── ハルエンド 完 ──
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