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ゲーム終盤

【最終話】誕生日なので引きこもりたい!

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 ギイイイイイ…………

 中庭への扉が開く。
 私の目の前には、沢山の人・人・人……もちろん、招待したかった友人たちも全員が集まっていた。

 白のドレスに身を包んだ私は、後から聞いたらまるで花嫁みたいだったんだって。お父様のエスコートだから余計だったかも?

 中庭に出ると、みんなからお祝いの花びらシャワーを浴びてお誕生席までお父様のエスコートで移動した。これも後から考えたら余計に結婚式感を醸し出していたように思う。
 沢山のお料理の数々に、目を奪われた私の顔を満足そうに眺めているのは料理長。
 ここ数日ほどキッチンの様子がおかしかったのは、私に料理がバレないようにしていたんだって。
 なのにキッチンを貸して欲しいと私が足繁く来るものだから、途中で諦めて使用人用の厨房で料理開発をしていたんだとか。なんか予想してなかったところで迷惑をかけていたみたい。ごめんなさい。

 美味しい料理に舌鼓を打ちながら、料理の説明をひとしきり受けたあとは、楽しい歓談タイム。

 学友に囲まれて、色々とおしゃべりしていたらあっという間に数時間が経過していた。
 アメリアに「あとでお話があるの、裏庭に来てくれる?」と言われたのを皮切りに、クロム・ナイル・ガイウス・ハル・ルカ・ジーン・シモンと次々と「あとで話があるから裏庭に来て欲しい」というお誘いが……。

 まさか、これが恋愛エンディングってやつ?
 いやいやいやいや、全員呼び出しが裏庭ってどう言うことですか!!!
 行くとして、全員とかち合ったら破滅エンドになりませんか? 全員とバッドエンドになりませんか?

 そうは思ったけど、ちょっと展開が気になったからこっそりと裏庭の様子を探りに行ってみた。
 ステルスかければ誰からも分からなくない? 他の学友の皆様は気付いていらっしゃらないみたいだし成功かな?

 おかげで私の周りにいたとりまき・・・・の皆様をまんまと撒いて、裏庭をこっそり覗き込むことができた。

 あれあれ? なんだか全員がこそこそ集まってるみたい……? ステルスを解いて、声をかける。


「皆様、全員が私を呼び出すなんて……どうされましたの?」

「「「「「「「「クロエ (様orさん)!!!」」」」」」」」


 全員から名前を呼ばれると、流石に迫力がある。一糸乱れぬ呼吸がちょっと怖い。
 まさか、これやっぱりバッドエンドのルート? ドキドキしながら聞いてみる。


「何をされていましたの? まさか……全員で私を断ざ……」

「クロエ、これを見て!!」


 断罪と言いかけた私のセリフに、アメリアが興奮したように被せてくる。全員が手を指す方を見ると、そこには何かが布で覆い隠されている。


「ねえ、クロエ。これ、引いてみて!」


 アメリアの渡した謎紐を、思いっきり引っ張る。


「じゃじゃーん!」


 アメリアの掛け声とともに現れたそれを見て、私の時が一瞬止まる。


「ほら見ろ、やっぱり呆けちゃってンじゃねーか!」


 ジーンが茶化す。


「いや、でも兄上が……」


 ナイルはクロムのせいにするみたいだ。


「喜ぶだろうと思ったのだが……」


 本当に提案したのはクロムなのか、声がちっちゃい。


「僭越ながら、彼女の功績を考えればこれが一番だと思います」


 シモンの助け舟に、うんうんとルカが頷いている。


「お嬢様、これはそんなに気に入りませんか?」


 ガイウスが悲しそうにこっちを見ている。


「でも、最終的に全員でこれに決めたはずじゃ……」


 私の表情を見て、困惑したハルが全員を見る。


「ぷ、うふふふ、あはははははははは!!!!!」


 大声で笑う私を見て、全員がつられて大笑いする。
 そこにあったのは、私そっくりの等身大の像だった。


「誕生日プレゼント……これは凄いですわ!」

「でしょー? ここにいるみんなで慣れないなりに、最後に少しずつ掘りも入れたんだよー?」

「みんなの魂がこもっていますのね。嬉しいですわ! ありがとうございます」


 全員が私の為に何か出来ないかと考えてくれて、少しずつお金を出し合ってプロに依頼して、最後に仕上げで一人一本ずつ髪の部分を掘ってくれたそう。
 ううん、それだけじゃないのも分かった。像の台座にはみんなの名前が手彫りされているのが見えちゃった。


「心のこもったプレゼントをありがとう……嬉しい!」


 最初は何で像なのよと思ったけど、心がこもったプレゼント……。なんでもできる魔法の世界で、手作りというのは嬉しすぎる。
 そうか、みんなが私のお菓子を喜んでくれたのは手作りだったからなんだ。だから、余計に美味しいって喜んでくれたんだね。

 私がそれに気付いた時、その世界が一瞬フリーズして色とりどりの花が舞い散る。

 スチルだ。

 これが最後のスチル。全員との友情エンドを知らせるかのように、エンディング曲「Colorful Friend」が流れる。
 数々の名シーンが脳裏に浮かんでは消えていく。


 長いようで短い、私の友情エンドを目指したプレイが今日、これで終わる。
 

 ────ゲームが終わったら、引きこもりライフが満喫できるのね。


 そんなことを思った私の前に「END」と言う文字が現れる。エンドロールが終わったみたい。
 このあと、どうなるんだろう?
 オープニングで見た、暗転した世界でウエンディの声が響き渡る。


『クロエ様、このあともゲームを続けまスカ…………?』


  ▷はい|▷いいえ


 否応なしに出てくる選択肢。もちろん、私の選択は…………。


── 悪役令嬢は引きこもりたい 完 ──

初期設定:クロエ(初期設定のため多少、小説の設定とは異なります)
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