76 / 84
ゲーム終盤
【最終話】誕生日なので引きこもりたい!
しおりを挟む
ギイイイイイ…………
中庭への扉が開く。
私の目の前には、沢山の人・人・人……もちろん、招待したかった友人たちも全員が集まっていた。
白のドレスに身を包んだ私は、後から聞いたらまるで花嫁みたいだったんだって。お父様のエスコートだから余計だったかも?
中庭に出ると、みんなからお祝いの花びらシャワーを浴びてお誕生席までお父様のエスコートで移動した。これも後から考えたら余計に結婚式感を醸し出していたように思う。
沢山のお料理の数々に、目を奪われた私の顔を満足そうに眺めているのは料理長。
ここ数日ほどキッチンの様子がおかしかったのは、私に料理がバレないようにしていたんだって。
なのにキッチンを貸して欲しいと私が足繁く来るものだから、途中で諦めて使用人用の厨房で料理開発をしていたんだとか。なんか予想してなかったところで迷惑をかけていたみたい。ごめんなさい。
美味しい料理に舌鼓を打ちながら、料理の説明をひとしきり受けたあとは、楽しい歓談タイム。
学友に囲まれて、色々とおしゃべりしていたらあっという間に数時間が経過していた。
アメリアに「あとでお話があるの、裏庭に来てくれる?」と言われたのを皮切りに、クロム・ナイル・ガイウス・ハル・ルカ・ジーン・シモンと次々と「あとで話があるから裏庭に来て欲しい」というお誘いが……。
まさか、これが恋愛エンディングってやつ?
いやいやいやいや、全員呼び出しが裏庭ってどう言うことですか!!!
行くとして、全員とかち合ったら破滅エンドになりませんか? 全員とバッドエンドになりませんか?
そうは思ったけど、ちょっと展開が気になったからこっそりと裏庭の様子を探りに行ってみた。
ステルスかければ誰からも分からなくない? 他の学友の皆様は気付いていらっしゃらないみたいだし成功かな?
おかげで私の周りにいたとりまきの皆様をまんまと撒いて、裏庭をこっそり覗き込むことができた。
あれあれ? なんだか全員がこそこそ集まってるみたい……? ステルスを解いて、声をかける。
「皆様、全員が私を呼び出すなんて……どうされましたの?」
「「「「「「「「クロエ (様orさん)!!!」」」」」」」」
全員から名前を呼ばれると、流石に迫力がある。一糸乱れぬ呼吸がちょっと怖い。
まさか、これやっぱりバッドエンドのルート? ドキドキしながら聞いてみる。
「何をされていましたの? まさか……全員で私を断ざ……」
「クロエ、これを見て!!」
断罪と言いかけた私のセリフに、アメリアが興奮したように被せてくる。全員が手を指す方を見ると、そこには何かが布で覆い隠されている。
「ねえ、クロエ。これ、引いてみて!」
アメリアの渡した謎紐を、思いっきり引っ張る。
「じゃじゃーん!」
アメリアの掛け声とともに現れたそれを見て、私の時が一瞬止まる。
「ほら見ろ、やっぱり呆けちゃってンじゃねーか!」
ジーンが茶化す。
「いや、でも兄上が……」
ナイルはクロムのせいにするみたいだ。
「喜ぶだろうと思ったのだが……」
本当に提案したのはクロムなのか、声がちっちゃい。
「僭越ながら、彼女の功績を考えればこれが一番だと思います」
シモンの助け舟に、うんうんとルカが頷いている。
「お嬢様、これはそんなに気に入りませんか?」
ガイウスが悲しそうにこっちを見ている。
「でも、最終的に全員でこれに決めたはずじゃ……」
私の表情を見て、困惑したハルが全員を見る。
「ぷ、うふふふ、あはははははははは!!!!!」
大声で笑う私を見て、全員がつられて大笑いする。
そこにあったのは、私そっくりの等身大の像だった。
「誕生日プレゼント……これは凄いですわ!」
「でしょー? ここにいるみんなで慣れないなりに、最後に少しずつ掘りも入れたんだよー?」
「みんなの魂がこもっていますのね。嬉しいですわ! ありがとうございます」
全員が私の為に何か出来ないかと考えてくれて、少しずつお金を出し合ってプロに依頼して、最後に仕上げで一人一本ずつ髪の部分を掘ってくれたそう。
ううん、それだけじゃないのも分かった。像の台座にはみんなの名前が手彫りされているのが見えちゃった。
「心のこもったプレゼントをありがとう……嬉しい!」
最初は何で像なのよと思ったけど、心がこもったプレゼント……。なんでもできる魔法の世界で、手作りというのは嬉しすぎる。
そうか、みんなが私のお菓子を喜んでくれたのは手作りだったからなんだ。だから、余計に美味しいって喜んでくれたんだね。
私がそれに気付いた時、その世界が一瞬フリーズして色とりどりの花が舞い散る。
スチルだ。
これが最後のスチル。全員との友情エンドを知らせるかのように、エンディング曲「Colorful Friend」が流れる。
数々の名シーンが脳裏に浮かんでは消えていく。
長いようで短い、私の友情エンドを目指したプレイが今日、これで終わる。
────ゲームが終わったら、引きこもりライフが満喫できるのね。
そんなことを思った私の前に「END」と言う文字が現れる。エンドロールが終わったみたい。
このあと、どうなるんだろう?
オープニングで見た、暗転した世界でウエンディの声が響き渡る。
『クロエ様、このあともゲームを続けまスカ…………?』
▷はい|▷いいえ
否応なしに出てくる選択肢。もちろん、私の選択は…………。
── 悪役令嬢は引きこもりたい 完 ──
初期設定:クロエ(初期設定のため多少、小説の設定とは異なります)
中庭への扉が開く。
私の目の前には、沢山の人・人・人……もちろん、招待したかった友人たちも全員が集まっていた。
白のドレスに身を包んだ私は、後から聞いたらまるで花嫁みたいだったんだって。お父様のエスコートだから余計だったかも?
中庭に出ると、みんなからお祝いの花びらシャワーを浴びてお誕生席までお父様のエスコートで移動した。これも後から考えたら余計に結婚式感を醸し出していたように思う。
沢山のお料理の数々に、目を奪われた私の顔を満足そうに眺めているのは料理長。
ここ数日ほどキッチンの様子がおかしかったのは、私に料理がバレないようにしていたんだって。
なのにキッチンを貸して欲しいと私が足繁く来るものだから、途中で諦めて使用人用の厨房で料理開発をしていたんだとか。なんか予想してなかったところで迷惑をかけていたみたい。ごめんなさい。
美味しい料理に舌鼓を打ちながら、料理の説明をひとしきり受けたあとは、楽しい歓談タイム。
学友に囲まれて、色々とおしゃべりしていたらあっという間に数時間が経過していた。
アメリアに「あとでお話があるの、裏庭に来てくれる?」と言われたのを皮切りに、クロム・ナイル・ガイウス・ハル・ルカ・ジーン・シモンと次々と「あとで話があるから裏庭に来て欲しい」というお誘いが……。
まさか、これが恋愛エンディングってやつ?
いやいやいやいや、全員呼び出しが裏庭ってどう言うことですか!!!
行くとして、全員とかち合ったら破滅エンドになりませんか? 全員とバッドエンドになりませんか?
そうは思ったけど、ちょっと展開が気になったからこっそりと裏庭の様子を探りに行ってみた。
ステルスかければ誰からも分からなくない? 他の学友の皆様は気付いていらっしゃらないみたいだし成功かな?
おかげで私の周りにいたとりまきの皆様をまんまと撒いて、裏庭をこっそり覗き込むことができた。
あれあれ? なんだか全員がこそこそ集まってるみたい……? ステルスを解いて、声をかける。
「皆様、全員が私を呼び出すなんて……どうされましたの?」
「「「「「「「「クロエ (様orさん)!!!」」」」」」」」
全員から名前を呼ばれると、流石に迫力がある。一糸乱れぬ呼吸がちょっと怖い。
まさか、これやっぱりバッドエンドのルート? ドキドキしながら聞いてみる。
「何をされていましたの? まさか……全員で私を断ざ……」
「クロエ、これを見て!!」
断罪と言いかけた私のセリフに、アメリアが興奮したように被せてくる。全員が手を指す方を見ると、そこには何かが布で覆い隠されている。
「ねえ、クロエ。これ、引いてみて!」
アメリアの渡した謎紐を、思いっきり引っ張る。
「じゃじゃーん!」
アメリアの掛け声とともに現れたそれを見て、私の時が一瞬止まる。
「ほら見ろ、やっぱり呆けちゃってンじゃねーか!」
ジーンが茶化す。
「いや、でも兄上が……」
ナイルはクロムのせいにするみたいだ。
「喜ぶだろうと思ったのだが……」
本当に提案したのはクロムなのか、声がちっちゃい。
「僭越ながら、彼女の功績を考えればこれが一番だと思います」
シモンの助け舟に、うんうんとルカが頷いている。
「お嬢様、これはそんなに気に入りませんか?」
ガイウスが悲しそうにこっちを見ている。
「でも、最終的に全員でこれに決めたはずじゃ……」
私の表情を見て、困惑したハルが全員を見る。
「ぷ、うふふふ、あはははははははは!!!!!」
大声で笑う私を見て、全員がつられて大笑いする。
そこにあったのは、私そっくりの等身大の像だった。
「誕生日プレゼント……これは凄いですわ!」
「でしょー? ここにいるみんなで慣れないなりに、最後に少しずつ掘りも入れたんだよー?」
「みんなの魂がこもっていますのね。嬉しいですわ! ありがとうございます」
全員が私の為に何か出来ないかと考えてくれて、少しずつお金を出し合ってプロに依頼して、最後に仕上げで一人一本ずつ髪の部分を掘ってくれたそう。
ううん、それだけじゃないのも分かった。像の台座にはみんなの名前が手彫りされているのが見えちゃった。
「心のこもったプレゼントをありがとう……嬉しい!」
最初は何で像なのよと思ったけど、心がこもったプレゼント……。なんでもできる魔法の世界で、手作りというのは嬉しすぎる。
そうか、みんなが私のお菓子を喜んでくれたのは手作りだったからなんだ。だから、余計に美味しいって喜んでくれたんだね。
私がそれに気付いた時、その世界が一瞬フリーズして色とりどりの花が舞い散る。
スチルだ。
これが最後のスチル。全員との友情エンドを知らせるかのように、エンディング曲「Colorful Friend」が流れる。
数々の名シーンが脳裏に浮かんでは消えていく。
長いようで短い、私の友情エンドを目指したプレイが今日、これで終わる。
────ゲームが終わったら、引きこもりライフが満喫できるのね。
そんなことを思った私の前に「END」と言う文字が現れる。エンドロールが終わったみたい。
このあと、どうなるんだろう?
オープニングで見た、暗転した世界でウエンディの声が響き渡る。
『クロエ様、このあともゲームを続けまスカ…………?』
▷はい|▷いいえ
否応なしに出てくる選択肢。もちろん、私の選択は…………。
── 悪役令嬢は引きこもりたい 完 ──
初期設定:クロエ(初期設定のため多少、小説の設定とは異なります)
0
お気に入りに追加
125
あなたにおすすめの小説
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
公爵令嬢は薬師を目指す~悪役令嬢ってなんですの?~【短編版】
ゆうの
ファンタジー
公爵令嬢、ミネルヴァ・メディシスは時折夢に見る。「治癒の神力を授かることができなかった落ちこぼれのミネルヴァ・メディシス」が、婚約者である第一王子殿下と恋に落ちた男爵令嬢に毒を盛り、断罪される夢を。
――しかし、夢から覚めたミネルヴァは、そのたびに、思うのだ。「医者の家系《メディシス》に生まれた自分がよりによって誰かに毒を盛るなんて真似をするはずがないのに」と。
これは、「治癒の神力」を授かれなかったミネルヴァが、それでもメディシスの人間たろうと努力した、その先の話。
※ 様子見で(一応)短編として投稿します。反響次第では長編化しようかと(「その後」を含めて書きたいエピソードは山ほどある)。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
婚約破棄は踊り続ける
お好み焼き
恋愛
聖女が現れたことによりルベデルカ公爵令嬢はルーベルバッハ王太子殿下との婚約を白紙にされた。だがその半年後、ルーベルバッハが訪れてきてこう言った。
「聖女は王太子妃じゃなく神の花嫁となる道を選んだよ。頼むから結婚しておくれよ」
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる