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ゲーム中盤

やること盛りだくさんで引きこもれない!①

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 翌朝、まだ外が暗いうちに起きてキッチンを目指す。
 桃がどれくらい仕上がったのか気になって、ワクワクしすぎて目が早く覚めてしまった。
 まだキッチンには使用人は出てきていないので、気兼ねなくお菓子作りに精を出せそうだ。

 冷蔵庫を開けると、昨日の夜頑張って掃除をしたらしく中身が綺麗に整えられていた。


「私のゼリーのスペースを空けるために無理させちゃったのかな、申し訳ないな」


 少々特攻が過ぎたことを反省しながら、桃の入った容器を取り出す。
 桃の皮と一緒に煮込んだので、白かった果肉が桃色に染まって「今すぐ私を食べて!」と言っているくらいつややかな見た目だ。
 ひとつ味見!とつまむと、しっかりシロップの甘さを吸い込んで、生の時より柔らかくなっていた。


 しっかり食べ応えがあるので、これはこれでいいかも!


 桃の缶詰とまではいかないけれど、まあまあの出来に思わず笑みがこぼれる。
 桃を漬けていたシロップをそのままゼリーとして固める予定なのだけど、甘すぎないか気になったのでこちらも味見。
 甘すぎるということはない、けどちょっと物足りない。


 うーん、これは少しお酒の香りを付けると良いかも? 何かあったかな?


 キッチンをざっと見渡すと、香りづけ用の白ワインが目に入ったので、それを煮立ったシロップにほんの少し入れる。
 ほんの少し……のつもりだったのに、ちょっとドバっと行っちゃった。うん、大丈夫なはず! アルコールは熱で飛ぶから!!!
 味見をすると、ドバっと入った割にほんのりとした柔らかい香りがプラスされて、物足りなさは無くなっていた。
 ゼラチン代わりの食材を入れて良くかきまわし、冷める前に器に盛りつけた桃の上から流し込む。
 少し冷ましてから冷蔵庫へイン!
 これで学問所へ出かける前にはちょうどいい感じに出来上がっていると思う。

 満足な出来にウキウキしながら、部屋に戻ろうとすると使用人たちが丁度朝食の準備にキッチンへやってきた。


「おはようございます。キッチンをお借りしましたわ。昨夜はお片付けありがとうございます。丁寧な仕事ぶりに感心しましたわ」


 使用人に声をかけると、なんだか顔を紅潮させて慌てている様子。
 どうしたのと聞くと「私どももいつも美味しいお菓子と労いのお言葉をありがとうございます! お嬢様!!!」と、緊張した声で答えそのままキッチンの中へ走り去って行った。
 走って逃げる姿に軽く傷ついてしまったけど、私の記憶の前のクロエが頭をよぎる。
 もしかしたら、まだ私の意識が戻る前のクロエとダブっているのかもしれない。
 両親もまだ少し困惑しているようだし、まして使用人に今の私にすぐ慣れろというのは酷なことかもしれない。


 もっと頑張って認めてもらえるようにならなくては!


 気合いを入れ直し、自室に戻って学問所の準備と着替えをする。
 朝食の時間まではしばらくあるので、たまにはメッセージカードを添えるのもいいかな?と言うことで、親密度を上げたい三人に向けたメッセージカードを作ることにした。
 この前画材屋で見つけたお洒落な紙に「いつもありがとう。これからもよろしくね!」というすごく質素だけど、ストレートな言葉を書く。飾り枠を色鉛筆で描いて、角に穴をあけてリボンを通す。


 これで少しはお洒落に見えるかな?


 メッセージカードの出来も悪くないと思うので、ラッピング用の箱に添えておく。
 あとは朝食後にゼリーを箱に詰めれば問題ない。
 準備が済んだ頃には、朝食の時間となっていたので部屋を出ると、ガイウスがうやうやしく待ち受けていて、エスコートしてくれる。


「お嬢様、今朝はまた変わった物をお作りになったようですね」

「何故あなたがご存知なのかしら」

「私はお嬢様の事なら何でも存じ上げております」

「今回はあなたのぶんはありませんわよ、何せ貴重な果実を使ったものだから数を作れなかったの」


 ガイウスがエスコートしてくれている手がピクリと動いたのを、私は見逃していない。
 そんなに食べたかったのか……でも、ガイウスにはしばらく大人しくしていてもらわないと困る。恋愛イベントが発生してしまうと、なし崩し的にそのまま強制恋愛エンディングになってしまう。
 それだけは避けたい。せっかく全員の好感度を500以上にした私の苦労が報われない。
 でも、捨てられた子犬のような目をしたガイウスの期待を裏切るなんて……。


「こほん。まあ、あなたが今日いい子にしている約束ができるなら、朝食後にキッチンにいらっしゃい。使用人たちと分けるから、ひと口くらいは食べられるかもしれませんわ」

「はいっ!!! 今日は軽口を一切言わず、お嬢様のお言いつけをしっかり守ります!」


 今までに聞いたこともない良い返事をするガイウスが、なんだかおかしくて笑ってしまったけど、当人はそんなことを気にする様子もなく、さっきまでしょぼくれていたのに、もうウキウキしている。
 私がそう見えるだけかもしれないけど、喜んでもらえるのは素直に嬉しい。
 そう思えるようになったのは、私の心にも少し余裕が出てきたからかもしれない。
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