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ゲーム中盤
この展開は考えてなかったので引きこもりたい②
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「まさか、ショートカットしてくるなんて思っていませんでしたわ!」
人間の五倍くらいはありそうな巨体が斧を振り下ろし、自身が通れるよう壁を壊している。ミノタウロスは実際に見ると迫力が違う。内心「ひええ」だ。
「不意打ちなんて、やるねぇ!」
「クロエ! 俺の後ろに!!」
動揺しながらも、私を庇って前に立ちはだかってくれるジーンとナイルに感動しつつ、どちらにしろ対峙しないといけない相手なので、私も戦闘態勢を取る。
シモンは全員の盾になる恰好で既に剣を構えている。
私は全員に防御魔法をかけ、距離を取ってミノタウロスとみんなの動きを観察する。邪魔にならないように少し距離を置いて適度にアシスト。
前世でモンスターを倒すオンラインゲームをちょっとだけでもかじっておいて、本当に良かったと思う。あんまり立ち回りが上手くなくて基本的にアシスト中心だった私は、仲間がHPを削られる前に癒しアイテムを使って皆を回復させながら、隙を見てボウガンを撃っていた。
今回もそのゲームの要領で立ち回れば、きっとうまく連携が取れると思う。
できれば、本物のPeak of Colorful Loveみたいに横スクロールでターン型の戦い方であってほしかったけど、今の私にとってこの世界は現実なので、そう簡単にはいかないことは以前の討伐や捕獲で学んだ。
壁を崩して出てきたミノタウロスは、咆哮をあげるとシモンに向かって斧を振り下ろした。
シモンは後方に飛んでその一撃をかわす。
ミノタウロスが次の攻撃に移る前に、ジーンが火魔法を展開しミノタウロスを攻撃。
ナイルがその隙をついてミノタウロスの足下まで走り込み、足に攻撃を入れる。
連携が上手い!
手に汗握る展開に思わずワクワクしてしまう。
負けていられないので、私も矢系の魔法を展開してミノタウロスにぶつける。
ミノタウロスは闇・地の二つの属性を持つ。私は水系の属性を持っていないので、光系統と風系統魔法を中心に展開する。
事前にミノタウロスは闇属性で混乱系魔法が効きにくいことを学習してあったけど、巨大なくせに動きが早くて結構厄介。やっぱり混乱系が効く相手の方が何倍も戦いやすいと思う。
とにかく角を回収しないといけないので、頭への攻撃は極力避けないと……って、あれ? 頭を傷つけなきゃいいのか。
「皆さま、一旦退いてくださいませ。大魔法を使いますわ!」
私は風魔法を極限まで薄く引き伸ばし、自分の頭上に展開する。
「げっ、何をする気だ、お嬢さん!?」
それを見てただ事じゃないと全員私の方へ走ってくる。
全員の避難を確認して、その薄い風をミノタウロスの胴体に向けて、フリスビーのように投げつける。
「ウインドカッター!」
風で出来た鋭い刃がミノタウロスの上半身と下半身を真っ二つに切り裂いた。咆哮を上げる暇もなくミノタウロスの上半身はすべり落ちる。
司令塔である頭を失った下半身は血を噴き上げ、その場に立ったままの状態だ。
血まみれでちょっとグロいけど、これなら角を傷つけずに持ち帰ることが出来る。
えっと、殿方三人の口があんぐりしているのはきっと気のせい。
倒したモンスターは、一定時間が経過すると砂のようになって消えてしまう。早く角を取らないとアイテム取得ができなくなる。
「角はどうやって落とせばいいかしら?」
私の言葉に我に返ったシモンが「私がやろう」と名乗りを上げてくれたので、一体目の角を回収することができた。
近くでミノタウロスを見ると、左手の親指の爪が剥げているように見えた。
「ねえ、見てくださらない? どうしてここだけ爪が剥げているのかしら?」
「さあな? わざわざ倒したモンスターの事を観察するなんて、お嬢さんはなかなか肝が据わってんなぁ!」
「モンスターの部位は売れます。もしかしたら、他の冒険者がクエストで爪を収集したのかもしれませんね」
ミノタウロスの血で汚れた手を拭きながら、シモンが答えてくれる。
「では、ついでに爪も持って帰りますか? 何かの役に立つかもしれませんし」
「クロエ、それは無理だ。宝箱から出た物と依頼部位、ドロップアイテム以外はここから外に出たら消えてしまうからな。そういう理だ」
「そうでしたか。では、今回は持って帰れませんね」
ゲーム内ルールだから仕方がないかと残念がっていると、サラサラとミノタウロスの身体が砂になって消えはじめた。
「それよりも、だ。お嬢さんはどれだけ底が知れねえんだ? さっきのは普通のウインドカッターの比じゃなかったぜ?」
「私も長年討伐には参加しておりますが、あのような規模のウインドカッターは見たことがありません。せいぜい表面に傷をつける程度です。熟練した者は同じ部位に連撃を入れダメージを上げますが……それもかなり上手く扱わないと出来ない技です」
「ちょっと、昔読んだ書籍をヒントに構成と威力を変えてみましたの。上手く行って良かったですわ。ほほほほほ」
某有名漫画の技を真似したと言ったところで通じないので、適当に誤魔化す。
「風魔法なら、俺にも習得できるかな?」
ナイルは何だかスイッチが入ったみたいにワクワクしている。いつもなら誤魔化すときの口調だとツッコミが入るのに、それどころか私に魔法の展開方式を聞いてくる始末だ。
ルートに戻る道すがら教えると約束して再度索敵を展開し、もう一匹のミノタウロスの位置を確認する。
新しいミノタウロスが一体増えているのが見える。
「三体目のミノタウロスが出現したようですわ。宝箱から何か良いアイテムが出るかもしれませんし、念のため宝箱の回収を先にしてしまいましょう」
近くにある宝箱は二つ。ミノタウロスが近づく前に回収しておきたいので、階段の前を突っ切って一番近い宝箱のある場所へ急ぐ。
次の宝箱の中には、傷薬と毒消し薬、魔力回復薬、薄い三日月型の何か、毛皮のようなもの、レベルアップ薬、魔力上限アップ薬、体力上限アップ薬が入っていた。
お宝というようなものが入っていなかったので、ジーンはあからさまにガッカリしていた。
私は薄い三日月型の何かが気になったのでこれが欲しいと言うと、それを取る代わりにこれも飲め!と半ば強引に魔力回復薬を飲まされてしまった。
ナイルはレベルアップ薬を、ジーンは魔力上限アップ、シモンは体力上限アップをそれぞれ飲んでパワーアップを図る。
残りの回復薬はそれぞれが振り分けて持ち、毛皮のようなものは売れそうとのことでジーンが引き取った。
宝箱から離れようとすると、さっきと同じようにミノタウロスが襲ってきた。
次のミノタウロスは、体力回復やレベルアップをした直後だったこともあり、私のアシストもそこそこに三人があっさり倒してしまった。
私の簡単な説明だけで、威力の高いウインドカッターを習得してしまったナイルが、技を試してきっちりミノタウロスを縦に真っ二つにしたことが一番の貢献だった。
レベルアップしたとはいえ、魔法のセンスは流石だと思う。
「すごいですわ! 三人の連携、お見事です!
あら? このミノタウロスは目が片方潰れていますのね? 今の戦闘でついたものではなさそうですけれど」
「本当だな。さっきのミノタウロスも爪が無かったんだろう?」
「あ、もしかしたらこれ……」
私はさっきの宝箱から出てきた赤い宝石を取り出す。
「今の宝箱から出てきた三日月型の何か、ミノタウロスの爪によく似ていますわ。この丸いルビーのような宝石は、もしかしてこのミノタウロスの目でしょうか?
もしかしたら、お互いの身体の一部を守っていたのかもしれませんわね?」
「確かに、宝箱を開けた途端に俺たちを襲ってきた理由としては十分あり得るな」
「という事は、最後のミノタウロスも何かを守っているかもしれませんわね?」
「お嬢さん! ってことは、このフロアの宝箱は全部開けて良いと言うことカナ~?」
ジーンが明らかなもみ手ですり寄ってきたので「そうなりますわね」と伝えると、ジーンはやたらやる気をみなぎらせている。
推しに頼まれたら嫌とは言えません!!
二体目のミノタウロスの角も回収し、もう一度全員で地図で宝箱の位置を確認しながら効率の良い回り方を考える。
三体目のミノタウロスの位置を確認しながら進むことに決まったので、隠密をやめてできるだけ広範囲の索敵を展開しながら進むことになった。
人間の五倍くらいはありそうな巨体が斧を振り下ろし、自身が通れるよう壁を壊している。ミノタウロスは実際に見ると迫力が違う。内心「ひええ」だ。
「不意打ちなんて、やるねぇ!」
「クロエ! 俺の後ろに!!」
動揺しながらも、私を庇って前に立ちはだかってくれるジーンとナイルに感動しつつ、どちらにしろ対峙しないといけない相手なので、私も戦闘態勢を取る。
シモンは全員の盾になる恰好で既に剣を構えている。
私は全員に防御魔法をかけ、距離を取ってミノタウロスとみんなの動きを観察する。邪魔にならないように少し距離を置いて適度にアシスト。
前世でモンスターを倒すオンラインゲームをちょっとだけでもかじっておいて、本当に良かったと思う。あんまり立ち回りが上手くなくて基本的にアシスト中心だった私は、仲間がHPを削られる前に癒しアイテムを使って皆を回復させながら、隙を見てボウガンを撃っていた。
今回もそのゲームの要領で立ち回れば、きっとうまく連携が取れると思う。
できれば、本物のPeak of Colorful Loveみたいに横スクロールでターン型の戦い方であってほしかったけど、今の私にとってこの世界は現実なので、そう簡単にはいかないことは以前の討伐や捕獲で学んだ。
壁を崩して出てきたミノタウロスは、咆哮をあげるとシモンに向かって斧を振り下ろした。
シモンは後方に飛んでその一撃をかわす。
ミノタウロスが次の攻撃に移る前に、ジーンが火魔法を展開しミノタウロスを攻撃。
ナイルがその隙をついてミノタウロスの足下まで走り込み、足に攻撃を入れる。
連携が上手い!
手に汗握る展開に思わずワクワクしてしまう。
負けていられないので、私も矢系の魔法を展開してミノタウロスにぶつける。
ミノタウロスは闇・地の二つの属性を持つ。私は水系の属性を持っていないので、光系統と風系統魔法を中心に展開する。
事前にミノタウロスは闇属性で混乱系魔法が効きにくいことを学習してあったけど、巨大なくせに動きが早くて結構厄介。やっぱり混乱系が効く相手の方が何倍も戦いやすいと思う。
とにかく角を回収しないといけないので、頭への攻撃は極力避けないと……って、あれ? 頭を傷つけなきゃいいのか。
「皆さま、一旦退いてくださいませ。大魔法を使いますわ!」
私は風魔法を極限まで薄く引き伸ばし、自分の頭上に展開する。
「げっ、何をする気だ、お嬢さん!?」
それを見てただ事じゃないと全員私の方へ走ってくる。
全員の避難を確認して、その薄い風をミノタウロスの胴体に向けて、フリスビーのように投げつける。
「ウインドカッター!」
風で出来た鋭い刃がミノタウロスの上半身と下半身を真っ二つに切り裂いた。咆哮を上げる暇もなくミノタウロスの上半身はすべり落ちる。
司令塔である頭を失った下半身は血を噴き上げ、その場に立ったままの状態だ。
血まみれでちょっとグロいけど、これなら角を傷つけずに持ち帰ることが出来る。
えっと、殿方三人の口があんぐりしているのはきっと気のせい。
倒したモンスターは、一定時間が経過すると砂のようになって消えてしまう。早く角を取らないとアイテム取得ができなくなる。
「角はどうやって落とせばいいかしら?」
私の言葉に我に返ったシモンが「私がやろう」と名乗りを上げてくれたので、一体目の角を回収することができた。
近くでミノタウロスを見ると、左手の親指の爪が剥げているように見えた。
「ねえ、見てくださらない? どうしてここだけ爪が剥げているのかしら?」
「さあな? わざわざ倒したモンスターの事を観察するなんて、お嬢さんはなかなか肝が据わってんなぁ!」
「モンスターの部位は売れます。もしかしたら、他の冒険者がクエストで爪を収集したのかもしれませんね」
ミノタウロスの血で汚れた手を拭きながら、シモンが答えてくれる。
「では、ついでに爪も持って帰りますか? 何かの役に立つかもしれませんし」
「クロエ、それは無理だ。宝箱から出た物と依頼部位、ドロップアイテム以外はここから外に出たら消えてしまうからな。そういう理だ」
「そうでしたか。では、今回は持って帰れませんね」
ゲーム内ルールだから仕方がないかと残念がっていると、サラサラとミノタウロスの身体が砂になって消えはじめた。
「それよりも、だ。お嬢さんはどれだけ底が知れねえんだ? さっきのは普通のウインドカッターの比じゃなかったぜ?」
「私も長年討伐には参加しておりますが、あのような規模のウインドカッターは見たことがありません。せいぜい表面に傷をつける程度です。熟練した者は同じ部位に連撃を入れダメージを上げますが……それもかなり上手く扱わないと出来ない技です」
「ちょっと、昔読んだ書籍をヒントに構成と威力を変えてみましたの。上手く行って良かったですわ。ほほほほほ」
某有名漫画の技を真似したと言ったところで通じないので、適当に誤魔化す。
「風魔法なら、俺にも習得できるかな?」
ナイルは何だかスイッチが入ったみたいにワクワクしている。いつもなら誤魔化すときの口調だとツッコミが入るのに、それどころか私に魔法の展開方式を聞いてくる始末だ。
ルートに戻る道すがら教えると約束して再度索敵を展開し、もう一匹のミノタウロスの位置を確認する。
新しいミノタウロスが一体増えているのが見える。
「三体目のミノタウロスが出現したようですわ。宝箱から何か良いアイテムが出るかもしれませんし、念のため宝箱の回収を先にしてしまいましょう」
近くにある宝箱は二つ。ミノタウロスが近づく前に回収しておきたいので、階段の前を突っ切って一番近い宝箱のある場所へ急ぐ。
次の宝箱の中には、傷薬と毒消し薬、魔力回復薬、薄い三日月型の何か、毛皮のようなもの、レベルアップ薬、魔力上限アップ薬、体力上限アップ薬が入っていた。
お宝というようなものが入っていなかったので、ジーンはあからさまにガッカリしていた。
私は薄い三日月型の何かが気になったのでこれが欲しいと言うと、それを取る代わりにこれも飲め!と半ば強引に魔力回復薬を飲まされてしまった。
ナイルはレベルアップ薬を、ジーンは魔力上限アップ、シモンは体力上限アップをそれぞれ飲んでパワーアップを図る。
残りの回復薬はそれぞれが振り分けて持ち、毛皮のようなものは売れそうとのことでジーンが引き取った。
宝箱から離れようとすると、さっきと同じようにミノタウロスが襲ってきた。
次のミノタウロスは、体力回復やレベルアップをした直後だったこともあり、私のアシストもそこそこに三人があっさり倒してしまった。
私の簡単な説明だけで、威力の高いウインドカッターを習得してしまったナイルが、技を試してきっちりミノタウロスを縦に真っ二つにしたことが一番の貢献だった。
レベルアップしたとはいえ、魔法のセンスは流石だと思う。
「すごいですわ! 三人の連携、お見事です!
あら? このミノタウロスは目が片方潰れていますのね? 今の戦闘でついたものではなさそうですけれど」
「本当だな。さっきのミノタウロスも爪が無かったんだろう?」
「あ、もしかしたらこれ……」
私はさっきの宝箱から出てきた赤い宝石を取り出す。
「今の宝箱から出てきた三日月型の何か、ミノタウロスの爪によく似ていますわ。この丸いルビーのような宝石は、もしかしてこのミノタウロスの目でしょうか?
もしかしたら、お互いの身体の一部を守っていたのかもしれませんわね?」
「確かに、宝箱を開けた途端に俺たちを襲ってきた理由としては十分あり得るな」
「という事は、最後のミノタウロスも何かを守っているかもしれませんわね?」
「お嬢さん! ってことは、このフロアの宝箱は全部開けて良いと言うことカナ~?」
ジーンが明らかなもみ手ですり寄ってきたので「そうなりますわね」と伝えると、ジーンはやたらやる気をみなぎらせている。
推しに頼まれたら嫌とは言えません!!
二体目のミノタウロスの角も回収し、もう一度全員で地図で宝箱の位置を確認しながら効率の良い回り方を考える。
三体目のミノタウロスの位置を確認しながら進むことに決まったので、隠密をやめてできるだけ広範囲の索敵を展開しながら進むことになった。
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