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ゲーム中盤
シリアス展開は守備範囲外なので引きこもりたい①
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魔法局を出たのは、午後三時を過ぎたくらい。
このままハルのお店がある公園まではゆっくり歩いて三十分くらいだ。
川沿いに飲食エリアを早歩きで通り過ぎる。
飲食エリアは誘惑が多いから、早歩きが精神衛生上良いのよね。それに、流石に早くしないと保冷バッグの中の氷が溶けかけてきているから、正直焦ってる。
魔法の氷はやたら長持ちするけど、流石にそろそろ限界みたい。
途中で「誰がどこにいるか分かるMAP」を確認してみたけど、ガイウスは一向に姿を現さないし、そこまで体調が悪いのかな?と気になる。
ハルのお店に到着すると、ハルは笑顔で迎え入れてくれた。
「約束通り来てくれてありがとう、クロエさん!」
「ハル、こんにちは。私が来たいと言ったのですから当たり前ですわ」
店内の休憩スペースに通してくれたので、心配をかけたお詫びのゼリーを渡す。
「なあに、これ。すごく冷たいね?」
「ふふ、箱を開けてみて?」
「わっ! ぷるぷるしててとっても綺麗~! これは何?」
「ゼリーと言うお菓子です。ご心配かけたお詫びなんだけど、食べてくれる?」
「うん! これ、お皿に乗せたらもっとカワイイよね。ちょっとまってて!」
流石はハル。カワイイに妥協を許さないところがスゴイ!
ハルが持ってきたガラスの器は夜の空の色で、そこに乗せたゼリーは窓から入ってくる陽の光を浴びてキラキラ輝いている。
「わあ、凄くいい! 映える!!」
「? 映える? それも神の国の言葉?」
「あ、映えはわからないんだ……うーんと、ものすごく見た目がいい感じってコトかな?」
「うん、この食べ物にはこの器が絶対合うと思ったんだ~! すごくいい!
じゃあ、いただきまーす!」
ひとくち食べたハルは、目を丸くしている。
甘さと酸味のある果実を使ったゼリーは、飲み込む瞬間に爽やかな香りが鼻孔をくすぐっていく。
「すごく美味しい! こんな不思議な食感の食べ物、はじめてかも!」
あっという間に食べ進めたハルは、最後のひとくちのスプーンを口につけたまま、名残惜しそうにしている。
「お口に合ってよかった!」
「多分これ、嫌いな人居ないと思う。甘さも控えめだし、クロエさんはお菓子作りの腕が上がったんじゃない?」
「そうかな? たまたま使った果実が良かっただけだと思うけど」
ハルが、いきなり「がしっ」と私の両手を取り、真剣な目で見つめてくる。
え? ナニナニ?? イベント発生? と思ったら……
「前から思っていたんだけど、お菓子をこの店の一角で売らない? 絶対売れると思うんだよね!」
勧誘だった。
感動してくれるくらい美味しかったんだと思うと嬉しくなる半面、売るのはどうかと思ってしまう。調理師免許もないし。
「せっかくですけど、私のお菓子作りは趣味なので。毎回同じように出来上がるわけじゃないし、お店はちょっと難しいかも?」
「そっか」
あからさまにガッカリするハルに、私は自分の特別な人が喜んでくれるならそれでいいと伝えると、元気復活して笑顔になってくれた。
「そうだ! お礼に占いしてあげるね!」
そう言うと、ハルは店の奥からカードを持ってきた。
ピークカードというこの王国に古くから伝わる占い用のカードで、予言みたいに当たるらしい。
カードをシャッフルしたあと、机の上に並べて真剣にめくっていくハル。
ちょっと顔がしかめっ面に見えるのは、気のせいよね?
「クロエさん、あなたのことを大切に想っている人が沢山いるね。
本当に素敵な女性だから仕方ないけど、ボクとしては何だかちょっとモヤモヤしちゃうなぁ。
どうやら、その中の一人にトラブルが発生してるみたいだよ」
「ええ~? 誰だろう? どんなトラブル?」
「今、とても苦しんでるみたいだ。ほら、このカード。男に蛇が巻き付いているでしょ? これは毒という意味でもあるんだ」
そう言いながら、ハルはもう一枚カードを引く。
「どうやら、クロエさんの身近な存在の人みたいだけど……」
またカードを何枚か引き、ハルは続ける。
「トラブルの種類は分からないけど、何か大きなものと闘ったようだ。このままでは命の危険もあるかもしれない。何か心当たりはない?
例えば、急に連絡が取れなくなった人とかいないかな?」
私の身近にいて、命に係わるような何かのトラブルに巻き込まれそうで、絶賛連絡が取れない男を私は知っている。
ガイウス。
「何か思い当たるみたいだね。クロエさん? 大丈夫?」
顔がどんどん青ざめていく私を見て、ハルは私をのぞき込んだ。
「ええ、今朝から私の執事と連絡が取れていなくて。急に休みたいと言ってきたみたいで……ひょっとしたらと思ったら……」
「しっかりして、クロエさん。これは占いですから、百発百中とはいきません。ですがピークカードは精度の良いカードです。ボクはその方のこと少し心配です。どこにいらっしゃるのかお分かりですか?」
「分かりません。多分家に居ると思うけど……」
「ではすぐにでも家に向かいましょう!」
「ハル、でも今日お店は……?」
「何言ってるんだ! ひょっとしたら人の生死にかかわるかもしれないのに、お店どころじゃないだろう!?」
ハルの力強い言葉が私を現実に引き戻してくれた。
とにかく手に入れていたガイウスの住所をハルに見せると、この場所なら分かるからと先導してくれる。
ハルのお店を飛び出し公園を突っ切り、街はずれの方に向かって私は祈りながら走った。
どうか、ガイウスじゃありませんように!
無事でありますように。
このままハルのお店がある公園まではゆっくり歩いて三十分くらいだ。
川沿いに飲食エリアを早歩きで通り過ぎる。
飲食エリアは誘惑が多いから、早歩きが精神衛生上良いのよね。それに、流石に早くしないと保冷バッグの中の氷が溶けかけてきているから、正直焦ってる。
魔法の氷はやたら長持ちするけど、流石にそろそろ限界みたい。
途中で「誰がどこにいるか分かるMAP」を確認してみたけど、ガイウスは一向に姿を現さないし、そこまで体調が悪いのかな?と気になる。
ハルのお店に到着すると、ハルは笑顔で迎え入れてくれた。
「約束通り来てくれてありがとう、クロエさん!」
「ハル、こんにちは。私が来たいと言ったのですから当たり前ですわ」
店内の休憩スペースに通してくれたので、心配をかけたお詫びのゼリーを渡す。
「なあに、これ。すごく冷たいね?」
「ふふ、箱を開けてみて?」
「わっ! ぷるぷるしててとっても綺麗~! これは何?」
「ゼリーと言うお菓子です。ご心配かけたお詫びなんだけど、食べてくれる?」
「うん! これ、お皿に乗せたらもっとカワイイよね。ちょっとまってて!」
流石はハル。カワイイに妥協を許さないところがスゴイ!
ハルが持ってきたガラスの器は夜の空の色で、そこに乗せたゼリーは窓から入ってくる陽の光を浴びてキラキラ輝いている。
「わあ、凄くいい! 映える!!」
「? 映える? それも神の国の言葉?」
「あ、映えはわからないんだ……うーんと、ものすごく見た目がいい感じってコトかな?」
「うん、この食べ物にはこの器が絶対合うと思ったんだ~! すごくいい!
じゃあ、いただきまーす!」
ひとくち食べたハルは、目を丸くしている。
甘さと酸味のある果実を使ったゼリーは、飲み込む瞬間に爽やかな香りが鼻孔をくすぐっていく。
「すごく美味しい! こんな不思議な食感の食べ物、はじめてかも!」
あっという間に食べ進めたハルは、最後のひとくちのスプーンを口につけたまま、名残惜しそうにしている。
「お口に合ってよかった!」
「多分これ、嫌いな人居ないと思う。甘さも控えめだし、クロエさんはお菓子作りの腕が上がったんじゃない?」
「そうかな? たまたま使った果実が良かっただけだと思うけど」
ハルが、いきなり「がしっ」と私の両手を取り、真剣な目で見つめてくる。
え? ナニナニ?? イベント発生? と思ったら……
「前から思っていたんだけど、お菓子をこの店の一角で売らない? 絶対売れると思うんだよね!」
勧誘だった。
感動してくれるくらい美味しかったんだと思うと嬉しくなる半面、売るのはどうかと思ってしまう。調理師免許もないし。
「せっかくですけど、私のお菓子作りは趣味なので。毎回同じように出来上がるわけじゃないし、お店はちょっと難しいかも?」
「そっか」
あからさまにガッカリするハルに、私は自分の特別な人が喜んでくれるならそれでいいと伝えると、元気復活して笑顔になってくれた。
「そうだ! お礼に占いしてあげるね!」
そう言うと、ハルは店の奥からカードを持ってきた。
ピークカードというこの王国に古くから伝わる占い用のカードで、予言みたいに当たるらしい。
カードをシャッフルしたあと、机の上に並べて真剣にめくっていくハル。
ちょっと顔がしかめっ面に見えるのは、気のせいよね?
「クロエさん、あなたのことを大切に想っている人が沢山いるね。
本当に素敵な女性だから仕方ないけど、ボクとしては何だかちょっとモヤモヤしちゃうなぁ。
どうやら、その中の一人にトラブルが発生してるみたいだよ」
「ええ~? 誰だろう? どんなトラブル?」
「今、とても苦しんでるみたいだ。ほら、このカード。男に蛇が巻き付いているでしょ? これは毒という意味でもあるんだ」
そう言いながら、ハルはもう一枚カードを引く。
「どうやら、クロエさんの身近な存在の人みたいだけど……」
またカードを何枚か引き、ハルは続ける。
「トラブルの種類は分からないけど、何か大きなものと闘ったようだ。このままでは命の危険もあるかもしれない。何か心当たりはない?
例えば、急に連絡が取れなくなった人とかいないかな?」
私の身近にいて、命に係わるような何かのトラブルに巻き込まれそうで、絶賛連絡が取れない男を私は知っている。
ガイウス。
「何か思い当たるみたいだね。クロエさん? 大丈夫?」
顔がどんどん青ざめていく私を見て、ハルは私をのぞき込んだ。
「ええ、今朝から私の執事と連絡が取れていなくて。急に休みたいと言ってきたみたいで……ひょっとしたらと思ったら……」
「しっかりして、クロエさん。これは占いですから、百発百中とはいきません。ですがピークカードは精度の良いカードです。ボクはその方のこと少し心配です。どこにいらっしゃるのかお分かりですか?」
「分かりません。多分家に居ると思うけど……」
「ではすぐにでも家に向かいましょう!」
「ハル、でも今日お店は……?」
「何言ってるんだ! ひょっとしたら人の生死にかかわるかもしれないのに、お店どころじゃないだろう!?」
ハルの力強い言葉が私を現実に引き戻してくれた。
とにかく手に入れていたガイウスの住所をハルに見せると、この場所なら分かるからと先導してくれる。
ハルのお店を飛び出し公園を突っ切り、街はずれの方に向かって私は祈りながら走った。
どうか、ガイウスじゃありませんように!
無事でありますように。
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