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ゲーム序盤
狩猟が終わったら引きこもりたい②
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魔法局の広場で簡単な説明があった後、チームに分かれて北の鉱山まで出かける。
それぞれ、指定の場所に到着するとワイバーンを寄り付かせるための香を焚き始める。
香りがきついと沢山のワイバーンが現れてしまうので、調整が難しいらしい。
これを時間をずらして五組が焚く。そうすることでワイバーンの出現時間をずらし、補佐役の私とルカが順番に討伐対象のチームの元へと移動するという計画だ。
私への期待が重すぎる。
正直、出来る気しかしないけど。
一つ目のグループの香が焚かれ、五分ほどするとワイバーンが鉱山のほうから一匹飛んできた。
少し小型と誰かが言っているので、若い個体だろうとの見解みたい。
私は魔法の準備をしつつ、ワイバーンがもう少し近くまで来るのを待った。
……は? 小型? どこが!? これで小型!?
大人の象五匹合わせたより大きくないですか?
不安な顔でちらっとルカを見ると、ルカはいつもの眠たそうな目が開眼していて、とってもイケメン……じゃなかった、ワクワクした顔をしている。
こうしてみると、普段大人びているルカだけどちゃんと16歳の少年らしい顔つきなんだね。
「俺に見とれてないで、早く魔法を撃て」
「ひぃ、何でバレましたの? 勘がよろしいですわね。では、早速行きますわよ!!」
私は空の大きな的に向かって、混乱魔法をワイバーンに気付かれないよう無詠唱で放った。
最初だからものすごく気合いが入って、ものすごーーーく……力を込めすぎちゃった。てへ。
ワイバーンは悲鳴もあげずに落ちてきた。どうやら混乱が効きすぎて気絶してしまったらしい。
他の魔導士が何をすることもなく一匹捕獲することができた。
少々やり過ぎてしまったせいで、ワイバーンを回復させないといけなくなってしまった。
ルカに怒られるかと思ったら、大笑いされてしまった。
「クク、ははは!!! 思った以上だ! クロエ!!! ははっ! 最初からあそこまで思いっきり行く奴は初めて見たぞ!!! くっ、はははっ!」
「そ、そんなに笑わなくてもよろしいんじゃなくて?」
笑いをこらえられなくなり、涙を浮かべてヒーヒーと笑うルカはやっぱり普通の少年と変わらない。
いつも、もう少し瞳にやる気を宿していれば素敵なのになあ、もったいない子だなあ。
大笑いするルカと一緒に魔法局秘蔵の高速移動具、空飛ぶ壺(三~四人は乗れそう)に乗って次のポイントに移動する。
客観的に見て、やたら金ぴかな壺に乗っている姿はかなり面白いんじゃないかなと思っちゃう。
こんなアイテムはゲームには無かったもんなあ。捕獲イベントも無かったから、追加シナリオかな?
とにかく壺に乗って移動とか恥ずかしすぎるので、早く次に行きたいなって思っていたら、あっという間に次のポイントに到着した。
だけど、このグループはまだ香を焚き始めたばかりだったみたいで、ワイバーンは来ていなかった。
ポイント1の捕獲では、私が早く倒しすぎたせいで時間が巻いてしまったらしい。
ドキドキしながら待っていると、ワイバーンが遠くからやってきた。
しかも二体。
かなり大型に見えるけど、ルカ曰く今見えているあれが普通サイズらしい。
冗談よね? さっきのワイバーンよりひと回りは大きく見えるんですけど!?
「クロエ、さっきのあれと同じくらいの出力で撃てるか?」
「はい。先ほどは少々気合いが入りすぎてコントロールが上手くできなかったですが、次はちゃんとコントロールして撃てますわ」
「頼もしいな、やって見せろ。ほら、今すぐだ。二匹後同時に行けるタイミングがあるだろう?」
ルカも居るんだから、一匹ずつ魔法を放てば済む話じゃない~! 若いのにドSが過ぎる!
心の中で毒付きながら、二匹のワイバーンが重なる瞬間を狙って、自分の限界まで研ぎ澄ませた魔法を放つ。
チュイン!
放った弓がワイバーン二匹を貫通していった。
「やったー! やりましたわ! すごい、一度に二匹も! クレーンゲームでもここまでの手応えを感じたことはなかったですわー!」
班の全員でワイバーンの落下地点まで移動する。
一匹は気絶しているけど、もう一匹は苦悩の表情を浮かべてのたうち回っている。
当たり前だけど、精神干渉なので傷はひとつもついていない。
「こういう場合は、こうやって対応するんだ」
ルカは軽く詠唱を唱え、暴れているワイバーンに睡眠の魔法をかけた。
さっきまで暴れていたとは思えないほど、ワイバーンが静かになる。ルカの魔法の、発動までの滑らかさと速さにものすごく驚いた。
今度教えて貰おうかな? 流石は局長様って感じ!
二か所目の捕獲も難なく終え、次の移動先までの距離をまた壺に乗って移動する。
三か所目も四か所目も、同じようにほとんど周りの手を煩わせることもなく終えることができた。
どこのチームからも感嘆の声が上がり、こんなに楽な捕獲作戦は今まで無かったと褒められると恐縮してしまう。
私の魔法力数値は皆には秘密だけど、ものすごいのよ。
ただそれだけだから、褒められるようなことは何もないのだけど……でも、自分の力が人の役に立つのは本当に嬉しい。思わず笑顔になってしまう。
こんなにあっさり捕獲できるなら、すぐに捕獲イベントを終えて帰宅できそうで良かった。
撫でおろした私の胸は、もうしばらくするとじきに躍りまくることになるのだけど、ね?
それぞれ、指定の場所に到着するとワイバーンを寄り付かせるための香を焚き始める。
香りがきついと沢山のワイバーンが現れてしまうので、調整が難しいらしい。
これを時間をずらして五組が焚く。そうすることでワイバーンの出現時間をずらし、補佐役の私とルカが順番に討伐対象のチームの元へと移動するという計画だ。
私への期待が重すぎる。
正直、出来る気しかしないけど。
一つ目のグループの香が焚かれ、五分ほどするとワイバーンが鉱山のほうから一匹飛んできた。
少し小型と誰かが言っているので、若い個体だろうとの見解みたい。
私は魔法の準備をしつつ、ワイバーンがもう少し近くまで来るのを待った。
……は? 小型? どこが!? これで小型!?
大人の象五匹合わせたより大きくないですか?
不安な顔でちらっとルカを見ると、ルカはいつもの眠たそうな目が開眼していて、とってもイケメン……じゃなかった、ワクワクした顔をしている。
こうしてみると、普段大人びているルカだけどちゃんと16歳の少年らしい顔つきなんだね。
「俺に見とれてないで、早く魔法を撃て」
「ひぃ、何でバレましたの? 勘がよろしいですわね。では、早速行きますわよ!!」
私は空の大きな的に向かって、混乱魔法をワイバーンに気付かれないよう無詠唱で放った。
最初だからものすごく気合いが入って、ものすごーーーく……力を込めすぎちゃった。てへ。
ワイバーンは悲鳴もあげずに落ちてきた。どうやら混乱が効きすぎて気絶してしまったらしい。
他の魔導士が何をすることもなく一匹捕獲することができた。
少々やり過ぎてしまったせいで、ワイバーンを回復させないといけなくなってしまった。
ルカに怒られるかと思ったら、大笑いされてしまった。
「クク、ははは!!! 思った以上だ! クロエ!!! ははっ! 最初からあそこまで思いっきり行く奴は初めて見たぞ!!! くっ、はははっ!」
「そ、そんなに笑わなくてもよろしいんじゃなくて?」
笑いをこらえられなくなり、涙を浮かべてヒーヒーと笑うルカはやっぱり普通の少年と変わらない。
いつも、もう少し瞳にやる気を宿していれば素敵なのになあ、もったいない子だなあ。
大笑いするルカと一緒に魔法局秘蔵の高速移動具、空飛ぶ壺(三~四人は乗れそう)に乗って次のポイントに移動する。
客観的に見て、やたら金ぴかな壺に乗っている姿はかなり面白いんじゃないかなと思っちゃう。
こんなアイテムはゲームには無かったもんなあ。捕獲イベントも無かったから、追加シナリオかな?
とにかく壺に乗って移動とか恥ずかしすぎるので、早く次に行きたいなって思っていたら、あっという間に次のポイントに到着した。
だけど、このグループはまだ香を焚き始めたばかりだったみたいで、ワイバーンは来ていなかった。
ポイント1の捕獲では、私が早く倒しすぎたせいで時間が巻いてしまったらしい。
ドキドキしながら待っていると、ワイバーンが遠くからやってきた。
しかも二体。
かなり大型に見えるけど、ルカ曰く今見えているあれが普通サイズらしい。
冗談よね? さっきのワイバーンよりひと回りは大きく見えるんですけど!?
「クロエ、さっきのあれと同じくらいの出力で撃てるか?」
「はい。先ほどは少々気合いが入りすぎてコントロールが上手くできなかったですが、次はちゃんとコントロールして撃てますわ」
「頼もしいな、やって見せろ。ほら、今すぐだ。二匹後同時に行けるタイミングがあるだろう?」
ルカも居るんだから、一匹ずつ魔法を放てば済む話じゃない~! 若いのにドSが過ぎる!
心の中で毒付きながら、二匹のワイバーンが重なる瞬間を狙って、自分の限界まで研ぎ澄ませた魔法を放つ。
チュイン!
放った弓がワイバーン二匹を貫通していった。
「やったー! やりましたわ! すごい、一度に二匹も! クレーンゲームでもここまでの手応えを感じたことはなかったですわー!」
班の全員でワイバーンの落下地点まで移動する。
一匹は気絶しているけど、もう一匹は苦悩の表情を浮かべてのたうち回っている。
当たり前だけど、精神干渉なので傷はひとつもついていない。
「こういう場合は、こうやって対応するんだ」
ルカは軽く詠唱を唱え、暴れているワイバーンに睡眠の魔法をかけた。
さっきまで暴れていたとは思えないほど、ワイバーンが静かになる。ルカの魔法の、発動までの滑らかさと速さにものすごく驚いた。
今度教えて貰おうかな? 流石は局長様って感じ!
二か所目の捕獲も難なく終え、次の移動先までの距離をまた壺に乗って移動する。
三か所目も四か所目も、同じようにほとんど周りの手を煩わせることもなく終えることができた。
どこのチームからも感嘆の声が上がり、こんなに楽な捕獲作戦は今まで無かったと褒められると恐縮してしまう。
私の魔法力数値は皆には秘密だけど、ものすごいのよ。
ただそれだけだから、褒められるようなことは何もないのだけど……でも、自分の力が人の役に立つのは本当に嬉しい。思わず笑顔になってしまう。
こんなにあっさり捕獲できるなら、すぐに捕獲イベントを終えて帰宅できそうで良かった。
撫でおろした私の胸は、もうしばらくするとじきに躍りまくることになるのだけど、ね?
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