32 / 33
32
しおりを挟む
あやかし街に導いてもらえたこと、街の皆さんに愛されていること、新しく就職先で社員になれること。
どれをとっても、私ひとりで手に入れたわけではない。
翌日、いつものあの神社へ出勤前に足を運ぶと、なんとそこには紫狼が立っていた。
「紫狼!おはようございます。どうされたんですか?」
「ああ、板狩さん、おはよう。
・・・さっき、妙な男が真剣に祈っていて、呼ばれた気がしたのですけどね。」
「妙な男?」
「板狩さんの名前も出ていました。お知り合いですか?」
昨日の今日で、もう花園さんはこの神社に来たんだ!と、ピンときた。
「はい、私の知り合いだと思います。以前の会社の上司にあたる方で。紫狼にもそのことで少しお話したいと思っていたところでした。本日はお時間頂く機会はございますか?」
「社に戻ってしまうと、今日は会議続きで席に戻ることはできないですね。今なら聞けますよ?」
「ありがとうございます!では、先にお祈りしますのでお待ちいただけますか?お祈りの内容であらかた分かってしまうと思うのですけれど。」
そう言うと、私はささっと紫狼の奥にある拝殿まで進むと、手に握った5円玉を奉納して祈りを捧げる。
その姿をじっと見ていた紫狼は、なるほどという顔をした。
お祈りが終わると、紫狼の元に戻り「分かりました?」と満面の笑みで聞いてみる。
「だいたい理解しました。面接はしますけど、本当に信用に足るかどうかは逢ってみてからの判断になります。いいですか?」
「ありがとうございます!では、スケジュールをまた教えてください。」
「板狩さんを育てた男に興味が無いとは言えないですからね。秘書から伝えさせるので、今日もよろしくお願いしますよ。」
そう言うと、紫狼は転移を使って職場へ戻って行った。
私も神社を後にすると、私のことを信じてお祈りに来てくれた花園と、願いを確認しに来てくれた紫狼に感謝をしつつ、もし一緒に働けたらという妄想をしながら出社した。
数日後、花園にスケジュールの確認などを経て、面接が行われた。
どんな面接状況だったのか、私は下っ端だからわからないけれど、どうやら良い方向に向かっている様子だ。
花園はその後も時間をみつけては神社に足しげく通っていたらしく、本気が認められたことが大きかったようだ。
花園の会社の方は、長年勤めた腕のいいデザイナーの花園を手放すのを嫌がったようだけど、今の劣悪な環境と新しい条件を天秤にかける必要もないと、意思の固さを見せることで渋々退職を了承されたそうだ。
3か月かけて引継ぎを行うそうだ。
私にとって良い事続きで、日々が楽しい。
どれをとっても、私ひとりで手に入れたわけではない。
翌日、いつものあの神社へ出勤前に足を運ぶと、なんとそこには紫狼が立っていた。
「紫狼!おはようございます。どうされたんですか?」
「ああ、板狩さん、おはよう。
・・・さっき、妙な男が真剣に祈っていて、呼ばれた気がしたのですけどね。」
「妙な男?」
「板狩さんの名前も出ていました。お知り合いですか?」
昨日の今日で、もう花園さんはこの神社に来たんだ!と、ピンときた。
「はい、私の知り合いだと思います。以前の会社の上司にあたる方で。紫狼にもそのことで少しお話したいと思っていたところでした。本日はお時間頂く機会はございますか?」
「社に戻ってしまうと、今日は会議続きで席に戻ることはできないですね。今なら聞けますよ?」
「ありがとうございます!では、先にお祈りしますのでお待ちいただけますか?お祈りの内容であらかた分かってしまうと思うのですけれど。」
そう言うと、私はささっと紫狼の奥にある拝殿まで進むと、手に握った5円玉を奉納して祈りを捧げる。
その姿をじっと見ていた紫狼は、なるほどという顔をした。
お祈りが終わると、紫狼の元に戻り「分かりました?」と満面の笑みで聞いてみる。
「だいたい理解しました。面接はしますけど、本当に信用に足るかどうかは逢ってみてからの判断になります。いいですか?」
「ありがとうございます!では、スケジュールをまた教えてください。」
「板狩さんを育てた男に興味が無いとは言えないですからね。秘書から伝えさせるので、今日もよろしくお願いしますよ。」
そう言うと、紫狼は転移を使って職場へ戻って行った。
私も神社を後にすると、私のことを信じてお祈りに来てくれた花園と、願いを確認しに来てくれた紫狼に感謝をしつつ、もし一緒に働けたらという妄想をしながら出社した。
数日後、花園にスケジュールの確認などを経て、面接が行われた。
どんな面接状況だったのか、私は下っ端だからわからないけれど、どうやら良い方向に向かっている様子だ。
花園はその後も時間をみつけては神社に足しげく通っていたらしく、本気が認められたことが大きかったようだ。
花園の会社の方は、長年勤めた腕のいいデザイナーの花園を手放すのを嫌がったようだけど、今の劣悪な環境と新しい条件を天秤にかける必要もないと、意思の固さを見せることで渋々退職を了承されたそうだ。
3か月かけて引継ぎを行うそうだ。
私にとって良い事続きで、日々が楽しい。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
ニンジャマスター・ダイヤ
竹井ゴールド
キャラ文芸
沖縄県の手塚島で育った母子家庭の手塚大也は実母の死によって、東京の遠縁の大鳥家に引き取られる事となった。
大鳥家は大鳥コンツェルンの創業一族で、裏では日本を陰から守る政府機関・大鳥忍軍を率いる忍者一族だった。
沖縄県の手塚島で忍者の修行をして育った大也は東京に出て、忍者の争いに否応なく巻き込まれるのだった。
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる