【完結】あやかし街の看板娘

MURASAKI

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あやかし街に導いてもらえたこと、街の皆さんに愛されていること、新しく就職先で社員になれること。
どれをとっても、私ひとりで手に入れたわけではない。

翌日、いつものあの神社へ出勤前に足を運ぶと、なんとそこには紫狼しろうが立っていた。


紫狼しゃちょう!おはようございます。どうされたんですか?」

「ああ、板狩いたかりさん、おはよう。
 ・・・さっき、妙な男が真剣に祈っていて、呼ばれた気がしたのですけどね。」

「妙な男?」

板狩いたかりさんの名前も出ていました。お知り合いですか?」


昨日の今日で、もう花園さんはこの神社に来たんだ!と、ピンときた。


「はい、私の知り合いだと思います。以前の会社の上司にあたる方で。紫狼しゃちょうにもそのことで少しお話したいと思っていたところでした。本日はお時間頂く機会はございますか?」

「社に戻ってしまうと、今日は会議続きで席に戻ることはできないですね。今なら聞けますよ?」

「ありがとうございます!では、先にお祈りしますのでお待ちいただけますか?お祈りの内容であらかた分かってしまうと思うのですけれど。」


そう言うと、私はささっと紫狼しろうの奥にある拝殿まで進むと、手に握った5円玉を奉納して祈りを捧げる。
その姿をじっと見ていた紫狼しろうは、なるほどという顔をした。
お祈りが終わると、紫狼しろうの元に戻り「分かりました?」と満面の笑みで聞いてみる。


「だいたい理解しました。面接はしますけど、本当に信用に足るかどうかは逢ってみてからの判断になります。いいですか?」

「ありがとうございます!では、スケジュールをまた教えてください。」

板狩いたかりさんを育てた男に興味が無いとは言えないですからね。秘書から伝えさせるので、今日もよろしくお願いしますよ。」


そう言うと、紫狼しろうは転移を使って職場へ戻って行った。
私も神社を後にすると、私のことを信じてお祈りに来てくれた花園と、願いを確認しに来てくれた紫狼しろうに感謝をしつつ、もし一緒に働けたらという妄想をしながら出社した。

数日後、花園にスケジュールの確認などを経て、面接が行われた。
どんな面接状況だったのか、私は下っ端だからわからないけれど、どうやら良い方向に向かっている様子だ。
花園はその後も時間をみつけては神社に足しげく通っていたらしく、本気が認められたことが大きかったようだ。

花園の会社の方は、長年勤めた腕のいいデザイナーの花園を手放すのを嫌がったようだけど、今の劣悪な環境と新しい条件を天秤にかける必要もないと、意思の固さを見せることで渋々退職を了承されたそうだ。
3か月かけて引継ぎを行うそうだ。
私にとって良い事続きで、日々が楽しい。
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