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翌日からは充実の日々だった。
修正後のリーフ亭のメニュー表は評判になり、狐崎の口利きもあってあやかし街のあちこちのお店から依頼が来るようになっていった。
庵黒堂にバイトに行くようになって2週間ほどで、最初に手掛けたアクセサリーショップの店舗用看板が出来上がり、お店に掲げた直後から人気が出たそうで、リーフ亭には私に看板を作ってほしいという依頼が殺到中らしい。
庵黒堂では、今のところデザイナーというよりもディレクターに近い仕事を任されている。
仕事を振るお仕事は、思っていたよりも楽しくて少しハマってしまった。
取引先にも、デザイン分かっている人が仕事を出してくれるようになって、より意思疎通がスムーズになったと言ってもらえるし、分からないことは教えてもらえるので環境として悪くないと思う。
なにより、リーフ亭を通してデザインの仕事をしているからか、デザインの仕事をしていなくても不満が出ない。
以前の私だったら、デザインの仕事に携わりたいんですなんて言ってろうなあ。
取引先への発注と打ち合わせの電話を切って、しみじみと思う。
ただデザインをしていたときは、発注者のイメージを大事にすることだけしか考えていなかったけど、こうして仕事をお願いする側に立ってみると見える景色が違うと感じる。
発注者の想いと、発注者のお客様の気持ちまで考えてモノづくりをしないといけないんだと良く分かった。
私はこの仕事を今しなければならない事だったと思う。
つくづく神様の所業ってすごいなあと感じている。
庵黒堂にもそのうちデザイン部も立ち上げる予定なのだそうだ。
私ではまだ経験が足らないので、私とウマが合ってなおかつデザイナーとして経験豊富な人材を探しているそうだ。
指導者も探してくれるなんて、有難い話だ。
まだしばらくは、私もディレクター業務に慣れないといけないので、少なくとも1年は難しいらしい。
私としては、今の仕事も楽しいからこのままでもいいかなとは思うけど、狐崎さんには事あるごとに流されないように釘を刺されているので、デザイナーとしての腕もしっかり磨いていこうと思う。
そんな二足の草鞋を履く生活を半年ほど続けた頃。
私は庵黒堂の正式な社員として契約することとなった。
正社員の話が持ち上がったことが嬉しくて、狐崎に報告に行こうとしたところで、背後から声をかけられる。
「あれ?板狩さんじゃない?」
振り返ると、前に勤めていた会社の上司───花園さんだった。
半年合わないうちに、少しやつれたように見える。
「花園さん、お久しぶりです!どうされたんですか?」
「ここ、お客様の最寄り駅なんだ。僕は今、プレゼンの帰りで。今日はこのまま直帰予定だから、お茶でもどう?」
「はい!ぜひ!!!」
誘われるままに、近くの喫茶店でお茶をすることになった。
修正後のリーフ亭のメニュー表は評判になり、狐崎の口利きもあってあやかし街のあちこちのお店から依頼が来るようになっていった。
庵黒堂にバイトに行くようになって2週間ほどで、最初に手掛けたアクセサリーショップの店舗用看板が出来上がり、お店に掲げた直後から人気が出たそうで、リーフ亭には私に看板を作ってほしいという依頼が殺到中らしい。
庵黒堂では、今のところデザイナーというよりもディレクターに近い仕事を任されている。
仕事を振るお仕事は、思っていたよりも楽しくて少しハマってしまった。
取引先にも、デザイン分かっている人が仕事を出してくれるようになって、より意思疎通がスムーズになったと言ってもらえるし、分からないことは教えてもらえるので環境として悪くないと思う。
なにより、リーフ亭を通してデザインの仕事をしているからか、デザインの仕事をしていなくても不満が出ない。
以前の私だったら、デザインの仕事に携わりたいんですなんて言ってろうなあ。
取引先への発注と打ち合わせの電話を切って、しみじみと思う。
ただデザインをしていたときは、発注者のイメージを大事にすることだけしか考えていなかったけど、こうして仕事をお願いする側に立ってみると見える景色が違うと感じる。
発注者の想いと、発注者のお客様の気持ちまで考えてモノづくりをしないといけないんだと良く分かった。
私はこの仕事を今しなければならない事だったと思う。
つくづく神様の所業ってすごいなあと感じている。
庵黒堂にもそのうちデザイン部も立ち上げる予定なのだそうだ。
私ではまだ経験が足らないので、私とウマが合ってなおかつデザイナーとして経験豊富な人材を探しているそうだ。
指導者も探してくれるなんて、有難い話だ。
まだしばらくは、私もディレクター業務に慣れないといけないので、少なくとも1年は難しいらしい。
私としては、今の仕事も楽しいからこのままでもいいかなとは思うけど、狐崎さんには事あるごとに流されないように釘を刺されているので、デザイナーとしての腕もしっかり磨いていこうと思う。
そんな二足の草鞋を履く生活を半年ほど続けた頃。
私は庵黒堂の正式な社員として契約することとなった。
正社員の話が持ち上がったことが嬉しくて、狐崎に報告に行こうとしたところで、背後から声をかけられる。
「あれ?板狩さんじゃない?」
振り返ると、前に勤めていた会社の上司───花園さんだった。
半年合わないうちに、少しやつれたように見える。
「花園さん、お久しぶりです!どうされたんですか?」
「ここ、お客様の最寄り駅なんだ。僕は今、プレゼンの帰りで。今日はこのまま直帰予定だから、お茶でもどう?」
「はい!ぜひ!!!」
誘われるままに、近くの喫茶店でお茶をすることになった。
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