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「まあまあ、そんな顔せんといて。それに、リーフ亭ウチで働いたら、前の会社に<ざまあ>出来へん。
 はあ、そう考えると紫狼しろうんところに紹介するんが一番ざまあやったねぇ。ホンマごめん。」


話が振り出しに戻ってしまったが、狐崎こざきが私の願いを叶えてくれるよう動いてくれていることが良く分かった。


「ありがとうございます。私の願いはちゃんと神様に届いているんですね。嬉しいです。ところで・・・。」

「ん?何?」

「どうしてそんな仲の悪い紫狼しろうさんの弟さんを雇っているんですか?栗栖くんと紫狼しろうさんは仲が悪いわけではないようでしたけど?」

「ああ。別に僕は紫狼しろうと仲が悪いわけではないよ。ちょっと虫が好かん相手ってだけで。
 栗栖くんは僕の下で修行したいと言ってくれてるから、面倒見てるんです。口は悪いけど、真面目なええ子やで。」

「でもあの<大映光新聞>の息子さんだなんて。デザインに興味があるようでしたけど、ちょっと納得しました。」

「せやろ?あの子は才能に溢れてるからね。何でも好きにしたらええんやけど、末っ子で兄や姉の姿を見て育ってるから、経営のほうに行かなって自分でも思ってるみたいなんです。」

「でも本来は、神様の眷属がお仕事ですよね?」

「正解や。僕らが人間の世界に身をひそめるのは、願いを叶える為でもあるし、人間の事を知るためでもある。
 知った気になって、誰も思わん方向に行ってしまうと本末転倒からね。人間はすぐに流されてしまうから。」

「お恥ずかしいです。」

「いやいや、昔はそうでもなかったんやけど。いつ頃からか人は神頼みせんようになった。
 信心深い人間は割とレアなんや。大切にせんと神力も弱ってしまうしね。お互い様なんよ、何事も。」


ちょっと神っぽい事を言うと、狐崎こざきはウインクをする。
慣れてきたとはいえ、イケメンのウインクは破壊力が違う。私は照れてしまい、少しうつむいた。
何だか微妙な雰囲気になってしまったところに、リーフ亭の扉が開く。


狐崎オーナー!今日もよろしく!って、あれ?アンタ・・・。」


栗栖が出勤してきたのだ。おかげで微妙な雰囲気が壊れてくれた。
微妙な雰囲気と思っていたのは私だけだろうけど、それでも第三者が入ってきてくれることで間が持った。


「こんにちは、栗栖くん。今日は神社で狐崎こざきさんと偶然お逢いしたので、お茶しに来ちゃいました!」

「偶然?」


ジト目で栗栖が狐崎こざきを見ると、狐崎こざきは分かりやすく目を逸らし、僕は知りませんと言う顔をした。
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