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狐崎こざきは何かを考えながら茶をすすると、申し訳ないと言う顔をした。


「そんな憧れの会社やったなら、僕が横やり入れんほうが良かったかもしれへんね。
 紫狼しろうは少し前に大映光新聞系列の広告代理店<庵黒堂>の社長に就任したとこなんや。」

「庵黒堂!?知ってます!あそこは営業会社でほとんど外注だと聞いています。だからデザイナーは採用しないと思っていました。私も前の会社は下請けで、元元元請けくらいが庵黒堂の仕事を手伝った事、ありますよ!」

「そうかあ。やっぱり失敗やったかな。憧れの会社に入れたかもしれんのに。ホンマにごめんなぁ。」

「いえ、そんな!あの場では入れると決まっていたわけでは無くて。どうやら栗栖くんの話を聞いて、私に興味が出たと言っていらっしゃいましたね。」


うーん?と狐崎こざきは眉間にしわを寄せる。


紫狼あのおとこが人間に興味を示すなんて、珍しい話なんですけどね?僕が気に入ってるからかな?」

「ありがとうございます!けれど、狐崎こざきさんが私を気に入ることと、オファー前に逢いにくることと、何の関係があるんでしょう?」


私は二人の関係────なんとなく察しはつくけれど────を全く知らない。
しかも、そんなにいがみ合ってるのに弟の栗栖六狼ろくろう狐崎こざきにとても懐いているように見える。
とにかく複雑そうな事情は、後々のことを考えると聞いておいた方が良いと思う。


「そうやね。僕と紫狼しろうは同じ年齢で同じ神さんの下で修業したこともあって、よう比べられたんですわ。
 特に紫狼しろうは、妖狼一族のエリート家系・栗栖家の四男やから。家督は継げへんけど、仕事を支えるためもあってかなり頑張ってたん。ああ見えて、かなりの努力家さんなんや。
 僕は元からお狐やし、神さんの下で働くのは生まれた時から決まってて。」


きょとんとする私の顔を見て、狐崎こざきは「ああ!」と両手を打った。
妖狐のことが分からない私に分かるように、まずは妖狐の話をしてくれる。


「神さんは血統でお守りするんや。妖狐は、生まれた時から神の眷属なん。僕の母親が力のある白狐やったこともあって、僕は生まれつき妖力が高いんや。
 紫狼しろうは、妖狼で・・・長く続く由緒ある血統の一族やけど、狐じゃない。直接神さんの下で働くことはできん血統なんや。勿論すごい優秀なんやで?」

「はあ・・・私はフラットな関係が好きなのでヒエラルキーの感じはちょっと苦手なんですけど・・・。ピラミッドにしたらどんな感じですか?」


私は持っていた手帳をちぎってピラミッドを書くと、いくつか線を引いて一番上の頂点に「神」と書き込んだ。
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