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「あの、勧誘のお話でしたら狐崎こざきさんを通していただけると嬉しいです。全て狐崎こざきさんにお任せしていますので。」

「はっ、あんな能力のない黄狐に義理立てする必要などないですよ?」


明らかな狐崎こざきへの悪意を感じ、背筋がゾッとする。
このまま走って逃げよう、そう思った時。
聞きなれた声が背後から聞こえた。


「なんや、紫狼しろう。うちのお得意さんに何の用?」


狐崎こざきが私の後ろに立っていた。心の底からほっとする。
しかし、狐崎こざきからも、激しい怒りの感情が伝わってくる。
心なしか辺りの空気がピリピリしているように感じる。


板狩いたかりちゃん、怖い目に合わして申し訳ないです。栗栖くんから話を聞いて飛んできたんです。」

六狼おとうとに何を聞いたのか分かりませんが、私は板狩かのじょをスカウトに来たんですよ、もちろん正式なオファーです。怖い目に合わせるなんて、そんなことするわけがないでしょう?」

「またまた。紫狼あんたがそんな優しいわけないですやん。何が目的なん?言うてみてくれへん?」

「だから、私は板狩かのじょをスカウトに来たんです。それ以上でもそれ以下でもありません。」

「ほな、横から茶々入れんと<正式に>僕の店通してオファーしてくれへんと。こっちかて商売やってるんやから搔っ攫おうとされたら困るんです。」

「私はお前のその気持ち悪い京なまりを聞きたくない。男のくせになよなよと。」

「ああ!!!今の世の中、そんなジェンダー差別なんかしたら訴えられますよ!?
 ね?板狩いたかりちゃん!あんなひどい男の会社なんて就職したら差別されるから、やめたほうがええよ。」

「うちの会社は、人間だろうがあやかしだろうが、男だろうが、女だろうが、若かろうが、年寄りだろうが、同じように扱っている。スカウトしたい人材の前で失敬な事を言わないでくれ。それこそ侮辱罪だ。」

「なんやて!!?」

「なんだと!!?」


今にも一触即発といった雰囲気だが、さっきの張り詰めた緊張感よりもユルいこの状況は何だろうか。
既に昔から比べられてきた幼馴染同士のけん制のし合いみたいな、ほっこりしたやりとりにしか見えない。
呆然としながら二人のやりとりを見ていた私は、思わず大きなため息がひとつ。
そのため息で一気に力の抜けてしまい、笑いをこらえきれなくなってしまった。


「あはははは!」


もうやめてくださいと、二人の間に入って制止する。
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