20 / 33
20
しおりを挟む
「六狼を知らない?栗栖六狼。私の、ふたつ下の弟なんですが。」
「えっ!!?」
栗栖くんは下の名前六狼って言うのか!と、言われてはっとする。
音だけしか聞いたことが無いので、私はてっきり<クリス>という下の名前だと思っていた。
あれだけ日本人離れした───本性があやかしなんだから日本人かどうかも怪しいけれど───見た目なのに<ろくろう>って名前なのかあ。
日本人みたいで親近感持つなあ。
そんなことを考えながら、栗栖の兄を名乗る美青年の問いに返答する。
「はい、栗栖くんでしたら知っています。リーフ亭でお世話になっています。あなたは栗栖くんのお兄さんなんですね?」
「ええ。」
私の問いを肯定すると、さわやかな笑顔を浮かべた美青年は自分の名前を紫狼と名乗った。
どうやら、栗栖くんがリーフ亭であった出来事をお兄さん達に話しをしたらしく、私に興味を持った紫狼さんが見に来たそうだ。
「私は、ちょっとした会社を経営していてね。今は外注に出しているが、丁度社内に担当が欲しいところだったんだ。それで、あなたを勧誘できないかと思いまして。
ただ、流石に人となりが分からなければ採用は難しい。だからこうして逢いに来たんですよ。」
「ええ!?それって、スカウトですか?」
「はい。六狼の話では、すばらしく腕のいいデザイナーと聞いております。」
「いえ、私はまだ駆け出しですから。そこまで凄いわけでは・・・。」
「謙遜しなくていいのですよ。私もメニューを見せていただきましたが、狐の店には勿体ない出来でした。」
!?私のことを助けてくれた狐崎さんを、狐呼ばわり?
栗栖の兄ということで、少し解きかけていた警戒をもう一度締める。狐崎のことを狐扱いする紫狼に、少しカチンとしてしまったからだ。
「狐崎さんともお知り合いなのですね?」
「ええ、もちろん。私たちは神の眷属ですから、昔からずっと知っておりますよ。と言いますか、あの狐とは同じ年齢なので良く比べられました。六狼も随分懐いていて・・・。」
狐崎の話になると、物腰が柔らかそうな紫狼の顔が歪み、語尾も少し荒くなっているように感じる。
なんだかこの人と話している事が、狐崎を裏切っているような気持ちさえしてくる。
少し後ろに後ずさり、徐々に距離を取る。
「えっ!!?」
栗栖くんは下の名前六狼って言うのか!と、言われてはっとする。
音だけしか聞いたことが無いので、私はてっきり<クリス>という下の名前だと思っていた。
あれだけ日本人離れした───本性があやかしなんだから日本人かどうかも怪しいけれど───見た目なのに<ろくろう>って名前なのかあ。
日本人みたいで親近感持つなあ。
そんなことを考えながら、栗栖の兄を名乗る美青年の問いに返答する。
「はい、栗栖くんでしたら知っています。リーフ亭でお世話になっています。あなたは栗栖くんのお兄さんなんですね?」
「ええ。」
私の問いを肯定すると、さわやかな笑顔を浮かべた美青年は自分の名前を紫狼と名乗った。
どうやら、栗栖くんがリーフ亭であった出来事をお兄さん達に話しをしたらしく、私に興味を持った紫狼さんが見に来たそうだ。
「私は、ちょっとした会社を経営していてね。今は外注に出しているが、丁度社内に担当が欲しいところだったんだ。それで、あなたを勧誘できないかと思いまして。
ただ、流石に人となりが分からなければ採用は難しい。だからこうして逢いに来たんですよ。」
「ええ!?それって、スカウトですか?」
「はい。六狼の話では、すばらしく腕のいいデザイナーと聞いております。」
「いえ、私はまだ駆け出しですから。そこまで凄いわけでは・・・。」
「謙遜しなくていいのですよ。私もメニューを見せていただきましたが、狐の店には勿体ない出来でした。」
!?私のことを助けてくれた狐崎さんを、狐呼ばわり?
栗栖の兄ということで、少し解きかけていた警戒をもう一度締める。狐崎のことを狐扱いする紫狼に、少しカチンとしてしまったからだ。
「狐崎さんともお知り合いなのですね?」
「ええ、もちろん。私たちは神の眷属ですから、昔からずっと知っておりますよ。と言いますか、あの狐とは同じ年齢なので良く比べられました。六狼も随分懐いていて・・・。」
狐崎の話になると、物腰が柔らかそうな紫狼の顔が歪み、語尾も少し荒くなっているように感じる。
なんだかこの人と話している事が、狐崎を裏切っているような気持ちさえしてくる。
少し後ろに後ずさり、徐々に距離を取る。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
ニンジャマスター・ダイヤ
竹井ゴールド
キャラ文芸
沖縄県の手塚島で育った母子家庭の手塚大也は実母の死によって、東京の遠縁の大鳥家に引き取られる事となった。
大鳥家は大鳥コンツェルンの創業一族で、裏では日本を陰から守る政府機関・大鳥忍軍を率いる忍者一族だった。
沖縄県の手塚島で忍者の修行をして育った大也は東京に出て、忍者の争いに否応なく巻き込まれるのだった。
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる