【完結】あやかし街の看板娘

MURASAKI

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あの日、神様にお願いして良かったと感謝の気持ちでいっぱいになる。神様が聞いてくださったから神の眷属という二人に出逢う事が出来た。
行動しないとチャンスは手に入らないと誰かが言っているのを見たことがあるけど、本当にそうなんだと思う。


「それから、僕は今後板狩いたかりちゃんって呼ばせてもらうことにする。ええ会社紹介するから、前の会社の人ら見返してやろやないか!」


そう言ってニヤリと笑う狐崎こざきは、今まで見た中で一番悪い顔をしている。
隣の栗栖は半眼で、こうなったらどうにもならないという呆れた顔をしている。


「で、では!狐崎こざきさん、栗栖さん、本日いただいた修正案を後日お持ちしますね。いつ頃お手すきでしょうか?」

「うちはいつでも。夜以外は閑古鳥このとおりですから。」

「では、明後日の同じ時間はいかがでしょう?」

「ええね、早う板狩いたかりちゃんのメニュー表、使ってみたいわー!お客様の反応が楽しみや。」

「あー、では・・・そうですね。お客様の反応を見るためでしたら本日お持ちした、文字だけのメニューをしばらくご利用いただくのはいかがでしょうか?
 どちらにしろ、写真を使うデザインの場合は撮影が必要となりますので、まだしばらくお時間がかかりますし、実際使ってお客様の反応を見ながらメニューの改善をすることも可能ですよ。」

「なるほど。でも、それやと板狩いたかりちゃんの負担にならへん?」

「いえいえ!改善していくって楽しいですよ!今回の部数でしたら印刷に出さず、プリントアウトで対応しても良いと思っていましたから。お店にプリンターはございますか?」

「そんなもの、あると思ってんの?うちの店見たら分かる通り超アナログだぜ?しかもこの男がパソコン得意そうに見えるか?かろうじてネットが使えるだけだ。」


栗栖がオーナーの事をこの男呼ばわりし、さらに親指で刺すという失礼なことをしているにもかかわらず、狐崎こざきはそれを注意することもなくヘラヘラと笑っている。
その様子を見て、二人の関係が信頼のもとに構築されたものだと感じた。


ちょっと、うらやましいかも。


ついついぼそっと、そんな言葉が口からこぼれる。


「そんな良いもんじゃねえよ。」


私の独り言を聞いた栗栖が、少し照れながら否定をしてきた。でも、言葉とは裏腹に顔は照れているので肯定と取りますよ!と心の中で返しておいた。


「それで、板狩いたかりちゃん。文字だけのメニューはいつから使えそう?出来れば早く使ってみたいと思うんやけど。」

「そうですねぇ。プリントアウトはこの近くにあるプリントサービスを利用すれば問題ありません。一応念のため、これ持ってきていますので!」


そう言うと、私は荷物の中からバナナ(Bnnというメーカーの製品)のノートパソコンを取り出して見せる。
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