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「そ、それ・・・聞いちゃいます?」


凍り付いたその場を少しでも和らげるために、私は少しおちゃらけた言い方で場の雰囲気を変える。
最初は自分が悪かったけど、その後くだらない理由で辞めさせられてしまったことをかいつまんで話すと、狐崎こざきと栗栖は顔を見合わせている。
空気に耐えられず、私は自分から自分を貶めるように付け足した。


「本当に、くだらない理由ですよね。親に聞いたことがありますけど、昭和の時代みたいです。えへへ。」

「人の本質を見れない経営者やったんですね。自分で確かめもしないで人の言う事を信じるなんて、大会社なら仕方なくても、人数が少ない中小企業の経営者としては、あってはいけないことです。
 いやあでも、ほんまにその経営者の人に感謝せんとね。そうやなかったら板狩いたかりさんに逢えへんかったわけやから。」

「ほんとだよな!言っとくけど、狐崎オーナーがここまでなまって話す相手って、心を許してる奴だけだからな!?」

「あれ、栗栖くん。僕、そんなになまってました?」


私と栗栖は同時に頷いた。そう言われてみると、話を進めていくうちにどんどん京なまりが強くなってきていた気がする。
わたしたちの顔を交互に見ると、狐崎こざきは顔を赤くして両手で顔を隠し、うつむいた。
なんとも可愛い仕草にこちらもちょっと照れてしまう。


「大丈夫ですよ、狐崎こざきさん。私はそういうの、気にしませんから。むしろ素敵で憧れちゃいます、京なまり!
 それに・・・」


そこまで言うと、私は狐崎こざきと栗栖の顔を交互に見て、嬉しさ100%の顔でお礼を言った。


「私のデザインを喜んでいただけて、認めてくださってありがとうございます!本当に嬉しいです。
 まだまだ若輩者ですが、きちんとご満足いただける物を制作しますので、よろしくお願いします!」


勢いよく下げた頭が、テーブルにぶつかり「ゴン」という音を立てる。
慌てて私がまた謝ると、その様子を見て狐崎こざきと栗栖は涙が出るほど大笑いをした。そこにプレゼン現場の緊張感など一切ない。
つられて私も笑うと、狐崎こざきは笑いながらこう言った。


「ははは。僕はアナタのことが気に入ってしもた。就職先、探してあげるかわりに、しばらくこの<あやかし街>で困ってる店の人らを助けてやってくれんかな?もちろん、助けてくれた分はきちんと報酬は支払うし、なんやったらうちの食事も付けますよ。」

「ええ!!?そんな、就職あっせんまでしていただけるんですか!?」

「もちろん。うちの店に来る人らはみんな訳アリな人ばっかりやけど、大きな会社の社長さんとかも居てはるから。声かけておけば情報は入るしね。」

「何から何まで、ありがとうございます!よろしくお願いします!」


たった1日で無職になった私だったけど、捨てる神あれば拾う神ありとは良く言ったもので、たった数日でこんなにも転じるものなのかと震える。
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