【完結】あやかし街の看板娘

MURASAKI

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今までは企業案件ばかりやってきていたので、こういった資料を作るのは当たり前だったのだけど、一般的には違うのかもしれない。
そう考えると、前の会社は小さな家族経営の会社だったけど、取引先はキチンとしていたことに気が付いた。
奥さんは嫌な人だったけど、いい仕事をさせてもらってたんだなと感謝をしながら話を進める。


「では、表紙を開いて二ページ目をご確認ください。まずはカウンター周りのメニューについてご提案です。」


現在のメニューが抱える問題点などをあげ、改善案をまとめた資料を見ながら補足して話していく
狐崎こざきは感心するように、「ほおほお、へえ~!」と言った相槌を時折交えながら、話を真剣に聞いてくれる。
途中でこれはどうしてだ?などの茶々が入ることもなく、話をひととおり聞いてくれる姿勢が嬉しい。
メニュー表のご提案に差し掛かった時、原寸サイズにプリントアウトして製本したメニュー表を手に取り、嬉しそうに目を輝かしていた。


「最後のページですが、僭越ながら先日お伺いしたときに感じた私がお手伝いできる範囲での改善点をまとめました。読み上げはしましたが、またお時間があるときに目を通していただけると幸いです。
 プレゼンは以上となります。いかがでしょうか?分からないところなどござませんか?」

「いいっっっ!!!」

「・・・いい?」


間髪入れずに「いい」という言葉は、今までいただいたことが無かったので驚いてオウム返ししてしまう
狐崎こざきは私が作ったメニュー表のサンプルを腕に抱えている。


「ホンマにこれを1日で作ったんですか?どんな魔法使ったら出来るんですか?しかも2案もご提案いただけるなんて、僕は感動しとるんですよ!!!
 栗栖くん、メニューはどっちが良いと思いますか?僕はアカン、どっちも素敵すぎて決められへん!」


呼ばれて栗栖が狐崎こざきの隣にやってくる。
この二人が並ぶと、本当に美しくて見とれてしまうし、イケナイ妄想をしちゃいそうなくらい絵になる。
二人がメニュー表について議論している姿を、しばらくの間うっとりと眺めてしまった。

どうやら二人の意見は分かれてしまっているようだ。
メニューを見ればお料理の内容が分かる写真付きがいい狐崎こざき、文字だけのメニューの方が飽きがこずお洒落だと言う栗栖。
なかなか前に進まないようなので、その場で折衷案のご提案もしてみる。


「お料理の写真が入っていて、かつシンプルなイメージがよろしければ───そうですね、このように一部のメニューの写真を背景として掲載するか、少しだけ掲載するというのもありだとは思いますよ。」


さらさらとイメージを紙に描いていくと、その様子を見てまた狐崎こざきは感心する。


「わあ、凄い!どうやったらこんなに簡単にイメージを紙に描き起こせるんですか?ホンマに良い人と出逢えてよかったです。」

「本当だな。何でアンタそれだけ腕があるのに無職なんだ?」


栗栖の爆弾投下で、その場の空気が一瞬にして陽だまりの空間から寒冷地帯へと変貌した。
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