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翌日、提案書と出来上がったデザインを持って、リーフ亭へやってきた。
正確には行こうと思って来てはみたものの、やっぱり道が分からずウロウロする羽目になった。
約束した時間が迫った頃に栗栖が迎えに来てくれたので、事なきを得ることができた。
子狼ちゃん姿の栗栖は本当に可愛くて抱きしめたくなる。
そんなことをすればきっと悪態をつかれるのだろうということは分かるので、流石にしないが妄想くらいは許してほしい。
最初にあやかしと聞いてびっくりしたけど、人外だと思えばあの容姿の美しさも納得しちゃうなあ。
先導する栗栖の優雅なふさふさしっぽを見ながら、そんなことをふと考える。
狐崎さんも、よくよく考えたら名前に狐って入ってるし、名前が碧葉だったことも「リーフ亭」というお店の名前の元になっているのかもしれない。
デザイナーと言う職業柄、こういった普通の人には<どうでもいいこと>をついつい妄想してしまう。
そういえば、お店のロゴも無かったから、作りたいなあ。作らせてくれないかなあ。
メニュー表がOK出たらだけど、聞いてみよう!
もう私に正体を明かしたからか、あやかし街に入った頃には栗栖が男の子の姿に戻った。
変わっていく姿に全く気が付かないくらいスムーズだったので流石に驚いたけど、本人は「普通だろ」とそっけない。
もっと変身が見たいと詰め寄ってはみたけれど、グイグイ来られるのが苦手なのか少し怒らせてしまった。
流石に、これは申し訳なかったと反省する。
リーフ亭に到着すると、やはり店にお客様は居ない。
「今日はランチ当選者様は居ないの?」
「ああ、あれは毎日やってないんだ。何て言うか、応募者の中から強い念みたいなものが届いている時だけ。当選者は神が決めているからな。あんたもしたんだろ?当選前に神頼み。」
そういえば、狐崎もそんなことを言っていたと思い出す。
あの時、神様にお祈りをしなければ、こんな素敵な出会いが無かったと思うと本当に有難い。
あとは就職先さえ決まれば・・・。なんて、思わず欲深い事を考え始めあわてて頭を横に振る。
邪念は捨てないと!今からプレゼンなんだから!
気合いを入れ直し、たどり着いたリーフ亭のドアを栗栖に続いてくぐると、待ってましたとばかりに狐崎が大歓迎してくれる。
本当は、メニューを何とかしたかったと言っていたので、楽しみにしていたそうだ。
「こんにちは、狐崎さん!今日はよろしくお願いします。」
頭を深々と下げると、狐崎もつられて頭を下げる。
それを見て、面白そうに栗栖が笑っている。あの年齢の子は、大人がビジネスマナーで頭を下げる姿をあまり見たことがないのかもしれない。
通された席に座ると、表紙に<リーフ亭様メニュー表改善提案>と記載してあるプレゼン資料を手渡す。
表紙は味気なくないように、リーフ亭という名前から葉っぱの素材イラストをあしらったのだけど、それを見て狐崎がえらく興奮している。
「わあ!表紙から素敵ですねぇ!こんな風にきちんとした資料なんて作ってもらえるんですね?わああ、僕は今、感動しとるんですよ!板狩さんに頼んで、ホンマに良かったです!!!」
まだ表紙を見ただけなのに、やたら興奮しているのが分かる。
正確には行こうと思って来てはみたものの、やっぱり道が分からずウロウロする羽目になった。
約束した時間が迫った頃に栗栖が迎えに来てくれたので、事なきを得ることができた。
子狼ちゃん姿の栗栖は本当に可愛くて抱きしめたくなる。
そんなことをすればきっと悪態をつかれるのだろうということは分かるので、流石にしないが妄想くらいは許してほしい。
最初にあやかしと聞いてびっくりしたけど、人外だと思えばあの容姿の美しさも納得しちゃうなあ。
先導する栗栖の優雅なふさふさしっぽを見ながら、そんなことをふと考える。
狐崎さんも、よくよく考えたら名前に狐って入ってるし、名前が碧葉だったことも「リーフ亭」というお店の名前の元になっているのかもしれない。
デザイナーと言う職業柄、こういった普通の人には<どうでもいいこと>をついつい妄想してしまう。
そういえば、お店のロゴも無かったから、作りたいなあ。作らせてくれないかなあ。
メニュー表がOK出たらだけど、聞いてみよう!
もう私に正体を明かしたからか、あやかし街に入った頃には栗栖が男の子の姿に戻った。
変わっていく姿に全く気が付かないくらいスムーズだったので流石に驚いたけど、本人は「普通だろ」とそっけない。
もっと変身が見たいと詰め寄ってはみたけれど、グイグイ来られるのが苦手なのか少し怒らせてしまった。
流石に、これは申し訳なかったと反省する。
リーフ亭に到着すると、やはり店にお客様は居ない。
「今日はランチ当選者様は居ないの?」
「ああ、あれは毎日やってないんだ。何て言うか、応募者の中から強い念みたいなものが届いている時だけ。当選者は神が決めているからな。あんたもしたんだろ?当選前に神頼み。」
そういえば、狐崎もそんなことを言っていたと思い出す。
あの時、神様にお祈りをしなければ、こんな素敵な出会いが無かったと思うと本当に有難い。
あとは就職先さえ決まれば・・・。なんて、思わず欲深い事を考え始めあわてて頭を横に振る。
邪念は捨てないと!今からプレゼンなんだから!
気合いを入れ直し、たどり着いたリーフ亭のドアを栗栖に続いてくぐると、待ってましたとばかりに狐崎が大歓迎してくれる。
本当は、メニューを何とかしたかったと言っていたので、楽しみにしていたそうだ。
「こんにちは、狐崎さん!今日はよろしくお願いします。」
頭を深々と下げると、狐崎もつられて頭を下げる。
それを見て、面白そうに栗栖が笑っている。あの年齢の子は、大人がビジネスマナーで頭を下げる姿をあまり見たことがないのかもしれない。
通された席に座ると、表紙に<リーフ亭様メニュー表改善提案>と記載してあるプレゼン資料を手渡す。
表紙は味気なくないように、リーフ亭という名前から葉っぱの素材イラストをあしらったのだけど、それを見て狐崎がえらく興奮している。
「わあ!表紙から素敵ですねぇ!こんな風にきちんとした資料なんて作ってもらえるんですね?わああ、僕は今、感動しとるんですよ!板狩さんに頼んで、ホンマに良かったです!!!」
まだ表紙を見ただけなのに、やたら興奮しているのが分かる。
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