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奥に座っている客もこちらに気が付いて笑っている。やはり何かのショーだろうか?
呼吸を整え、心の中で「これはマジックだ!」と自分に言い聞かせ、気持ちを落ち着かせる。

狐崎こざきが私の方に向き直り、耳打ちしをしてくる。


「実は、僕らは人間じゃないんです。あやかし・・・妖怪と言えば分かります?」

「よ・・・よう!!?むぐ!!!!!」


驚いて叫びそうになった私の口を狐崎こざきが塞いだ。顔は近いし、初対面の男性(しかもイケメン)に口元を塞がれるなんて心臓が持たない。
思わず顔が赤くなるのが分かる。
そんな私の心中を知ってか知らずか、狐崎こざきはさらに顔を近づけて囁くように続ける。


「板狩様、あんた神社でお祈りしましたやろ?あの神社、稲荷なんです。あそこの神さんにお祈りできるひとは、本当に困っている人か僕らあやかしの力になれる人って決まってるんですわ。
 板狩様はホンマに選ばれたお人なんです。分かって貰えますやろか?他のお客様も居るんで、大きな声は勘弁してください。」


緊張と口を塞がれたことで息が苦しい私は、とにかく首をブンブン振って頷くと狐崎こざきは手を離してくれた。
はーはーと息を整え、もう一度狐崎こざきと栗栖の顔を交互に見たあと、奥に座っている客を見る。


「もしかして、向こうの人たちも・・・?」

「半分正解、半分ハズレだ。この店はあやかしと人間を繋いで仕事を仲介する場になってるからな。」

「そういうことです。人間のお客様とあやかしのお客様です。ちなみに、僕は妖狐で、栗栖くんは妖狼やね。イヌ科の縁で同じ神さんの眷属してます。」

「え、狼・・・?」


妖狼と聞いて、思わず栗栖を上から下まで舐めるように見てしまった。
変化した姿は猫にしか見えなかったけど・・・言われてみれば犬っぽくも見えなくもない?
私がどうして疑問形になったのか、狐崎こざきにはお見通しなのかまた声を出さず震えるように笑っている。それを見て栗栖はどんどん不機嫌になっていく。
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